(待った?
(それほどは
といってその人は歩きだした
春の曇天の空の下を
その人は
右肩をやゝ下げ
下駄の音をさせ
花びらのふりしきる
木々の間を
振り返ることもなく
しきりに空を見上げ
まぶしそうに
またたきながら
うつむいては
遠方を見やり
しゃがむように
草花に見入り
伸びるように
歩を進めた
触るように
進んでいくのだ
触るたび
揺れていた
(崖が続くね
落ちそうでふみとどまり
歩いていた
(君
抜けられるか
(そう?
抜けようとしなくとも
抜けるのは
意外ととほくないかもしれないと
歩いていた
R3.3.20
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