きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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コンパクト     田添明美

2021年09月03日 10時50分23秒 | 「いたずら」田添明美

宇宙のはてから
じゃんけんっ!
という声がする

思わず
ぐー)を出す

ぱー)という声が からから響く

負けたような気もする

うわむいて空を見る
空は つゞいている

次の 声を待とう

まだ 勝負は終わらない
じゃんけんは
三回勝負だ

コンパクト
トランジスターグラマー
そら
充実している気もする

次の 誰かの声を待つ、
たった一人で


         R3.6.22

 

 


シロクマ      田添明美

2021年09月02日 10時29分02秒 | 「いたずら」田添明美

ぬいぐるみのムクさんが、
ふいに むくむくっと成長し
本物の、熊になった

本物は 黒か茶色なのに
シロクマのように、白だった

運動不足は 体に悪いので
ムクさんと、川べりを散歩し
ムクさんの肩に 片手をおき
走ろうとするのを、とどめ

ゆっくり ゆっくりと念じた
川面は きらきらと輝いていた
川上まで 辿ると、
森 の入り口、まで来てしまった

(ぼく、森に帰りたい)
ムクさんは、そう呟いた

あれだけ抱いて
あれだけ一緒に睡ったのに
それは、ないでしょうと思ったが
悲喜こもごも
彼の首輪を はずした
ぎゅーっ として、

(あなたに
 会いたい時だけ
 森に来てもいい?)と聞いた
(もう、きみは ぼくがいなくても、大丈夫
 今まで ありがとう
 ここで 別れよう)と
シロクマは、振り返り振り返りして 森へ入って行った

逆に わたしが、ムクさんから離れたら
彼は辛いだろう と
黙って、見ていた

帰り道も
川面は きらきらと輝いていた

ムクさんは 成長した、
わたしも  成長しなければ
成長とは  断固として哀しいものと

きらきら 輝く川面をみつめた

ゆっくり ゆっくり


            R3.6.18

 


手紙      田添明美

2021年09月01日 11時05分16秒 | 「いたずら」田添明美

ポストに、「どうつぶ」からの手紙が入っていた
ごつごつした空色の封筒を 開封すると
なつかしい なまぐさい匂いがする

緑色の便箋に、徹底的に不器用な文字で
(じぶん・このように・生きてる
 げんき?)とあった

「どうつぶ」の住処
あの岩穴に、ペンはあったのか
郵便屋さんは なぜゆえ わたしの住所を知っていたのか

ともかく、躍り上がった

返信はできなかった
「どうつぶ」の住所は、書かれておらず
わたしは もう、「どうつぶ」と出会った
あの草原の場所を 忘れていた

「どうつぶ」が、振り返ってくれた!
その意味は、
「どうつぶ」とわたしで、創ればいい

「どうつぶ」が 岩穴から這いだし
日溜まりのように あたゝかな場所にいてほしかった

「どうつぶ」を選ぶには
何かを、捨てる必要があった
が それは、後回し

それからの夜更け
毎夜 毎夜、
わたしは 「どうつぶ」の火を吐く吠え声に
耳を傾けた
そして
ただ 返信することに決めた
呟く

(わたし・ここに・いる)と

その時
誰よりも、 幸福だった


            R3.6.17