◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

1月21日~31日(2019年)

2019-01-23 12:17:05 | Weblog

多田有花
寒肥が施されたる木の根元★★★
春待つ木枝いっぱいに陽を受けて★★★
陽のあたる斜面から咲き寒の梅★★★★

小口泰與
春近し我が産土はさりながら★★★
寒雀羽はばたかせ争いぬ★★★
春近し榛名湖へ映ゆ榛名富士★★★★

廣田洋一
寒厳し頬を打ちたる細き針★★★
極寒や半袖シャツの家の中★★★
厳寒に斎庭の砂の白々と★★★★
斎庭(ゆにわ)は、神を祀るために清められた庭。斎庭に敷かれた砂は、ただでさえ、清らかであるが、厳寒には、特に、ものみな、清められた感覚になるので、白々とした砂に一層の清らかさを思った。(高橋正子)

桑本栄太郎
木の枝の雨滴きらめく冬の雨★★★
一二輪紅の矜持や梅古木★★★★
日もすがら雨の一日や一月果つ★★★

1月30日(4名)

小口泰與
榛名富士雪さやかなり湖に映ゆ★★★★
写真のようにくっきりとした景色。雪を冠った榛名山が湖に映り、「さやかな」様子。寒さの中にある清々しさ。(高橋正子)

日脚伸ぶ利根の川幅さやに増ゆ★★★
音さやに家ごと揺るる空っ風★★★

多田有花
寒中の城主の墓を巡りけり★★★
寒厳し石灯籠の並びにも★★★
池涸れて雲多き空映したり★★★★

廣田洋一
古き家取り壊されて春近し★★★★
早々と積まれしチョコや春近し★★★
新人の歓迎会や春隣★★★

桑本栄太郎
<山口へ冬の旅>
園児らの冬のひと日やわらべ歌★★★★
突然の帰京となりぬ流行風邪★★★
降り止むを待つて駅へとしまき風
「しまき」・「雪しまき」は冬の季語ですが、「しまき風」は季語ではありません。

(追述)「しまき」は角川の赤い表紙の歳時記、第三版のとも冬の季語として載っています。そして解説に
「風のことを古語で「し」といい、「まく」と重ねて風の激しく吹きまくること、およびはげしい風や海上の暴風をいうが、俳句では、単にしまきといって雪まじりの強風である雪しまきにも用いる。東北地方や北海道方面にとくに多い。」とあります。栄太郎さんの「しまき風」の「しまき」に風がつけてありますので、「しまく」は「吹き荒れる」の意味をもってきます。

1月29日(4名)

小口泰與
春待つや魚拓の埃払いける★★★
春近し榛名十峰朝日燃え★★★★
さもなくば虎落笛おば聞きにこよ★★★

多田有花
いつもより静かに明けて雪の朝★★★★
雪化粧する紅き実と赤き花★★★
鮮やかや朝日を受ける雪の嶺★★★

廣田洋一
爪の先緑さしたる冬木の芽(原句)
爪先ほどの緑さしたり冬木の芽★★★★(正子添削①)
冬木の芽爪先ほどの緑さし(正子添削②)

青空にかすかな赤み冬芽かな★★★★
冬木はまだ枯れたように立っているばかりと思いきや、青空に透けた枝先には、かすかに赤い冬芽が見えた。冬木は春の気配に動き始めたようだ。(高橋正子)

一枚の木の葉残して冬木の芽★★★

桑本栄太郎
<山口へ新幹線の冬の旅>
風花や時に無風の青空に★★★★
風花のする空であるが、時に風が止んで、驚くような青空が広がる。風花は遠い雪山からの風に乗って来たのだから、風花もぴたっと止んでしまった。(高橋正子)

海峡の明石大橋寒の暮れ★★★
谷間の固まるやうに雪の峰★★★★

1月28日(5名)

小口泰與)
寒暁の瀬音さえぎり鳴く鴉★★★
魚鼓打つや忽と飛び立つ寒雀★★★
日脚伸ぶ大地育む利根の水★★★★

多田有花
頂や望みし沖の寒霞★★★★
山茶花に今日は激しき風の音★★★
青空が一転くもり午後の雪★★★

廣田洋一
葉牡丹やくすみを取らんと渦巻きぬ★★★
葉牡丹や競ひ合ふごと色違へ★★★
葉牡丹や渦巻く日差し取り込みぬ★★★★
日差しが渦巻くのではないが、葉牡丹の葉が巻く渦が日差しを渦巻き状に巻き込んでいる。そんな印象を句にした。(高橋正子)

桑本栄太郎
<山口へ新幹線の冬の旅>
水色の空に黒きやしぐれ雲★★★
枯蘆や石のさざれの吉井川★★★

日脚伸ぶ車窓過ぎ行く福山城★★★★
福山は私の郷里であるので特別な感懐が湧くが、福山城は、駅のすぐ傍に立つ小さい城で、漆喰の白壁が季節季節の光を反射して、それが特徴的で印象的なのだ。日脚伸ぶ感懐も実感として伝わる。(高橋正子)

古田敬二
竹の猪口お神酒で囲む焚火かな(原句)
竹猪口のお神酒で囲む焚火かな★★★★(正子添削)
中吉のおみくじ結びお神酒飲む★★★
診断順待つ間の部屋の寒さかな★★★

1月27日(4名)

小口泰與
マフラーやへら浮子店を明るくす(原句)
マフラー巻きへら浮子明るき店におり★★★★(正子添削例)
元の句は、「マフラー」と「「へら浮子店を明るくす」が単にくっつけられているだけです。

寒影や狭軌の尾灯足尾線★★★
枝折戸を押すや逃げ散る寒雀★★★

多田有花
山芋と大根入れて牡丹鍋★★★
食材はすべて丹波の牡丹鍋★★★★
牡丹鍋最後は半熟卵飯★★★

桑本栄太郎
<山口へ新幹線にて冬の旅>
着ぶくれて新幹線の待合室★★★★
新幹線”のぞみ”は西へ日脚伸ぶ★★★
稜線の冬木透きたり青き空★★★

廣田洋一
ハモニカで大合唱や新年会★★★
駅前の青き空より風花す★★★★
駅前の少し広い青空から、風花が舞う。風花の儚さと美しさが目に見える。(高橋正子)
風花や裸木の先明るくす★★★★

1月26日(3名)

小口泰與
大木の怨霊の声虎落笛
大木の声すざましや虎落笛★★★(正子添削)
「虎落笛」に「怨霊の声」を重ねると言い過ぎの感じがします。

白鳥のこうこうと鳴く夕まぐれ★★★

赤城より冷気とどくや凍豆腐★★★★
凍豆腐は、家庭では、水を切った豆腐を夜は氷点下にもなる戸外に吊るして作る。赤城からの冷気に美味しい凍豆腐が出来上がる。厳しい寒さを利用し、工夫して人は生活している。(高橋正子)


多田有花
菊炭を熾し今宵の鍋かける★★★
炉話の弾むあんなことこんなこと★★★
炭熾り時にぱちんと弾けたり★★★★
炭火が燃える様子は、見ていて飽きない。炭火が熾って、時にぱちんと弾ける。ぷんと炭の匂いがする。どんな具合のときに弾けるのか知らないが、炭火も時に小さな声を出している。とてもいい時間がある。(高橋正子)

廣田洋一
ふうふうと息かけ飲むはホットレモン(原句)
「飲むは」の「は」は、「限定」の意味がありますので、限定しないで、さらりと詠むのがよいです。
ふうふうと息をかけ飲むホットレモン★★★★(正子添削)

ステーキに刃を入れ赤きホットワイン★★★

仕事終えまずは一杯ホットウイスキー(原句)
「まずは一杯」が散文的なので、直しました。
仕事終えまず一杯のホットウイスキー★★★

1月25日(3名)

多田有花
<北摂妙見山登山三句>
傷みつつ寒晴へ立つぶなの木々★★★★
「傷みつつ」は具体的にどのような状態かな、と思う。ぶなは落葉するが、枯れた葉が落ちないで枝に付いたままのもある。そんな木々のことだろうか。ぶなの大木は寒晴の空へと傷みつつも毅然と立っている。そんな姿に心を打たれた。(高橋正子)

府県境またぎ真冬の霊場へ★★★
春近き尾根の日差しの中歩く★★★

小口泰與
さなぎだに隠れ沼(ぬ)さびし浮寝鳥★★★
雪浅間あおぎ爽だつ朝かな★★★★
撒き餌にまず偵察の寒雀★★★

廣田洋一
丹沢の風吹き下ろす冬田かな★★★
ともかくも休むにしかず冬田かな★★★

ぽつぽっと草生え出ずる冬田道★★★★
冬田道を歩き、ふと足元をみると、「ぽつぽつと」緑の草が生えている。枯草の中のささやかな緑にうれしい気持ちになる。(高橋正子)

1月24日(3名)

小口泰與
白鳥の翔つ声聴けり夕まぐれ★★★
寒雀撒き餌あること悟りいる★★★
寒中の利根川を見て水に触れ★★★

多田有花
<北摂妙見山登山三句>
春を待つ櫟林を登りゆく★★★★
櫟林の空は、寒中とは言え、空の光は意外にも強くあかるくなっている。そこを登れば、待春の思いになる。(高橋正子)

登り来て山茶花の並木に会う★★★
寒晴や六甲山から淡路まで★★★

廣田洋一
雪掻きのシャベル立てかけ庭の隅(原句)
雪掻きのシャベル立てあり庭の隅★★★★(正子添削)
元の句は間違いではありませんが、写生句として添削しました。

玄関と道路を繋ぐ雪掻きす★★★
点々と雪掻かぬ店シャッター街★★★

1月23日(5名)

小口泰與
息白し神と仏の居りし部屋★★★★
民家で客間として使われる部屋には、仏壇があり、神棚が祀られていることがある。私の生家もそうであったが、朝などは、火もまだ入れず、畳も冷たかった。家の中ながら吐く息も白い。神仏の部屋の緊張感が伝わる。(高橋正子)

雪浅間色定まれる朝かな★★★
定めなき利根の流れや冬銀河★★★

廣田洋一
パンパンと音の乾きし干布団(原句)
干布団バンバン叩けば乾きし音★★★(正子添削)

音聞きて吾も叩きし干布団★★★

冬の香を日の香に変えし干布団(原句)
干布団日の香ふくむを取り込めり★★★★(正子添削)
もとの句の「冬の香」が具体的に分かりにくいです。

多田有花
寄れば香に触れるが如し寒の梅★★★★
ぽつぽつと咲き始めた寒中の梅であるが、近寄れば、いい匂い。香りに触れる感じがする。寒中の貴重な香りだ。(高橋正子)

くつくつと鍋煮える音寒満月★★★
テニスするコートへ寒月昇り来る★★★

古田敬二
風花や我が青春のキャンパスに★★★
風花とみえしばかりに風に消え★★★★
風花は、遠方の山岳付近に風雪が起き、それが上層の強風に乗って風下にひらいする現象といわれる。晴れていながら雪片が舞う。その風花が舞うのが見えたと思うと、もう、風に消えている。はかなく、美しいものの一つだ。(高橋正子)

風花やメタセコイアの空を指す★★★

桑本栄太郎
椅子に掛け股引き穿きぬ朝かな★★★
メロディーの報らす濯ぎや日脚伸ぶ★★★★
西空の蒼に茜や寒の暮れ★★★

1月22日(4名)

多田有花
<北摂妙見山登山三句>
山眠るケーブルカーは運休す★★★
眠る山に入りて男ら作業中★★★★
炭焼窯跡を包みし冬陽かな★★★

廣田洋一
あちこちで雪見の誘ひ冬深し(原句)
あちこちの雪見の誘ひもらいけり★★★★(正子添削)
「雪見」と「冬深し」は季重なりです。季を重ねるときは、慎重に、推敲をよくしてからにしたいです。


朝焼けの雲の一筋冬深し★★★

冬深し首を垂れたる庭の葱(原句)
庭畑の朝の葱の葉どれも折れ(正子添削例)
「葱」は冬の季語で、「冬深し」と季重なりです。葱の状態をよく詠むことで「冬深し」を表現したいところです。添削例は、時間を詠みこむことで、幾分冬の厳しさが出るのではないかと思います。(高橋正子)

小口泰與
厳寒の梢(ウレ)より落つる寒雀★★★
赤城嶺のながき裾野や日脚のぶ★★★

風音の裾野にあふる枯芒(原句)
風音の裾野にあふれ枯芒★★★★(正子添削)
もとの句は、「あふる」と終止形になっていて、「枯芒」と、切れ過ぎています。切れは、不即不離の関係で収めます。

古田敬二
大地よりありったけ力大根抜く(原句)
大根抜くありったけの力もて★★★★(正子添削)
もとの句は、「ありったけ力」と舌足らずな表現になっています。「大地」は省きました。(高橋正子)
大根を抜くには、大根が太くよく育っていれば育っているほど抜く力がいる。大根引きは、人間との力比べだ。(高橋正子)

伊吹からの風受け独り大根抜く★★★
補聴器に風音立てり大根抜く★★★★

1月21日(5名)

多田有花
湯たんぽに引き止められし寝床かな★★★
大寒の木々に差す陽の力増す★★★★
「陽の力増す」に実感がある。大寒で寒さは厳しいが、日差しは、明るく、力強ささえ感じる。(高橋正子)

自転車の青年寒の頂に★★★

小口泰與
冬深し堂の柱の黒光り★★★★
堂の冷え冷えとした中に堂々とした柱が黒光りしている。それを見ると、今こそ「冬深し」なのだと感じる。(高橋正子)

褐色の利根の流れや冬深む★★★
寂寞の谷川岳や寒厳し★★★

廣田洋一
ポッケにて悴む指をもみほぐす(原句)
ポケットに悴む指をもみほぐす★★★(正子添削)

悴みて歯医者の扉開けにけり★★★
悴みし手にて抱へし湯呑かな★★★

桑本栄太郎
大寒の口ひげ立つと覚えけり★★★★
北山の今朝は見えざり冬の雨★★★
久女忌の水色空や雲の間に★★★

古田敬二
我が寝屋の中天高く冬の月★★★★
冬月が中天高くのぼり、月の光に照らされている我が寝屋。寒いながら、静かな眠りが保証される。(高橋正子)

蝋梅の淡き香りや庭の隅★★★
冬目高暖かければ餌に浮き★★★
コメント (6)
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