夕方、庭に立っていると
隙間のある
低い塀越しに、
自転車の後ろに乗った女の子が
大きな声で
(なんて、きれいな花なの!
と当家を指さした
母親は 私を見て
困ったように、
ええそうね
とだけ応えた
二階まで届く 夾竹桃の花にしては
指先が 低かったので、
指先を 追うと
丈高い、
微妙な黄色の 百合が咲いていた
まだ 咲いたばかりで
咲いた三つは「ばかり」の うつくしさを
匂わせていた
(なんて、きれいな花なの
と 花を見たことがあったろうか(?
「これは、
オリエンタルリリーという種類なの」
と言おうとしたが
もうすでに、母子は過ぎ去り
庭には わたしと花だけが残り、
今日の暮れかけていく
空気が漂っていた
R3.6.15