1月20日(2句)
<大和三山ハイキング>
★耳成山目指し枯田をまっすぐに/多田有花
大和三山の一つ、耳成山。そこに見えているからこそ枯田をまっすぐに行く。耳成山が親しく近づいている。(高橋正子)
★寒満月上りて西は寒茜/廣田洋一
「寒満月」と「寒茜」と季語が二つあるが、この句では、東に「寒満月」、西に「寒茜」と対比させ、その引き合う力強さ、月と太陽の力を感じさせている思い切った句だ。(高橋正子)
1月19日(2句)
★山風の冴ゆる朝や山迫る/小口泰與
山風が冴える朝、山が迫力をもって、まるで大男かのように迫ってくる。朝の寒風の厳しさを身をもって体感した句。(高橋正子)
★大河なる湾処に来たり鴨の陣/桑本栄太郎
大河の湾処。大河なるがゆえに鴨も陣となってやって来た。大河の懐に抱かれるような鴨の陣だ。(高橋正子)
1月18日(2句)
★雪浅間仰ぎふかぶか深呼吸/小口泰與
雪の浅間山を仰ぐ。雪山の大きな存在に、自然に大きく、ふかぶかと深呼吸をした。雪の浅間山からの冷気が肺深くまでを晒し、きれいにしてくれるようだ。(高橋正子)
★乳母車の先をあゆみて日脚伸ぶ/桑本栄太郎
乳母車より先を歩む。乳母車をどこか気にして歩いているのだろうが、日脚が伸びた明るさに乳母車の親子
も作者も日差しの明るさを楽しんでいる。(高橋正子)
1月17日(2句)
★一月の飛鳥に残る藁山よ/多田有花
一月の飛鳥は、蕭条と枯れているのであろう。藁山が残っている。藁山は藁塚(にお)等ともよばれるが、稲藁を田圃に棒杭などを積んだものである。寒々とした田にやや傾いていたり、寄り合うようになっていたり、人や人家を思わせたり、風情のあるものだ。(高橋正子)
★寒晴やビニールハウスの開けらるる/桑本栄太郎
寒さを遮ってビニールハウスでは、いろいろな野菜や花、果実などが育てられる。寒晴の一日は、ビニールハウスを開けて中が蒸れないようにする。寒中にあって、それほど気持ちよいいい天気なのだ。(高橋正子)
1月16日(2句)
★寒月の光を肩に帰り道/廣田洋一
「寒月の光を肩に」の「肩に」がいい。肩に射す月光を感じ取っている実感が伝わってくる句だ。(高橋正子)
★本薬師寺跡に咲きおり水仙花/多田有花
本薬師寺跡は、今は跡地には金堂の礎石や東西両塔の上壇、塔の心礎などが残されていて、その背景には畝傍山(うねびやま)が望めるという。天武天皇の発願による官寺跡だけあって、水仙が咲けば、いかにもという気品が伺える(高橋正子)
1月15日(2句)
★青空に咲いて寒九の紅梅は/多田有花
寒九の寒さのなかにも紅梅が鮮やかに咲いて目を楽しませてくれる。その上に青空の青が紅梅を印象付けている。すっきりとした句だ。(高橋正子)
★小豆炊く湯気の吹き出す小正月/廣田洋一
小正月には、ぜんざいをいただく風習があるが、この句はそのために小豆を炊いているのであろう。「湯気の吹き出す」がリアルで、いかにも小正月らしい。いい生活句だ。(高橋正子)
1月14日(2句)
★あけぼのの梢取り合う寒雀/小口泰與
あけぼのの頃から寒雀は元気。梢をじゃれ合うように取り合っている。寒雀の元気で、可愛い姿が見える句。(高橋正子)
★七種の青の若さを頂きぬ/廣田洋一
「青の若さ」によって句が新しくなっている。頂いた作者も若返った思いだろう。(高橋正子)
1月13日(2句)
★寒卵だけの昼餉や息災に/廣田洋一
おそらく一人居の昼食であろうが、清らかな寒卵を大切に、昼食とし、息災である生活がいい。(高橋正子)
★水仙を線路の土手に仰ぎけり/桑本栄太郎
電車の乗って土手上を見上げると水仙が咲いている。思いがけなく水仙の咲く景色に出会ったささやかな喜び。少しの楽しみ、少しの嬉しさがいい。(高橋正子)
1月12日(1句)
★探梅や寺から寺へ訪へり/廣田洋一
寺の庭にはよく梅が植えられている。寺の歴史と共にあるような古木もあって、一輪、二輪の梅の香に
すがすがしい気持ちになる。「寺から寺へ」の探梅が、静かな気持ちにさせてくれる。(高橋正子)
1月11日(2句)
★蝋梅や利根の白波尖りける/小口泰與
蝋梅と利根の白波の取り合わせに、一月の寒さが目に見えるように句に詠まれている。寒々とした中にも蝋梅の透き通るような花が希望のように思える。(高橋正子)
★青空に天辺の透き冬木立/桑本栄太郎
冬木立が寒気に張りつめた青空に透ける様子が、きっぱりとして潔い。(高橋正子)