1月20日(4名)
小口泰與
手袋の指じんじんと痛みけり★★★
凍風や声の飛び散る山上湖★★★
凍山や星を小出しに出しており★★★★
多田有花
<大和三山ハイキング三句>
耳成山目指し枯田をまっすぐに★★★★
大和三山の一つ、耳成山。そこに見えているからこそ枯田をまっすぐに行く。耳成山が親しく近づいている。(高橋正子)
耳成より望む真冬の二上山★★★
寒中のハイキング終えティータイム★★★
廣田洋一
大寒やダウンコートは要らぬとか★★★
寒満月上りて西は寒茜★★★★
「寒満月」と「寒茜」と季語が二つあるが、この句では、東に「寒満月」、西に「寒茜」と対比させ、その引き合う力強さ、月と太陽の力を感じさせている思い切った句だ。(高橋正子)
大寒の葱の白身を測りけり★★★
桑本栄太郎
冬萌の田面の青き車窓かな★★★★
教会へ集う道なり寒紅梅★★★
集いたる雲の黒さや寒雷忌★★★
1月19日(4名)
小口泰與
まみゆる事も果報とや御神渡★★★
白鳥や水面激しく羽を搏つ★★★
山風の冴ゆる朝や山迫る★★★★
山風が冴える朝、山が迫力をもって、まるで大男かのように迫ってくる。朝の寒風の厳しさを身をもって体感した句。(高橋正子)
廣田洋一
寒の川小魚群れて動かざる★★★
冬の川底の石まで澄み通る★★★★
白鷺の一羽佇む冬の川★★★
桑本栄太郎
寒晴やあれもこれもと濯ぎもの★★★
大河なる湾処に来たり鴨の陣★★★★
大河の湾処。大河なるがゆえに鴨も陣となってやって来た。大河の懐に抱かれるような鴨の陣だ。(高橋正子)
天狼や吾に大志のありしころ★★★
多田有花
<大和三山ハイキング三句>
柑橘類植えし家々寒の内★★★
藤原宮跡にたたずみ枯れ広し★★★★
冬枯の宮城跡に野球場★★★
1月18日(4名)
小口泰與
雪浅間仰ぎふかぶか深呼吸★★★★
雪の浅間山を仰ぐ。雪山の大きな存在に、自然に大きく、ふかぶかと深呼吸をした。雪の浅間山からの冷気が肺深くまでを晒し、きれいにしてくれるようだ。(高橋正子)
遠山は富士よ白鳥飛び立ちぬ★★★
富士見ゆやひと筋の日に小白鳥★★★
多田有花
<天岩戸神社>
玉垣の中の真冬の真竹かな★★★★
<天香久山>
畝傍山葛城山もしぐれけり★★★
青鷺が屋根に止まりて冬深し★★★
廣田洋一
新海苔の缶より出して匂ひけり★★★
寒海苔やぱりぱり焼きて握り飯★★★★
寒海苔の磯の香淡き朝餉かな★★★
桑本栄太郎
水色の空が見え居り風花す★★★★
乳母車より先あゆむ日脚伸ぶ(原句)
乳母車の先をあゆみて日脚伸ぶ★★★★
乳母車より先を歩む。乳母車をどこか気にして歩いているのだろうが、日脚が伸びた明るさに乳母車の親子
も作者も日差しの明るさを楽しんでいる。(高橋正子)
下校児の口笛吹くや冬うらら★★★
1月17日(4名)
小口泰與
大樹より精をたまふや虎落笛★★★
蝋梅や日の張りつむる浅間山★★★★
逆光と風をたまわる枯尾花★★★
廣田洋一
日脚伸ぶ行き交ふ車無灯火にて★★★
一時のお茶を楽しみ日脚伸ぶ★★★
公園の子らのかけっこ日脚伸ぶ★★★★
多田有花
<大和三山ハイキング三句>
飛鳥川しぐれて白鷺の立ちぬ★★★
木守柿天香久山の近し★★★
一月の飛鳥に残る藁山よ★★★★
一月の飛鳥は、蕭条と枯れているのであろう。藁山が残っている。藁山は藁塚(にお)等ともよばれるが、稲藁を田圃に棒杭などを積んだものである。寒々とした田にやや傾いていたり、寄り合うようになっていたり、人や人家を思わせたり、風情のあるものだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
トースターの目盛を深く寒の朝★★★
バスに乗り日差しまぶしく春近し★★★
寒晴やビニールハウスの開けらるる★★★★
寒さを遮ってビニールハウスでは、いろいろな野菜や花、果実などが育てられる。寒晴の一日は、ビニールハウスを開けて中が蒸れないようにする。寒中にあって、それほど気持ちよいいい天気なのだ。(高橋正子)
1月16日(4名)
小口泰與
清らかな朝日浴びけり雪浅間★★★★
寒暁の榛名の襞の彫深し★★★
冬赤城長き裾野に雲も無し★★★
廣田洋一
雲間より青き光や寒の月★★★
寒月に白々光る駐車場★★★
寒月の光を肩に帰り道★★★★
「寒月の光を肩に」の「肩に」がいい。肩に射す月光を感じ取っている実感が伝わってくる句だ。(高橋正子)
多田有花
<大和三山ハイキング三句>
本薬師寺跡に咲きおり水仙花★★★★
本薬師寺跡は、今は跡地には金堂の礎石や東西両塔の上壇、塔の心礎などが残されていて、その背景には畝傍山(うねびやま)が望めるという。天武天皇の発願による官寺跡だけあって、水仙が咲けば、いかにもという気品が伺える(高橋正子)
振り向けばしぐれておりぬ畝傍山★★★
松の内藤原京の跡歩く★★★
桑本栄太郎
外つ人の祇園小路や冬の雨★★★
冬鷺ののそりのそりと高瀬川★★★
尾ひれつく噂ばなしや女正月★★★
1月15日(3名)
多田有花
青空に咲いて寒九の紅梅は★★★★
寒九の寒さのなかにも紅梅が鮮やかに咲いて目を楽しませてくれる。その上に青空の青が紅梅を印象付けている。すっきりとした句だ。(高橋正子)
日脚伸ぶ頂に影長く伸び★★★
春を待つ沖こそ最も光りけり★★★★
廣田洋一
並びたる車真白き小正月(原句)
並びたる車真白し小正月★★★(正子添削)
小豆炊く湯気の吹き出す小正月★★★★
小正月には、ぜんざいをいただく風習があるが、この句はそのために小豆を炊いているのであろう。「湯気の吹き出す」がリアルで、いかにも小正月らしい。いい生活句だ。(高橋正子)
酒瓶の杜氏は女性小正月★★★
小口泰與
山風や枝に飛びつく寒雀★★★★
上州の虎落笛こそすさまじき★★★
名の木枯る鳥飛び立ちて枝のゆれ★★★
1月14日(4名)
小口泰與
岩に付く霧の落葉や鳥の声
「霧」は、「桐」の間違いですか。
あけぼのの梢取り合う寒雀★★★★
あけぼのの頃から寒雀は元気。梢をじゃれ合うように取り合っている。寒雀の元気で、可愛い姿が見える句。(高橋正子)
からびたる郷の社や寒紅梅★★★
多田有花
<橿原神宮から畝傍山へ三句>
緋鳥鴨と大鷭群れし深田池★★★
寒中の瑞鶴之碑に詣でけり★★★
蝋梅の匂いし若桜友苑★★★
廣田洋一
七種の青の若さを頂きぬ★★★★
「青の若さ」によって句が新しくなっている。頂いた作者も若返った思いだろう。(高橋正子)
寒鯉の甘み広がる洗ひかな★★★
見映え良き特賞用意初句会★★★
桑本栄太郎
寒暁の茜となりぬ放れ雲★★★
朝日さす水面眩しく寒晴るる★★★
雲影の冬田を走る車窓かな★★★★
1月13日(3名)
小口泰與
底冷や長き裾野は雲の中★★★
妻が撒く餌や梢の寒雀★★★★
白雲へ同化の浅間霜冴ゆる★★★
廣田洋一
白玉の大きく見ゆる寒卵★★★
寒卵だけの昼餉や息災に★★★★
おそらく一人居の昼食であろうが、清らかな寒卵を大切に、昼食とし、息災である生活がいい。(高橋正子)
白粥にとろりと流す寒卵★★★
桑本栄太郎
冬川の浅き流れや鳥の声★★★
乗換えの日差しまぶしき寒の晴れ★★★
水仙を線路の土手に仰ぎけり★★★★
電車の乗って土手上を見上げると水仙が咲いている。思いがけなく水仙の咲く景色に出会ったささやかな喜び。少しの楽しみ、少しの嬉しさがいい。(高橋正子)
1月12日(4名)
多田有花
失せやすき一月の日々確実に★★★
寒暁に起きだし山に向かいけり★★★★
寒烏ねぐらに目覚め鳴き初めし★★★
小口泰與
冬ざれや雀のあさる庭の隅★★★
かあかあと何を望むや寒鴉★★★
野ざらしの手押し車や空っ風★★★
廣田洋一
探梅や寺から寺へ訪へり★★★★
寺の庭にはよく梅が植えられている。寺の歴史と共にあるような古木もあって、一輪、二輪の梅の香に
すがすがしい気持ちになる。「寺から寺へ」の探梅が、静かな気持ちにさせてくれる。(高橋正子)
二の丸三の丸と過ぐ探梅行★★★
探梅の一輪見付けまた一輪★★★
桑本栄太郎
寒禽の枝のみ揺るる朝かな★★★★
天辺の高き梢や冬木立★★★
おもむろに嶺に育つや寒の月★★★
1月11日(4名)
多田有花
爆音が落葉の山を走る走る★★★
増位山今日も落葉を踏みゆかん★★★
ねぎ白菜求め今夜は鍋料理★★★
小口泰與
蝋梅や利根の白波尖りける★★★★
蝋梅と利根の白波の取り合わせに、一月の寒さが目に見えるように句に詠まれている。寒々とした中にも蝋梅の透き通るような花が希望のように思える。(高橋正子)
猟銃音白鳥翔ちてそれっきり★★★
逆光と風に煽らる枯尾花★★★
廣田洋一
朝稽古終へたる子らや鏡開★★★★
大鍋に湯気立つ小豆鏡開★★★
稽古終へ鏡開きの神事かな★★★
桑本栄太郎
川中に一羽孤高や冬の鷺★★★
天辺の青空に透き冬木立(原句)
青空に天辺の透き冬木立★★★★(正子添削)
「天辺の」は「冬木立」に掛かるので、添削しました。
冬木立が寒気に張りつめた青空に透ける様子が、きっぱりとして潔い。(高橋正子)
山茶花の植込み低く零れけり★★★