◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/12月7日~13日

2014-12-13 09:20:36 | Weblog
[12月13日]
★柊の堅き緑に花香る/小西 宏
柊の堅く濃い緑の葉に比べると、白い小さな花は品のある香りがして、葉の棘に傷つくのではないかと思うほど繊細。そこに目をつけて詠んだ。(高橋正子)

★雪もよいオレンジ色のコート着る/内山富佐子
どんより曇った雪もよいの日、オレンジ色の明るいコートを羽織って出かける。雪国の暗くなりがちな生活をオレンジ色のコートを羽織れば、気持ちが明るくなる。(高橋正子)

[12月12日]
★届きたる荷の早や香る冬りんご/佃 康水
林檎の荷が送られてきた。開けるとすぐさま林檎の匂いが広がる。新鮮な林檎の圧倒的存在感が詠まれている。(高橋正子)

[12月11日]
★リズム出て寡黙な夜に柿を剥く/古田敬二
干し柿にする柿を剥いている。何個か剥くと剥く所作に調子が出ては、面白いようにはかどってくる。干し柿作りの寡黙な夜が柿の色に染まってあたたかい。(高橋正子)

★新しき赤きザックや冬最中/多田有花
身の回りのものを新しくすると嬉しいものだ。冬の最中、赤いザックを買った。暗くなりがちな冬、背中に背負うザックが「赤」であるので、なおさら嬉しく元気が出るというもの。(高橋正子)

[12月10日]
★外套に利根の川風しみにけり/小口泰與
外套を着ていても利根の川風の冷たさは、身に沁みこむ。「外套」の役割で句に渋さが出た。(高橋正子)

★ 寒い朝庭に雀の来てくれる小西 宏
「雀の来てくれる」という喜びがいい。寒い朝にまん丸い雀が庭に来て元気に餌を啄む。遊びに来てくれた雀の可愛さ。(高橋正子)

[12月9日]
★県境は全山黄葉峪深し/古田敬二
山国の県境は峪深く、全山の黄葉も激しいといっていいほどだ。奥深い県境の自然に強い力がある。(高橋正子)

★マスクして自転車こげば歌の出る/祝恵子
風邪の予防にかけているマスクだろう。寒さの中を自転車で走るとき、マスクがあれば温かい。冷たい風にさっそうとペダルを踏んで、歌が口をついて出る。(高橋正子)

[12月8日]
★隣家の屋根耀ける初霜に/河野啓一
朝窓を開け、隣家の屋根が初霜に輝いているのを見つけた。厳しい寒さの中にも、元気が湧いてくる明るさがある。(高橋正子)

★足跡もなく真っ白に雪の朝/高橋秀之
誰もまだ踏んでいない朝の雪。思いがけずも積もった白くほっこりと、清らかな雪を目に楽しむ作者。(高橋正子)

[12月7日]
★冬紅葉まだ庭隅に在る明るさ小西 宏
師走を迎え、紅葉も散り終わろうとするころになったが、まだ庭隅には冬紅葉が明るく残っている。見るにつけ、気持ちに明るさが加わる。(高橋正子)

★満月が師走の町の上に出る/多田有花
師走の夜空は群青紺を深めている。そこに満月がくっきりと昇って、清らかな、懐かしいような夜となっている。(高橋正子)
コメント (12)
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12月7日-13日

2014-12-13 07:58:33 | Weblog
12月13日(8名)

●小口泰與
隼や夕映えの川雲映す★★★★
愛犬の物言わぬ目や北颪★★★
白鳥の鳥を咥えし湖荒るる★★★

●小西 宏
柊の堅き緑に花香る★★★★
柊の堅く濃い緑の葉に比べると、白い小さな花は品のある香りがして、葉の棘に傷つくのではないかと思うほど繊細。そこに目をつけて詠んだ。(高橋正子)

犬冥利食事の後の日向ぼこ★★★
きりきりと枯葉が空に翻る★★★

●内山富佐子
雪もよいオレンジ色のコート着る★★★★
どんより曇った雪もよいの日、オレンジ色の明るいコートを羽織って出かける。雪国の暗くなりがちな生活をオレンジ色のコートを羽織れば、気持ちが明るくなる。(高橋正子)

しみじみと語り合う夜や十二月★★★
時計屋の九時のメロディ雪盛ん★★★

●下地鉄
和箪笥の年賀の晴れ着其の儘ぞ★★★
障子灯に今は懐かし父の顔★★★★
子ら集う何処に襖の置き所★★★

●桑本栄太郎
ひと年(とせ)の業を洗うや冬の雨★★★
顔見世の吾もなりたき大向う★★★
冴え冴えと”税”と書かれし漢字かな★★★★

●古田敬二
紅葉寺土門拳が見たように★★★
五重の塔逆さに映る池紅葉★★★
吊るし柿に上手い具合に寒さ来る★★★★

●川名ますみ
漱石忌目と猫の目を寄せ合うて★★★
漱石忌母は静かに吾れを生む★★★★
漱石忌昼餉夕餉も母と居る★★★

●高橋秀之
名古屋から帰る旅路も暮早し★★★
冬の夜に明かりも見えず関西線★★★
参道に途切れることなく散紅葉★★★★

12月12日(5名)

●古田敬二
やわらかき深さとなりぬ落葉道★★★★
残る葉に別れ告げたる柿落ち葉★★★
眠る場所決めて散りたり柿紅葉★★★

●小口泰與
鈍色の雲の切れ間や冬落暉★★★★
ごうごうと吹くや河原の寒鴉★★★
山風の物言う夕べはだれ霜★★★

●下地鉄
北風に淋しく騒ぐ選挙旗★★★
佇めば耳鳴りを知る夜長かな★★★
湯豆腐の灯りの何故に寂しさよ★★★★

●桑本栄太郎
枯枝の枝垂れざくらのしだれかな★★★★
冬紅葉地獄の彩と散りにけり★★★
いつもより遅き目覚めや冬の雨★★★

●佃 康水
老僧の箒目立てる霜の朝★★★ 
二人して大釜運ぶ報恩講★★★
届きたる荷の早や香る冬りんご★★★★

12月11日(5名)

●古田敬二
リズム出て寡黙な夜に柿を剥く★★★★
干し柿にする柿を剝いている。何個か剝くと剝く所作に調子が出ては、面白いようにはかどってくる。干し柿作りの寡黙な夜が柿の色に染まってあたたかい。(高橋正子)

柿を剥く己が齢を想いつつ★★★
柿を剥く飛騨川べりの故郷思う★★★

●小口泰與
枯葦や岩の定かな利根川原★★★★
里山の寺の柱や霜柱★★★
覚め際の遊泳あるや夜半の冬★★★

●多田有花
納豆をいろいろ買って食べ比べ★★★

新しき赤きザックや冬最中★★★★
身の回りのものを新しくするとうれしいものだ。冬の最中、赤いザックを買った。暗くなりがちな冬の最中、背中に背負うザックが「赤」であるので、なおさらうれしく元気が出るというもの。(高橋正子)

マフラーを巻き歩きだす山の道★★★

●桑本栄太郎
天よりの命綱かや雪迎え★★★★
バス通り早やも枯木の家路かな★★★
冬うらら辻であくびの運転手★★★

●小西 宏
色褪せてなお青空の冬もみじ★★★
日の暮を時計代わりに落葉踏む★★★★
落葉広く銀杏明るきアスファルト★★★

12月10日(5名)

●小口泰與
外套に利根の川風しみにけり★★★★
外套を着ていても利根の川風の冷たさは、身に沁みこむ。「外套」の役割で句に渋さが出た。(高橋正子)

かの冬の三和土に積みし薪の数★★★
あけぼのの蕊の震える寒椿★★★

●下地鉄
さざ波の砂噛み走る冬の海★★★★
冬の湯や歳それぞれのおもいかな★★★
草原にさざ波つくり北颪★★★

●福田ひろし
雀らが等間隔に冬の午後★★★
良き知らせつい待ちわびる小春かな★★★
かさかさと弁当開く小春日や★★★★

●桑本栄太郎
延々と貨車のつらなり枯野行く★★★
三川のつどう中洲や枯尾花★★★
高槻の医科大かこむ冬木かな★★★★

●小西 宏
寒い朝庭に雀の来てくれる★★★★
「雀の来てくれる」という喜びがいい。寒い朝にまん丸い雀が庭に来て元気に餌を啄む。遊びに来てくれた雀の可愛さ。(高橋正子)

鍬打てば帽子より湯気大根畠★★★
暖房の火のふと赤し一人暮れる★★★

12月9日(7名)

●古田敬二
県境は全山黄葉峪深し★★★★
山国の県境は峪深く、全山の黄葉も激しいといっていいほどだ。奥深い県境の自然に強い力がある。(高橋正子)

落葉に刻字風化し芭蕉句碑★★★
茶屋客に紅葉の光り届きけり★★★

●小口泰與
見晴るかす雨に沈みし枯野かな★★★
夕靄にのっと寒犬出でにけり★★★
谷川岳(たにがわ)の空鈍色や枯木立★★★★

●祝恵子
冬ホーム鮭一尾下げ電車待つ★★★
マスクして自転車こげば歌の出る★★★★
風邪の予防にかけているマスクだろう。寒さの中を自転車で走るとき、マスクがあれば温かい。冷たい風にさっそうとペダルを踏んで、歌が口をついて出る。(高橋正子)

唐辛子干せば冬日を浴び光る★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園>
大橋をわたり祇園へ時雨来る★★★★
顔見世の記念写真や招き前★★★
外つ人の数多祇園や小春空★★★

●小西 宏
バラ茎の伐口白し漱石忌★★★
山茶花の藪に陽のある朗らかさ★★★★
崖落葉蹴立て小綬鶏声漏らす★★★

●小川和子
冬野ゆく列車の響かすリズム音★★★★(正子添削)
かわたれの新聞の冷え漱石忌★★★
猫の目の小春に憩う漱石忌★★★

●高橋秀之
歳末の募金の呼びかけ一列で★★★
空きはなし冬晴れの日の物干し場★★★
川沿いの並木に光の十二月★★★★


12月8日(7名)

●古田敬二
野に独り居て初雪を見上げけり★★★★
柿紅葉落下の時にいる私★★★
採り終えし柿畑紅葉の散り敷けり★★★

●小口泰與
川風の吹きさらしけるおでん鍋★★★
吹かれ行くおでんの湯気やコップ酒★★★★
冬の夜やがらんどうなる胃袋ぞ★★★

●河野啓一
隣家の屋根耀ける初霜に★★★★
朝窓を開け、隣家の屋根が初霜に輝いているのを見つけた。厳しい寒さの中にも、元気が湧いてくる明るさがある。(高橋正子)

霜の朝ちらと確かむ温度計★★★
シクラメン水遣り終えて出窓へと★★★

●下地鉄
冬ざれや固定電話のうす明かり★★★
大風車ゆたりゆたりと暮秋かな★★★
水枕動けば音の冬寒し★★★★

●多田有花
冬枯れの静かな頂に座る★★★★
蛇行して川は大雪の海へ★★★
ソーラーパネル真っ白にあり霜の朝★★★

●桑本栄太郎
<故郷出身石破地方創生大臣来京>
寒風の中や立会い演説会★★★
大臣の掠れ声聞く冬木風★★★
木の葉舞う風の台座や演説会★★★★

●高橋秀之
早暁の東の空には冬の月★★★
真っ白な山を後ろに冬の虹★★★

足跡もなく真っ白に雪の朝★★★★
誰もまだ踏んでいない朝の雪。思いがけずも積もった白くほっこりと、清らかな雪を目に楽しむ作者。(高橋正子)

12月7日(7名)

●下地鉄
ひととせの薬の仕分け秋の暮れ★★★
寒晴れや海の彼方の霞かな★★★
光芒に奇岩の美しき秋の旅★★★★

●小口泰與
狛犬の眼光据わる冬の雷★★★★
枯蔦をたぐるや池の黙破り★★★
冬ざれの地震の隆起や太柱★★★

●迫田和代
なんとなく気ぜわしくなる年の暮れ★★★
時雨をば狐日和と人は言う★★★
今落ちた冬の紅葉を車中から★★★★

●桑本栄太郎
<故郷鳥取の冬の追憶>
大山の頂しろく菜を洗ふ★★★★
清流の光る小川や菜を洗ふ★★★
海鳴りの遠くに聞こえ榎枯る★★★

●小西 宏
朝の気に身を凛凛と落葉踏む★★★
冬紅葉まだ庭隅に在る明るさ★★★★
師走を迎え、紅葉も散り終わろうとするころになったが、まだ庭隅には冬紅葉が明るく残っている。見るにつけ、気持ちに明るさが加わる。(高橋正子)

枯芝を這う夕陰の脚早し★★★

●多田有花
満月が師走の町の上に出る★★★★
師走の夜空は群青紺を深めている。そこに満月がくっきりと昇って、清らかな、懐かしいような夜となっている。(高橋正子)

雪嶺と輝く海を見る頂★★★
冬の蝶小楢林を無数に飛ぶ★★★

●高橋秀之
ぽたり落ち続いてドサリと枝の雪★★★★
冬の靄ゆったり流れて山隠す★★★
境内は赤い木の葉と白い雪★★★
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●デイリー句会投句箱/12月1日~6日●

2014-12-06 20:21:50 | Weblog
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
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今日の秀句/12月1日~6日

2014-12-06 06:41:42 | Weblog
[12月6日]
★晴るる日の新雪積みし山の襞/小口泰與★★★★(正子添削)
もとの句は、「小春日」と「新雪」と季語重なり。晴れた日の山を見渡せば、新雪を冠って、山襞がひときわ際やかだ。真新しい雪、真新しい季節が清々しい。(高橋正子)

 白内障手術で入院(3日間)
★病床に手術待つ間や虎落笛/佃 康水
手術を待つ前の緊張と不安が高まるなか、耳に虎落笛が聞こえ、不安が一層募る。しかし、そこは俳句を作る者。虎落笛を耳に聞き留めることで、手術への覚悟ができる。手術の成功をお祈りします。(高橋正子)

[12月5日]
★ゆらゆらと女人高野の冬黄蝶/古田敬二
女人高野の室生寺へ歩を進めると、寒さの中に生まれたばかりのように、ゆらゆらと飛ぶ黄蝶に出会った。
黄蝶の可憐な魂が思われる。(高橋正子)

★部活子の走り去りけり落葉道/桑本栄太郎
校外の道であろう。落葉の重なる道を部活の子らが走り去って行った。落葉道を駆け抜ける部活の子が自然の中に吸い込まれて行くような感じだ。(高橋正子)

[12月4日]
★磨がかれし楽器に映る冬紅葉/祝 恵子
ブラスバンドの金管楽器だろう。演奏に持ち出され、冬紅葉の近くに置くと、あるいは、演奏中かもしれないが、冬紅葉がきれいに映っている。意外なところに見つけた冬紅葉。磨かれた楽器と冬紅葉と取り合わせがいい。(高橋正子)

★焼べ足さる薪ストーブや食事処/黒谷光子
薪ストーブの燃える炎に温まりながら食事をするのは、心から豊かになれる至福の時。燃え尽きないよう、薪が焼べ足されて至福の時間は続く。(高橋正子)

★手袋の手で鹿を描く幼子ら/川名ますみ
動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。(高橋正子)

[12月3日]
★頂上へ霧昇り行く紅葉山/古田敬二
紅葉山を霧が覆うように、頂上へと昇ってゆく。ダイナミックな霧の動きだ。(高橋正子)

★綿虫の拠りどころなく浮かびけり/桑本栄太郎
綿虫はふわふわと浮かんでいるが、その浮かぶ様子が、「拠りどころなく」なのだ。綿虫の虫とは思えないような実態をうまく表現している。季節の空気の感触が感じられる。(高橋正子)

[12月2日]
★振り向けば枇榔葉騒ぐ里の秋/下地 鉄
ざわざわ騒ぐ音に振り向けば、枇榔の葉が秋風に吹かれている。枇榔が風に吹かれる音に沖縄の里の秋が感じられる。(高橋正子)

★遠くに見ゆ初冠雪の金剛山/高橋秀之
1日は今年一番の寒波がやってきて、近畿地方で親しまれている。金剛山も初冠雪の姿が遠くから眺められた。以外にも早い初冠雪に、寒い日が思われる。(高橋正子)

[12月1日]
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
★時雨るるや牧より仔山羊連れもどし/佃 康水
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

★冬日さす迷える我の影薄し/福田ひろし
「迷い」をテーマにした句で、難しい内容を実感を大切によく表現している。(高橋正子)

★青空の美しきこと初しぐれ/小西 宏
晴れていると思うと急にはらはらと雨が降る。時雨はそんな雨だ。「初しぐれ」なればこそ、青空から降ってくる。こういった美しさは日本独特と思える。(高橋正子)
コメント (10)
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12月1日-6日

2014-12-06 06:38:23 | Weblog
12月6日(7名)

●小口泰與
冬紅葉天竜川の川面かな★★★
迫り来る北アルプスの根雪かな★★★

晴るる日の新雪積し山の襞★★★★(正子添削)
もとの句は、「小春日」と「新雪」と季語重なり。晴れた日の山を見渡せば、新雪を冠って、山襞がひときわ際やかだ。真新しい雪、真新しい季節が清々しい。(高橋正子)

●河野啓一
枯れ葦の水辺漕ぎゆく小舟かな★★★
湯けむりを透かし人影雪の宿★★★★
友来る寄せ鍋の湯気温かき★★★

●桑本栄太郎
<故郷鳥取の冬の日本海>
海鳴りの遠くに聞こえ榎枯る★★★
風垣の海鳴り聞ききつ薪積む★★★★
白波の怒涛となりぬ波の花★★★

●多田有花
窓の霜溶かして今朝は出発す★★★
霜柱崩しつ頂への道を★★★★
冬の山遠くに光る播磨灘★★★

●福田ひろし
群れ飛びてどこか隙あり冬鴉★★★★
冬の月胸の澱みも照らしけり★★★
牡蠣焼きの幟ばたばた横一列★★★

●佃 康水
 白内障手術で入院(3日間)
病床に手術待つ間や虎落笛★★★★
手術を待つ前の緊張と不安が高まるなか、耳に虎落笛が聞こえ、不安が一層募る。しかし、そこは俳句を作る者。虎落笛を耳に聞き留めることで、手術への覚悟ができる。手術の成功をお祈りします。(高橋正子)
   
今朝窓に初冠雪の連嶺かな★★★ 
冬ざれの海に燃え立つ日の出かな★★★

●小西 宏
落葉抱き逃げる子を追う鬼ごっこ★★★★
沈む陽が東の雲を染め寒し★★★
街の灯を別つ森影月冴ゆる★★★

12月5日(8名)
●古田敬二
ゆらゆらと女人高野の冬黄蝶★★★★
女人高野の室生寺へ歩を進めると、寒さの中に生まれたばかりのように、ゆらゆらと飛ぶ黄蝶に出会った。
黄蝶の可憐な魂が思われる。(高橋正子)

雨にぬれ女人高野に式部の実★★★
ローカル線行けば万葉で見し駅名★★★

●小口泰與
遠州の庭と御霊屋寒鴉★★★
小春日や八坂の塔の高々と★★★★
時雨るるや産寧坂の人の波★★★

●多田有花
出かけんとすればあがりし冬の雨★★★
干し物を冬の朝日の差す中へ★★★★
枝離れ落葉ひととき空を舞う★★★

●桑本栄太郎
冴え冴えと空の蒼さの小窓かな★★★
足裏の爆ぜて歩むや落葉道★★★
部活子の走り去りけり落葉道★★★★

●福田ひろし
若きとき訪ねし町は雪という★★★
しぐるるやバス待つ人の息白し★★★
夕時雨飛行機の灯の美しさ★★★★

●小西 宏
肩丸め日差し楽しき枯れ薄★★★
木の葉散り空に染みゆく欅かな★★★★
木枯らしや烏の声も愛おしく★★★

●下地鉄
手に余る薬の袋歳暮れる★★★
店々に赤の装飾クリスマス★★★
波頭現れて散り飛ぶ冬の海★★★★

●高橋秀之
冬の夜に一斉点灯光の道★★★★
自販機に入らぬ硬貨かじかむ手★★★
北風が選挙の幟をはためかす★★★

12月4日(10名)
●小口泰與
かの坂の七味と京の時雨かな★★★
片時雨産寧坂と二寧坂★★★
砂文字と傘の景色や寒雀★★★

●祝恵子
磨がかれし楽器に映る冬紅葉★★★★
ブラスバンドの金管楽器だろう。演奏に持ち出され、冬紅葉の近くに置くと、あるいは、演奏中かもしれないが、冬紅葉がきれいに映っている。意外なところに見つけた冬紅葉。磨かれた楽器と冬紅葉と取り合わせがいい。(高橋正子)

水鳥の水面の紅葉揺らしゆく★★★
インク字の友の絵手紙冬だより★★★

●桑本栄太郎
<大阪高槻~大山崎界隈>
真直ぐなる列のみどりや冬田晴れ★★★★
青空に残る紅葉や天王山★★★
<サントリー大山崎工場>
冬日さす光り輝く蒸留所★★★

●多田有花
初霜を残る紅葉の上に置く★★★
珍しき料理いろいろ小春かな★★★★
薄暗き中へ起きだす日短か★★★

●河野啓一
冬の雨水の面に揺れる梢かな★★★
散り終えて黄葉小さき丘となり★★★★
老妻と二人で見やる時雨かな★★★

●小西 宏
舞い募る木の葉に空の青遠し★★★★
池澄んで底に木の葉の色浮かぶ★★★
曲り行く欅落葉の濡れた道★★★

●黒谷光子
偶さかの出会いの湖辺冬温し★★★
旧交をあたたむ窓辺冬の湖★★★

焼べ足さる薪ストーブや食事処★★★★
薪ストーブの燃える炎に温まりながら食事をするのは、心から豊かになれる至福の時。燃え尽きないよう、薪が焼べ足されて至福の時間は続く。(高橋正子)

●高橋秀之
通り風が体にしみる冬の朝★★★
大空は冬色木の葉は風に舞う★★★★
冬の雨に濡れた靴下まず脱いで★★★

●古田敬二
小春日の香具山畝傍山旅にいる★★★★
かすかなる瀬音やもみじの谷深し★★★
停車ごと桜紅葉のローカル線★★★

●川名ますみ
紅葉散る小径の下に竹林★★★
手袋の手で鹿を描く幼子ら★★★★
動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。(高橋正子)

落葉はなやか篦鹿の去にし舎に★★★

12月3日(5名)

●小口泰與
御朱印の筆の走りや花八手★★★★
仏像の柔和なひとみ冬桜★★★
侘助やさざ波たてし池の鯉★★★

●古田敬二
鮮やかに紀伊の夕日に柿紅葉★★★
頂上へ霧昇り行く紅葉山★★★★
紅葉山を霧が覆うように、頂上へと昇ってゆく。ダイナミックな霧の動きだ。(高橋正子)

紀の川に鴨の陣見て旅を行く★★★

●河野啓一
四季移り早や霜月となりにけり★★★
青空に映えてくっきり冬紅葉★★★
冬帽子出して被って確かめる★★★★

●桑本栄太郎
朝日射す待降節の讃美かな★★★
綿虫の拠りどころなく浮かびけり★★★★
綿虫はふわふわと浮かんでいるが、その浮かぶ様子が、「拠りどころなく」なのだ。綿虫の虫とは思えないような実態をうまく表現している。季節の空気の感触が感じられる。(高橋正子)

門辺なる信楽たぬきや花八手★★★

●小西 宏
空青し池も明るし散紅葉★★★
北風に一人遊びの滑り台★★★
爺ちゃんのねんねこ退けて大きな目★★★★

12月2日(7名)

●小口泰與
寒雷や宝物殿の仏達★★★★
侘助や三千院の夕間暮れ★★★
あけぼのの秀つ枝に揺るる寒鴉★★★

●河野啓一
人の世はかくも早やきや十二月★★★
冬紅葉燃えて通りの名所かな★★★
球根を植えつけほっと師走来る★★★★

●多田有花
一夜にて銀杏黄葉の散り尽くし★★★
頂に立てば輝く冬の海★★★★
窓に差す午後の陽深く十二月★★★

●桑本栄太郎
冬紅葉直通電車の嵐山線★★★
ドア開きステップに銀杏落葉かな★★★
雨降れば室内(へや)の切干甘き香を★★★★

●下地鉄
負けて喫う紫煙に暮れる秋の空★★★
干し綱の揺れの寂しき秋の暮れ★★★

振り向けば枇榔葉騒ぐ里の秋★★★★
ざわざわ騒ぐ音に振り向けば、枇榔の葉が秋風に吹かれている。枇榔が風に吹かれる音に沖縄の里の秋が感じられる。(高橋正子)

●小西 宏
走る子も木の葉の音も初時雨★★★★
吹く風に落葉と遊ぶ保育園★★★
街飾る桜落葉の裏表★★★

●高橋秀之
冬空に太陽の光はおぼろげに★★★
遠くに見ゆ初冠雪の金剛山★★★★
1日は今年一番の寒波がやってきて、近畿地方で親しまれている。金剛山も初冠雪の姿が遠くから眺められた。以外にも早い初冠雪に、寒い日が思われる。(高橋正子)

目覚ましは北風が雨戸を叩く音★★★

12月1日(8名)

●小口泰與
白雲の淡海に定か冬の虹★★★
冬虹や景色ととのう鳰の海★★★★
辛崎を一閃せるや冬の虹★★★

●河野啓一
冬の滝流れて木の葉運びゆく★★★★
水仙のぐんと伸び出す庭の隅★★★
大小の落葉積むかな草多少★★★

●多田有花
冬紅葉里を包んで燃え立ちぬ★★★
山下りて炭火でいただく牡丹鍋★★★
木枯しに靴ひも結び歩き出す★★★★

●桑本栄太郎
哀しみの色となりけり冬紅葉★★★
枯芒ほほけ中洲の真白なる★★★★
早やばやと十一月の果てにけり★★★

●佃 康水
 広島市久保アグリファーム(牛牧場)
時雨るるや牧より仔山羊連れもどし★★★★
牧場も時雨れると寒々としてくる。濡れないよう、寒さにあわせないよう、仔山羊が連れ戻される。仔山羊は、牛に交じって飼われているものであろうが、飼い主の心優しさが伝わる。(高橋正子)

牧に積む飼葉豊かや冬半ば★★★
時雨来て牛の餌を食む鴉かな★★★

●高橋秀之
鉄塔を大きく跨ぎ冬の虹★★★★
冬の夜イルミネーションが煌々と★★★
葉が落ちて大きな幹が聳え立つ★★★

●福田ひろし
雨上がり桜落葉の赤きこと★★★
天国へ誘う如き冬日かな★★★

冬日さす迷える我の影薄し★★★★
「迷い」をテーマにした句で、難しい内容を実感を大切によく表現している。(高橋正子)

●小西 宏
落葉積む丘にビル街遥か見ゆ★★★
時雨来てリュックに小犬入れ帰る★★★
青空の美しきこと初しぐれ★★★★
晴れていると思うと急にはらはらと雨が降る。時雨はそんな雨だ。「初しぐれ」なればこそ、青空から降ってくる。こういった美しさは日本独特と思える。(高橋正子)
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