ぬいぐるみのムクさんが、
ふいに むくむくっと成長し
本物の、熊になった
本物は 黒か茶色なのに
シロクマのように、白だった
運動不足は 体に悪いので
ムクさんと、川べりを散歩し
ムクさんの肩に 片手をおき
走ろうとするのを、とどめ
ゆっくり ゆっくりと念じた
川面は きらきらと輝いていた
川上まで 辿ると、
森 の入り口、まで来てしまった
(ぼく、森に帰りたい)
ムクさんは、そう呟いた
あれだけ抱いて
あれだけ一緒に睡ったのに
それは、ないでしょうと思ったが
悲喜こもごも
彼の首輪を はずした
ぎゅーっ として、
(あなたに
会いたい時だけ
森に来てもいい?)と聞いた
(もう、きみは ぼくがいなくても、大丈夫
今まで ありがとう
ここで 別れよう)と
シロクマは、振り返り振り返りして 森へ入って行った
逆に わたしが、ムクさんから離れたら
彼は辛いだろう と
黙って、見ていた
帰り道も
川面は きらきらと輝いていた
ムクさんは 成長した、
わたしも 成長しなければ
成長とは 断固として哀しいものと
きらきら 輝く川面をみつめた
ゆっくり ゆっくり
R3.6.18