◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

5月11日~20日

2017-05-11 12:15:52 | Weblog

5月20日(5名)

●小口泰與
時鳥佐久穂の湖を鳴き渡り★★★
一瞬にくろがねの空はたた神★★★
黒塗りの箸と冷麦卓袱台に★★★★

●多田有花
頂の緑陰に座り昼食を★★★★
影踏んで快晴五月の山歩く★★★
はつ夏の海の青さを見る頂★★★

●廣田洋一
山すそに一筋光る日雷★★★
窓越しに雷聞きて床に臥す★★★★
雷が轟いて、これは、安静にしているのがよいかと、床に臥したのであろう。雷鳴と床に臥すことに強い因果関係はないが、でも、無きにしも非ず。微妙な人間心理。(高橋正子)

遠雷を耳にしつつも書を読めり★★★

●桑本栄太郎
<初夏のふるさと>
卯浪寄すはるか沖なり島の影★★★
舟影の浮きつ沈みつ卯浪寄す★★★
白波のはるか沖なり麦の秋★★★★
麦の秋と言えば、瀬戸内で育った私は、麦秋の空と瀬戸の沖合の強い光を強く思ってしまう。栄太郎さんは、日本海の「白波のはるか沖」が麦秋の景色なのだ。(高橋正子)

●谷口博望(満天星)
海桐咲きゆつくり進む巨大船★★★★
節理てふ太古の岩を青蜥蜴★★★
満潮やヒースの匂ふ海岸線★★★

5月19日(5名)

●満天星
鶯やこの地で詠みし子規の句碑★★★★
白鷺の川の真中を潮干川★★★
境内を紫に染め桜の実★★★

●多田有花
昼ごはん青葉若葉を正面に★★★★
いい風景だ。「昼ごはん」という野外の風景が懐かしい。私の幼少頃からの、家族の野外への散策があった。小学生二年になったばかりの五月に父を亡くしたが、父と連れ立ってよく出掛けた。兄が病弱でしたので、父は、勤めの休みの日に、私を魚釣りのお供に連れて行ってくれた。私は、釣りの餌の「ごかい〈沙蚕〉」を買いにやらされ、それを持って父に付いていった。「昼ごはん」という野外の風景が懐かしい。父との二人の時間が懐かしい。(高橋信之)

駐車せる車に夏の蜻蛉かな★★★
校庭に声のあふれて楠若葉★★★

●小口泰與
花桐や榛名十峰雲の上★★★

雲井より光満ちおり麦の秋★★★★
崩ゆりては巨大に生まる雲の峰★★★

●廣田洋一
点滴の管外されて涼しけり★★★★
「点滴」の思い出は、私にも何度かある。父を亡くし、引揚者でもあった私の大学受験生活には、無理があった。戦後はやりの結核にかかり、父の母校の京大を望んでの受験生活は、挫折した。一日に洗面器五杯を喀血した思い出がある。 私の遠い思い出にも「涼しけり」がある。(高橋信之)

二日ぶり飲みたる麦茶甘露かな★★★
一口の麦茶の香り味わへり★★★

●桑本栄太郎
<高速米子道>
一村を背負いて赤き竹の秋★★★
トンネルを出でて俯瞰や夏の川★★★★
万緑や肺の奥まで深呼吸★★★

5月18日(4名)

●谷口博望 (満天星)
桜の実口いつぱいに幼き日★★★★
白鷺や西日の光る潮干川★★★
晩鐘や青鷺の飛ぶ被爆川★★★

●多田有花
影あればさらに明るし若楓★★★★
城かこむ森の若葉を遠望す★★★
六甲山若葉の山のその向こう★★★

●小口泰與
保育器の嬰児(やや)を見舞うや夏つばめ★★★★
黄牡丹や六年生に従いぬ★★★
新緑の水面くわしき上枝かな★★★

●桑本栄太郎
<高速米子道>
箱庭のような眼下や風薫る★★★
山藤のしな垂れかかる一木に★★★

大山の頂き見上げ山法師★★★★
大山は中国地方の代表的な山。ふもとには様々な生活がある。頂を見上げると山法師の白い花が一目瞭然として目に入る。いよいよ夏へと向かう清々しさがある。(高橋正子)

5月17日(4名)

●谷口博望 (満天星)
花樗蒼天へ溶け道へ降る★★★★
翡翠に口出す烏潮干川★★★
晩鐘や姫女菀咲く土手に立つ★★★

●多田有花
蝶もつれ飛ぶ新緑の頂に★★★★
まなざしをあげ真っ直ぐに桐の花★★★
若葉より無数の蝶の湧き出でぬ★★★

●小口泰與
噴煙の流るる国原麦の秋★★★★
国原は広く平らなところ。浅間山の噴煙が流れる平野に噴煙が風に流れる麦の秋。麦の秋と噴煙に、昔懐かしさを覚える。(高橋正子)

卯月野や写真の露出適正よ★★★
雷鳴やソファーの陰へ子犬達★★★

●桑本栄太郎
<ハイウェイを高速バスにて帰省>
飛行機の伊丹上空五月晴れ★★★★
稜線の杉の木立や五月山★★★
箱庭のような眼下や風薫る★★★

5月16日(4名)

●谷口博望 (満天星)
芍薬やうどんを啜る外国人★★★★
翡翠や泥にまみれし舟露は★★★
河鵜来て潜れぬ烏うろうろと★★★

●多田有花
皮のまま焼かれし玉葱の甘し★★★★
つぎつぎと車吐き出す若葉山★★★
近寄れば甘き香りよ桐の花★★★

●小口泰與
夕ぐれの奇しき社やはたた神★★★
警報に下駄くつがえり跣足かな★★★★
釣上げし魚はうなぎか蛇か★★★

●廣田洋一
入院も旅行の如し青葉闇★★★
川べりの畑見下ろし風薫る★★★★
「川べりの畑」として見える景色は、見ていて面白そうだ。川土手に夏草が青々と、畑に野菜がぐんぐんと育ち、ところどころに収穫のあとがあったり。吹く風が緑の香りを運んでくる。(高橋正子)

城跡は石垣ばかり風薫る★★★

5月15日(4名)

●谷口博望 (満天星)
ブラシの木真つ赤に咲いて夏の風★★★
翡翠の長き嘴夕闇に★★★
母の日や鍵盤叩く幼き手★★★★
母の日に小さな子どもが、母にピアノを弾いてあげているのだろう。例えモーツアルトの曲でも、幼い子供の手が引けばピアノの音色は愛らしい。愛おしく見守る作者。(高橋正子)

●多田有花
軒先の自転車若葉の雨に濡れ★★★
一面の若葉を隠す霧の朝★★★
若葉風お城まつりの音運ぶ★★★★

●小口泰與
握り飯食ぶや池塘の虻羽音★★★
老鶯や雨後の社の長き磴★★★
衣更一列に行くランドセル★★★★
小学生の登校の列だろう。衣替えて軽くなった服装で、列を乱さず登校する子供たちに、さわやかで、すなおな子どもを見てとった。(高橋正子)

●廣田洋一
短夜や朝食前の露天湯に★★★★
短夜の冷酒の余韻水を酌む★★★
短夜やまたも終わらぬ同じ夢★★★

5月14日(5名)

●多田有花
芍薬を抱えればみな貴婦人に★★★
週末の若葉を濡らす静かな雨★★★
若葉寒一枚はおり家を出る★★★★

●谷口博望 (満天星)
アポロンへゆりの木の花旗を振★★★る
橡の花裸像のパンセ手を首へ★★★★
「さくら隊散る」慰霊碑や柘榴咲★★★く

●廣田洋一
駅出れば祭囃子に雨の音★★★★
駅を出ればすぐに聞こえる祭囃子。祭囃子に気持ちが高まるが、高まる気持ちを抑えるように雨の音。神田祭りだろうか、いい情緒だ。(高橋正子)

合羽着てきりり鉢巻祭りかな★★★
神輿来る掛け声掛けるビルの人★★★

●小口泰與
田の容くさぐさなりや青蛙★★★
角までと友送りけり若葉風★★★
湖の色奇しきや朝の若葉時★★★★

●河野啓一
レース越し若竹林のなごみかな★★★
おおらかに騒ぎて若竹林かな★★★★
竹林では筍が一夜にして丈をのばしている。若竹となって葉を広げ、「おおらかに」風に騒いでいる。
若竹の緑の騒ぎが目を和ませる。(高橋正子)

絶え間なき戦の業や人も地も★★★

5月13日(5名)

●谷口博望(満天星)
広島やジャスミン匂ふ高台に★★★★
蒼天へ栴檀咲いて道に降り★★★
マロニエの花咲く下で英語の子★★★

●多田有花
はつ夏の山頂で食ぶじんだかな★★★
日のひかり弾ませている手毬花★★★

椎の花山の輝き日々増せり★★★★
椎の花がむせかえるような匂いをあげる。若葉も盛んに増えて、つまり、山の輝きが日々に増してくるのだ。(高橋正子)

●廣田洋一
アイ・ラブ・ユーてふ名乗り上げし薔薇の花★★★
薔薇の花新しき香に女の子呼ぶ★★★
薔薇の花新種の色の際立てり★★★★

●小口泰與
柿若葉はや山風のあきにけり★★★
たまゆらの風と鳥語や麦の秋★★★
萍や魚眼レンズに映る雲★★★★

●桑本栄太郎
風湿り更に色濃きあやめかな★★★★
あやめが咲きだすころ、高く曇る空に湿気を含んだ風が吹く。あやめの紫色が目に濃さを増してくるのもこんな初夏の日だ。(高橋正子)

秘め事の愛は遠くに紫蘭咲く★★★
雨止みて窓の若葉となりにけり★★★

5月12日(5名)

●谷口望(満天星)
慰霊碑背に亀の泪や聖五月★★★
高々とゆりの木の花人知れず★★★★
チューリップの形をしたゆりの木の花。高い木でもあるし、葉っぱに隠れているように咲くので気を付けていないと見えない。人知れず咲く。私も好きな花の一つ。(高橋正子)

救急車ゆりの木の花風に揺れ★★★

●多田有花
夏草の刈られし後の香を歩く★★★★
夏草が刈られて一帯はさっぱりとなった。まだ夏草のあおあおとした香が残っている。そこを歩くと気持ちが元気になる。(高橋正子)

柿若葉見下ろし朝の洗濯を★★★
夏浅き頂で狸に出会う★★★

●廣田洋一
裏返る木の葉の波や青嵐★★★★
並木道輪唱止まぬ青嵐★★★
園児らの手をあげ渡る青嵐★★★

●小口泰與
鳥数多頻伽の声の清和かな★★★★
老犬とゆったり歩む聖五月★★★
新緑や水の惑星遊泳す★★★

●桑本栄太郎
豆飯の味噌の香りやおにぎらず★★★
ベランダのジャスミン香る濯ぎもの★★★★
揚羽蝶ためらいいつつも車道越え★★★

5月11日(6名)

●古田敬二
飛騨川の春を歩めばハ長調★★★
億年の削りし渓谷春の水★★★★
川風に白蝶一つ流れけり★★★

●小口泰與
八方より鳥語さかんや初夏の朝★★★★
5月10日から5月16日までは愛鳥週間。目覚めれば、四方八方より鳥の声が聞こえる。鳥たちの交わす弾んだ鳴き声は、話し声に思える。「ききみみずきん」を被って、聞いてみたいものだ。(高橋正子)

水馬流るる木葉追い越せり★★★
三匹の蛭に好かれておりにけり★★★

●満天星
糸蜻蛉平和の鐘についと飛び★★★★
いとほしき「原爆の子」やバラの咲く★★★
カルミアやノルマンディーの落下傘★★★

●廣田洋一
外つ国の婦人が摘みし新茶かな★★★★
いつもの店いつもの売子新茶買ふ★★★
新茶汲み熱くないかと尋ねけり★★★

●桑本栄太郎
配達のバイク去り行き明易し★★★★
新聞配達のバイクであろうか。配達の後、軽快なバイク音を響かせて去って行った。「明け易し」ころの早朝が快い。(高橋正子)

アカシアのにせと言うあり針槐★★★
海よりの風に潮の香卯波晴れ★★★

●多田有花
若楓天蓋となりわが頭上★★★★
若楓の天蓋の下をくぐるとき、緑に染まった自身を思い、快い気持ちになる。若楓のみどりは特に美しい。
(高橋正子)

山上のランチタイムや新樹光★★★
つややかに葉裏に熟れし桜の実★★★
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自由な投句箱/5月1日~10日

2017-05-05 10:16:17 | Weblog

※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
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今日の秀句/5月1日~10日

2017-05-05 10:16:00 | Weblog

5月10日(2句)

★頂の空はわがもの夏燕/多田有花
山頂の空は限りない。その空を自在に夏燕が飛ぶ。自由そのもの。(高橋正子)

★睡蓮や平和の鐘を次々と/谷口博望 (満天星)
平和の鐘が睡蓮の花をひとつひとつ揺らすように鳴っている。平和への願いに睡蓮が一層清々しい花に思われる。(高橋正子)

5月9日(3句)

★連休の明けて高かり桐の花/多田有花
連休が明けると夏らしさが増してくる。高々と薄紫に咲く桐の花が初夏の点景として眼に映る。(高橋正子)

★飛騨川へ傾ぐ若葉の大樹かな/古田敬二
水量を増やした飛騨川へ若葉の大樹が幹を傾けている。若葉の大樹も飛騨川も自然の風格を感じさせてくれる。(高橋正子)

★我が影に浮き上がりくる目高かな/小口泰與
自然に泳いでいる魚は人影を察すると逃げる。飼いならされた鯉や目高は餌を貰えると知ってか人影に寄って来る。目高との親しさがうれしい。(高橋正子)

5月8日(2句)

★店先で釣りし烏賊食ぶ夏の朝/廣田洋一
釣ったばかりの魚は烏賊に限らず美味であるのだが、烏賊となれば、夏の朝に相応しい、涼しげなものである。(高橋正子)

★風清く神田祭の幟立つ/川名ますみ
神田祭りは5月のゴールデンウィークが明ける11日ごろ始まる。「風清く」は、風薫る季節をよく言い当てて、祭りを心待ちにする気持が句に出ている。神田祭は、江戸三大祭り、日本の三大祭りの一つに数えられる。神田明神へは、普段の日に出かけたが、祭りの込み具合が想像できるようだった。(高橋正子)

5月7日(2句)

★木曽飛騨の雪解集めて川太る/古田敬二
下五の「川太る」がいい。早春の「雪解」の水を集め、「川太る」のである。木曽飛騨の奥深きところからの「雪解水」である。(高橋信之)

★通学の子ら一列や若楓/小口泰與
写生句だが、作者の気持ちが伝わってくる。下五の「若楓」が単なる季題に終わらず、そこに作者の詩情が込められている。(高橋信之)

5月6日(4句)

★実桜や仄かに浮かぶ昼の月/谷口博望(満天星)
実桜の生るころの空には、詩情がある。昼の月の仄かな白さもいい。(高橋正子)

★春泥の耕運機洗う山の水/古田敬二
春泥に塗れて働いた耕運機を山の水で洗う。耕運機は山の田畑で活躍したのだ。ねぎらうようにきれいな山の水で洗った。(高橋正子)

★利根川に満ちきし夏の光かな/小口泰與
利根川に夏の光が満ちてきた。利根川はますます力強く流れる。「満ちてきし」に、立夏の趣が感じ取れる。(高橋正子)

★新緑に映えて流れる川の水/廣田洋一
川の淵まで新緑が押し寄せている。川は新緑の光に力を得たように流れている。(高橋正子)

5月5日(3句)

★囀に囲まれ昼食の用意/多田有花
野外での食事のたのしみは、格別だ。のどかに囀りが聞こえる中で、空気の美味さ、新緑の鮮やかさを目にしながらの風景が目に浮かぶ。(高橋正子)

★鯉幟雨に打たれて色濃かり/廣田洋一
鯉幟が雨にもしまい忘れられて泳いでいる。雨に濡れれば、鯉幟の色が濃くなる。当たり前のようだが、発見だ。鯉幟への様々の思いが添えられた句となった。(高橋正子)

★こつ然と音失せにけり雲雀落つ/桑本栄太郎
空の中心で鳴き続けていた雲雀が忽然と鳴き止んだ。空は音を失った。とたん雲雀は礫のように落ちた。声を失った空の静寂と広さを知る。(高橋正子)

5月4日(2句)

★夏隣る山に響きし子らの声/多田有花
よく見かける風景だが、作者の実感が読み手に伝わってくる。下五の「子らの声」に作者の実感を読む。いい句だ。(高橋信之)

★新聞に包みし鯉や佐久の春/小口泰與
下五の地名「佐久」が効いた。リアルで、いい句だ。(高橋信之)

5月3日(3句)

★鯉幟田圃の家に孫眠る/谷口博望(満天星)
風に泳ぐ「鯉幟」に「孫眠る」。「田圃の家」に幸せがあって、いい風景だ。(高橋信之)

★快晴の八十八夜の陽が昇る/多田有花
生活を詠んだ句ではないが、生き生きとした句だ。詠み手の心が「快晴」の朝を生き生きとして迎えた。(高橋信之)

★ちらほらと苜蓿咲く売地かな/桑本栄太郎
田園地帯であろうか。上五の「ちらほらと」がいい。主題の「売地」をしっかり捉えた。「売地」という生活に詩情がある。(高橋信之)

5月2日(3句)

★石楠花の手毬触れれば冷たくて/谷口博望(満天星)
石楠花は眼にはさほど冷たそうには映らない。何かの拍子に花の毬に触れたとき、その冷たさに驚く。石楠花に山気を感じる。(高橋正子)

★黄金週間ジムのプールを独り占め/廣田洋一
黄金週間でいつものジムのプールは閑散としている。閑散としているどころか、独り占めである。プールの広い水。しんとしているが、思い切り、遠慮なく泳げた。少し寂しい気もするが。(高橋正子)

★父母の墓山の若葉に埋もれて/古田敬二
父母は静かに山の墓に眠っている。若葉の季節には、若葉に埋もれて、若葉に抱かれて眠る。大きな静かな時間が流れている。(高橋正子)

5月1日(4句)

★あけぼのの落花盛んよ鳥の声/小口泰與
楽しい句だ。多くを語っているわけではないが、「あけぼの」、「落花」、「鳥の声」と続けば、それだけで充分であって、それが俳句なのだ。(高橋信之)

★妻と居る黄心樹の花匂ふ下/谷口博望(満天星)
上五の「妻と居る」がいい。作者が見えてえくるからだ。(高橋信之)

★メーデーや終りし後は家族会/廣田洋一
「家族会」の団欒が見えてくる。団欒の話し声が聞こえてくる。俳句ならではの、身近でリアルな句だ。(高橋信之)

★青空へ鳥が歌いし四月尽/多田有花
「青空」と「鳥」、そして、それを見ている作者が見えてくる。風景とその季節が鮮明に読者の眼に浮かんでくるのだ。(高橋信之)
コメント (18)
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5月1日~10日

2017-05-05 10:13:08 | Weblog

5月10日(5名)

●多田有花
尺八の音色五月の境内に★★★
実り初めし梅に静かな雨の降る★★★
頂の空はわがもの夏燕★★★★
山頂の空は限りない。その空を自在に夏燕が飛ぶ。自由そのもの。(高橋正子)

●小口泰與
様々な鳥語聞こゆや若葉風★★★★
河鹿鳴く里の蕎麦屋の古暖簾★★★
遠き日の下宿の壁の井守かな★★★

●廣田洋一
旅終えし吾を出迎へ夏の雨★★★
草々の葉を広げたる緑雨かな★★★
高々と伸びたるひのき夏の雨★★★★

●桑本栄太郎
バイク音去りて目覚める明早し★★★
風湿り茅花流しと思いけり★★★
風薫るなんじゃもんじゃの花盛り★★★★

●谷口博望 (満天星)
対岸は原爆ドーム青鷺飛ぶ★★★
睡蓮や平和の鐘を次々と★★★★
平和の鐘が睡蓮の花をひとつひとつ揺らすように鳴っている。平和への願いに睡蓮が一層清々しい花に思われる。(高橋正子)

世界からヒロシマ行脚バラ咲いて★★★

5月9日(6名)

●谷口博望 (満天星)
花棕櫚のうしろに黑き九輪塔★★★★
躑躅咲く写真を撮りし良き時代★★★
実桜や観音様に見つめられ★★★

●多田有花
新緑のなかを横切る鳥の影★★★
針葉樹の向こうに若葉の光★★★
連休の明けて高かり桐の花★★★★
連休が明けると夏らしさが増してくる。高々と薄紫に咲く桐の花が初夏の点景として眼に映る。(高橋正子)

●古田敬二
川風に若葉の大樹そよぎけり★★★
飛騨川へ傾ぐ若葉の大樹かな★★★★
水量を増やした飛騨川へ若葉の大樹が幹を傾けている。若葉の大樹も飛騨川も自然の風格を感じさせてくれる。(高橋正子)

飛騨川の瀬音若葉を越えてくる★★★

●小口泰與
映りたる木立へ忽と緋鯉かな★★★
我が影に浮き上がりくる目高かな★★★★
自然に泳いでいる魚は人影を察すると逃げる。飼いならされた鯉や目高は餌を貰えると知ってか人影に寄って来る。目高との親しさがうれしい。(高橋正子)


釣り糸に忽と巻き付く鰻かな★★★

●廣田洋一
有珠山を写して静か夏の湖★★★★
千の風清々しきや夏の湖★★★

白き花程よく混ざる葉っぱかな(原句)
白き花程よく混ざる新樹かな★★★(正子添削)

●桑本栄太郎
夕刊を取りにポストへ著莪の雨★★★
発着のバスのしきりにつつじ燃ゆ★★★★
しつとりと降り来る茅花流しかな★★★

5月8日(7名)

●多田有花
夏めきて衣類さらりと入れ替える★★★★
はなみずき空家となりし庭に咲く★★★
藤の花五月の雨に煙るかな★★★

●満天星
英霊の声なき道を桐の花★★★
刑場の跡のお堂や躑躅咲く★★★
まなかいに燕飛びけり瀬戸遥か★★★★

●小口泰與
夏つばめ子供を生さぬ友もおり★★★
雲間より湖へ日矢差す夏薊★★★★
青鷺の水面見続く稚魚の数★★★

●古田敬二
イタドリを揺らして特急通り過ぎ★★★★
飛騨川へ若葉の山から白き滝★★★
初蛙飛騨川河岸の水たまり★★★

●桑本栄太郎
黄沙降る京の都となりにけり★★★
山里の山河つちふる村となり★★★★
さざ波の淀川土堤や風薫る★★★

●廣田洋一
店先で釣りし烏賊食ぶ夏の朝★★★★
釣ったばかりの魚は烏賊に限らず美味であるのだが、烏賊となれば、夏の朝に相応しい、涼しげなものである。(高橋正子)

ペリー像を際立て咲ける黒船つつじ★★★
血脈桜葉も一緒に開きけり★★★

●川名ますみ
風清く神田祭の幟立つ★★★★
神田祭りは5月のゴールデンウィークが明ける11日ごろ始まる。「風清く」は、風薫る季節をよく言い当てて、祭りを心待ちにする気持が句に出ている。神田祭は、江戸三大祭り、日本の三大祭りの一つに数えられる。神田明神へは、普段の日に出かけたが、祭りの込み具合が想像できるようだった。(高橋正子)

窓磨き若葉の丘の新しく★★★
目の覚めてまず聞く音に風鈴も★★★

5月7日(6名)

●多田有花
夏立ちぬ鯖のアヒージョを食す★★★
紋黄揚羽に訪われしランチタイム★★★★
大杉の根元に著莪の咲き乱れ★★★

●谷口博望 (満天星)
鐘楼の被爆の跡や棕櫚の花★★★
日輪をかかげ色づくさくらんぼ★★★
紫に藤の散りたる山の道★★★★

●古田敬二
木曽飛騨の雪解集めて川太る★★★★
下五の「川太る」がいい。早春の「雪解」の水を集め、「川太る」のである。木曽飛騨の奥深きところからの「雪解水」である。(高橋信之)

タラの芽や故郷の空へ美味しそう★★★
笑う山縫って高山行き特急★★★

●小口泰與
通学の子ら一列や若楓★★★★
写生句だが、作者の気持ちが伝わってくる。下五の「若楓」が単なる季題に終わらず、そこに作者の詩情が込められている。(高橋信之)

雷去るや豁然と起つ赤城山★★★
花ぎぼしそそと紅茶を飲みにける★★★

●桑本栄太郎
ミサンガと足爪赤く夏きざす★★★
遮断機を待てば鉄路の陽炎へる★★★
緑蔭の川風に沿う散歩かな★★★★

●廣田洋一
北国の野山けむる黄砂かな★★★
青葉より枝垂れる桜散りにけり★★★
夏草や一望出来ぬ五稜郭★★★★

5月6日(6名)

●多田有花
薔薇色のひかり立夏の地表にさす★★★★
夏に入る山ふところへ向かうかな★★★
夏来る梢に触れし雲一片★★★

●谷口博望(満天星)
実桜や仄かに浮かぶ昼の月★★★★
実桜の生るころの空には、詩情がある。昼の月の仄かな白さもいい。(高橋正子)

棘のない栄螺のわたし瀬戸育ち★★★
意地を張る童女愛らし葱坊主★★★

●古田敬二
春泥の耕運機洗う山の水★★★★
春泥に塗れて働いた耕運機を山の水で洗う。耕運機は山の田畑で活躍したのだ。いたわるようにきれいな山の水で洗った。(高橋正子)

青春の日の思い出や春の旅★★★
春の陽に座す老農と村のこと★★★

●小口泰與
利根川に満ちきし夏の光かな★★★★
利根川に夏の光が満ちてきた。利根川はますます力強く流れる。「満ちてきし」に、立夏の趣が感じ取れる。(高橋正子)

夏風邪や原稿用紙氏名のみ★★★
雨後の朝逆光あびる若楓★★★

●廣田洋一
朱に染まる湘南の海夏来たる★★★
新緑に映えて流れる川の水★★★★
川の淵まで新緑が押し寄せている。川は新緑の光に力を得たように流れている。(高橋正子)

さわさわと新緑の香に浸りけり★★★

●桑本栄太郎
たんぽぽの絮の旅立つ野風かな★★★★
さざ波の代田となりぬ青空も★★★
歩みゆく田毎にありぬ揚ひばり★★★

5月5日(5名)

●多田有花
囀に囲まれ昼食の用意★★★★
野外での食事のたのしみは、格別だ。のどかに囀りが聞こえる中で、空気の美味さ、新緑の鮮やかさを目にしながらの風景が目に浮かぶ。(高橋正子)

快晴の夏隣る山正面に★★★
揺れ始む藤を見上げて道登る★★★

●谷口博望(満天星)
夏の鴨田水へ足を滑走す★★★★
石庭や時空を超えて蛙鳴く★★★
山吹や石組落つる水しぶき★★★

●小口泰與
生き生きと声の調う匂鳥★★★★
切岸の落花きらめき蒼き空★★★
ワワにも器量よしあしうららけし★★★

●廣田洋一
子を欲しや親の心よ鯉幟★★★
庭先に小さく泳ぐ鯉幟★★★
鯉幟雨に打たれて色濃かり★★★★
鯉幟が雨にもしまい忘れられて泳いでいる。雨に濡れれば、鯉幟の色が濃くなる。当たり前のようだが、発見だ。鯉幟への様々の思いが添えられた句となった。(高橋正子)

●桑本栄太郎
さざ波の波打つ音の代田かな★★★
こつ然と音失せにけり雲雀落つ★★★★
空の中心で鳴き続けていた雲雀が忽然と鳴き止んだ。空は音を失った。とたん雲雀は礫のように落ちた。声を失った空の静寂と広さを知る。(高橋正子)

山際の一日暮れ行く立夏かな★★★

5月4日(7名)

●川名ますみ
咲く日まで笑っていましょう種袋★★★
風過ぎて上下に揺るる花水木★★★★
咲きてまた雨に濡れたる紫木蓮★★★

●谷口博望(満天星)
広島やマロニエの咲く花まつり★★★
銃口に狙われて飛ぶ河鵜かな★★★
水たまりもう飛ばないと水澄し★★★★

●多田有花
夏隣る山に響きし子らの声★★★★
よく見かける風景だが、作者の実感が読み手に伝わってくる。下五の「子らの声」に作者の実感を読む。いい句だ。(高橋信之)

ため池は遅日の空を湛えたり★★★
芳しき森の香りに春惜しむ★★★

●小口泰與
山風にジャズを奏でる落花かな★★★
新聞に包みし鯉や佐久の春★★★★
下五の地名「佐久」が効いた。リアルで、いい句だ。(高橋信之)

花桷や魚跳ねておる夕まずめ★★★

●廣田洋一
冬コート洗濯に出し四月尽★★★
抜きし草袋に詰めて四月尽★★★
燕の巣空き家のままに四月尽★★★★

●桑本栄太郎
姫女苑のうす紫や風に添う★★★
一枚を脱ぎ新緑の風を受く★★★★
夏隣る今日の入日を惜しみけり★★★

●花子
まどろみに そよ風かおる 若葉かな★★★★
暮れの春 衣一枚 かろやかに★★★
みどりの日 食卓囲む 笑い声★★★
※花子さんへ
下記のメールアドレスに、ご住所、ご本名、電話番号をお知らせください。
kakan01@mail.goo.ne.jp (花冠主宰/高橋正子)

5月3日(6名)

●谷口博望(満天星)
げんげんや愛すべき牛見なくなり★★★
里山の蛙鳴くなり土の声★★★
鯉幟田圃の家に孫眠る★★★★
風に泳ぐ「鯉幟」に「孫眠る」。「田圃の家」に幸せがあって、いい風景だ。(高橋信之)


多田有花
快晴の八十八夜の陽が昇る★★★★
生活を詠んだ句ではないが、生き生きとした句だ。詠み手の心が「快晴」の朝を生き生きとして迎えた。(高橋信之)

風に吹かれ八十八夜の頂に★★★
沖晴れて八十八夜の播磨灘★★★

小口泰與
雛菊や日の煌々と保育園★★★★
シーソーの天の子落花キャッチせり★★★
ゆさゆさと鳥を包みし桜かな★★★

廣田洋一
憲法の日古希を迎へて読み返す★★★
憲法の日平和の二文字重々し★★★
湘南の海のたりかな憲法記念日★★★★

桑本栄太郎
ちらほらと苜蓿咲く売地かな★★★★
田園地帯であろうか。上五の「ちらほらと」がいい。主題の「売地」をしっかり捉えた。「売地」という生活に詩情がある。(高橋信之)


日の高き天井川や酸葉の穂★★★
憲法記念日の里の門扉や国旗立つ★★★

5月2日(6名)

●谷口博望(満天星)
虫たちの群るる茉莉花の輝けり★★★
石楠花の手毬触れれば冷たくて★★★★
石楠花は眼にはさほど冷たそうには映らない。何かの拍子に花の毬に触れたとき、その冷たさに驚く。石楠花に山気を感じる。(高橋正子)

池の底耀ひながら松の花★★★

●多田有花
ゆったりと空眺めおり春の宵★★★★
あずまやに人の影ありつつじ咲く★★★
参拝の人ぽつぽつと八重桜★★★

●廣田洋一
桜蕊紅く積もれる通り径★★★
黄金週間ジムのプールを独り占め★★★★
黄金週間でいつものジムのプールは閑散としている。閑散としているどころか、独り占めである。プールの広い水。しんとしているが、思い切り、遠慮なく泳げた。少し寂しい気もするが。(高橋正子)

黄金週間車内で浴びる夕日かな★★★

●桑本栄太郎
医科大の緑蔭深き大樹かな★★★★
陸橋の高さに銀杏若葉かな★★★
つつじ燃え特急電車の入り来たる★★★

●小口泰與
ゆさゆさと花きわまりぬ鳥の声★★★★
遠山の極や来鳴きぬ花の朝★★★
雨後の朝山際やかや野春菊★★★

●古田敬二
父母の墓山の若葉に埋もれて★★★★
父母は静かに山の墓に眠っている。若葉の季節には、若葉に埋もれて、若葉に抱かれて眠る。大きな静かな時間が流れている。(高橋正子)

鶯啼く父母の墓碑の後ろから★★★
父母の墓参へ落花の坂登る★★★

5月1日(7名)
 
●小口泰與
あけぼのの落花盛んよ鳥の声★★★★
楽しい句だ。多くを語っているわけではないが、「あけぼの」、「落花」、「鳥の声」と続けば、それだけで充分であって、それが俳句なのだ。(高橋信之)

わなわなと木木のおらぶや花の雨★★★
うららかや産みたて卵食卓へ★★★

●谷口博望(満天星)
妻と居る黄心樹の花匂ふ下★★★★
上五の「妻と居る」がいい。作者が見えてえくるからだ。(高橋信之)

あやめ草烏の歩く遊園地★★★
久々の山陽道や藤の花★★★

●古田敬二
両側に若葉の迫るローカル線★★★★
駅ごとに若葉の木立や高山線★★★
駅ごとに桜蕊降る高山線★★★

●廣田洋一
メーデーやただの祭りになりはてぬ★★★
メーデーや過労死嫌と叫びたる★★★
メーデーや終りし後は家族会★★★★
「家族会」の団欒が見えてくる。団欒の話し声が聞こえてくる。俳句ならではの、身近でリアルな句だ。(高橋信之)

●花子
春の宵今日はひと駅歩こうか★★★★
初蝶や我を何処に誘いらん★★★
八重桜明日も来るよと目をこやす★★★

●多田有花
青空へ鳥が歌いし四月尽★★★★
「青空」と「鳥」、そして、それを見ている作者が見えてくる。風景とその季節が鮮明に読者の眼に浮かんでくるのだ。(高橋信之)

春深し亀が甲羅を干しており★★★
木漏れ日に小枝を拾う四月尽★★★

●桑本栄太郎
花葱の畝に一列残りけり★★★★
植込みにすいと伸び居り酸葉かな★★★
わらわらと風の葉裏や五月来る★★★
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今日の秀句/4月21日~30日

2017-05-01 09:26:19 | Weblog

4月30日(2句)

★林に聞ゆ初音の輝ける/河野啓一
「輝ける」には初音を聞き届けた作者の生き生きした嬉しさが読み取れる。これからは鶯もよい声で鳴いてくれるだろう。(高橋正子)

★一人旅若葉の故郷へ向かいけり/古田けいじ
一人で故郷へ旅をする。故郷は今、若葉に照り輝いている。心やすらかな故郷への旅だ。(高橋正子)

4月29日(2句)

★たんぽぽの綿毛は軽き風を待つ/多田有花
たんぽぽの絮毛は軽い風でもすぐに飛んでいく。絮が飛ぶには軽い風でいい。かるがるとした晩春の野が明るい。(高橋正子)

★インターホン紫雲英を摘んできましたと/川名ますみ
紫雲英を摘んで来た嬉しさがインターホンの音に表れているようだ。野の紫雲英をはやく見せてあげたいはやる気持ちそのままのインターホン。(高橋正子)

4月28日(2句)

★その朝に晴れ晴れとして芽吹き山/多田有花
上五の「その朝に」の「その」は、作者にとって意味のある朝。その意味のある朝、晴れ晴れとした芽吹きの山が見晴らせた快さによい結果になる思いが見える。(高橋正子)

★さえずりや気散じの歩を図書館へ/小口泰與
「さえずり」を聞き、気散じの歩が図書館へ向かう。気散じの歩は、どこへ向かってもよいが、図書館へ向かう、すっきりとした気分が佳句となった。(高橋正子)

4月27日(3句)

★花楓幼児の声のよく通る/谷口博望(満天星)
私の住んでいる横浜郊外の日吉の町はずれにも「花楓」が群れ咲くところがある。慶応大学のグランド等の施設があって、若者たちの姿を見て散歩を楽しんでいる。(高橋信之)

★花水木風平らかにエントランス桑本栄太郎
「エントランス」の風景がいい。風の「花水木」がいい。町内の散歩道の街角に見る風景だ。(高橋信之)

★明るくて芽立の山に降る雨は/多田有花
「芽立」が明るければ、「降る雨」も明るい。「山の風景」も明るい。眼に触れるすべての風景が明るく、嬉しい風景だ。(高橋信之)

4月26日(3句)

★架け橋は肩幅のみや山桜/小口泰與
花見も様々である。作者が見えてくる。その姿も気持ちも読み手に伝わってくる。(高橋信之)

★緑にも匂ひは有りぬ若葉かな/廣田洋一
「若葉」の匂いだが、「緑」の匂いを嗅いだ。深いところを感じ取ったのだ。俳句ならではの深いところを、である。(高橋信之)

★風吹けば風に新樹の冷えにけり/桑本栄太郎
「新樹」との一体化を作者は感じた。俳句である。(高橋信之)

4月25日(2句)

★げんげ田の一枚残る住宅地/多田有花
住宅地となる前はのどかな田園風景が見られたところだろう。その風景を思い起こさせるように一枚のげんげ田が残っている。げんげ田の残るうれしさ、げんげを植えた農家の思いも読める。(高橋正子)

★眼前を翡翠飛んで日の暮るる/谷口博望(満天星)
小鳥のなかでも羽色の美しさ、その行動のスマートさは魅力だ。翡翠に出会って、今日が終わる。いい一日の終わりだろう。(高橋正子)

4月24日(3句)

★輝ける芽吹きの山に身を浸す/多田有花
自らの実感がある佳句。句の冒頭に「輝ける」を置き、作者の実感を明らかにした。(高橋信之) 

★古き種まだ生きてると撒きにけり/廣田洋一
中七の「まだ生きてる」に作者の思いを読む。嬉しい「思い」だ。(高橋信之)

★桜蘂降るや並木をバスに乗り/桑本栄太郎
「桜蘂」、「並木」、「バス」、と続き、読者に語り掛けてくる語りがある。日常生活の中での「語り」がある。日常生活の中にあって、日常生活を超えるところがあって、それがいい。(高橋信之)

4月23日(2句)

★ほのぼのと霞桜の昼下がり/多田有花
桜咲く昼下がりの、眠くなりそうなほどの陽気。だが、「ほのぼの」なので目がしっかりと昼下がりを見ている。(高橋正子)

★鮎放つ瀬尻の川音(かわと)変わりけり/小口泰與
鮎を放つと瀬音が変わる。敏感にそれを感じた。鮎の匂いが立ちあがってきそうだ。(高橋正子)

4月22日(3句)

★みな違う色みずみずし木の芽山/多田有花
山に木の芽が芽吹く。木々の芽吹きの色は少しずつ違って、微妙な色の重なりは、水彩画のような風景を見せる。それが「みずみずし」である。「みずみずし」に気持ちが表れていて、共感する。(高橋正子)

★草むらに浮き立つ色の薊咲く/廣田洋一
草むらの緑と、薊の色は好対照。春も酣の野の景色が眩しいほどだ。(高橋正子)

★いにしへの島の神々躑躅咲く/谷口博望 (満天星)
神域の躑躅が燃え立つようで印象深い。臼田亜浪の「死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり 」を思い出す。(高橋正子)

4月21日(3句)

★にしんそば食べる穀雨の頂で/多田有花
一般的に魚の干物は焼いて食されるが、身欠きニシンは米の研ぎ汁に1週間ほど漬けて戻した後、煮物や甘露煮などに加工して食べることが多い。柔らかく煮含めた身欠き鰊を具とした「にしんそば」は京都や北海道西部の名物となっている。(高橋信之)

   嵐山
★風光るトロッコ嵯峨の駅に立つ/桑本栄太郎
風光る「嵐山」をうまく捉えた佳句。芥川作品に「トロッコ」がある。芥川作品の中では中期(大正11年、1922年)に書かれたもので、芥川はこの年の一月に、彼の名作の一つである「藪の中」を発表し、その二か月後に発表されたのがこの「トロッコ」である。蜘蛛の糸や杜子春などとならび、少年向けの作品。(高橋信之)

★祈ることひとつ芽吹きの並木道/川名ますみ
祈ることは「ひとつ」の、ただそのことだけ。木々が芽吹く並木道を通りながら、木々の芽吹きに希望を託して心からの祈りの句(高橋正子)

◆◆◆

★桜散る空に吹きあぐ花びらも/高橋信之
一陣の風に今散ったばかりの桜の花びらが青空へと舞い上がる美しい情景が目に浮かび、花の季節に名残を惜しまれるお気持ちが伝わってきます。(柳原美知子)

★桜散る斜面にもまた桜色/高橋句美子
空に満ちる桜と斜面をも桜色に埋め尽くす落花、桜色に染まる季節の感動が生き生き
と伝わってきます。(柳原美知子)

★シャボン玉追い掛けている姉いもと/祝恵子
虹色のシャボン玉が風にゆらゆらと飛んで
いくのを追いかける仲良しの姉妹の微笑ましい景は、絵本を見るようです。(柳原美知子)

コメント (21)
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