左右SP毎に別々のパワーアンプを使えば、マルチアンプSPと呼ぶかと言うとそれは違います。
再生帯域を電気的に分け、それぞれの帯域を担当するSPユニットを別のパワーアンプで駆動する方式を言います。
通常のSPシステムは再生帯域が異なるSPユニットを複数組み合わせて構成される。
それぞれの再生帯域はLCネットワークで分けられ、調整される。
さて、どの切り口から始めるか
LCネットワークシステムの限界から話をした方が分かり易いでしょう。
LCネットワークはL(コイル)とC(コンデンサー)で再生帯域を分けられ、それぞれの音量差はR(抵抗)で構成される。
コイルは高域が通りにくく、コンデンサーは低域が通りにくいと言う性質を応用したものです。複数の組み合わせで、その再生帯域と減衰カーブを調整している。
その容量の大きさで、クロスオーバー周波数が調整できる。
LCネットワークはSPボックスに内蔵される場合が普通です。
アンプとSPユニットの間に配置される。
音声信号はパワーアンプで増幅され、LとCで音声帯域を分けられ、抵抗で信号の強さを調整された後にSPユニットに送られる。
L、Cは一般的には固定されている。
抵抗は連続可変抵抗(可変回転式)と切り替え式があり、2ウエイSPの場合は高域ユニットの出力を絞って、調整します。
最近のSPのLCネットワークは固定抵抗式がほとんどです。
回転式(ボリューム型)抵抗の場合、左右のSPシステムの摘み位置が同じでも、正確に同じとは言い切れない。かなり良い加減な部分がある。
回転式(ボリューム型)抵抗は空気に触れれば錆が出る。接触抵抗が生まれる。
時々はセルフクリーニング(グリグリ回す)が必要。
固定抵抗・切り替え式の場合は、SWを擦動し、接触面をクリーニングしなければならない。
固定式抵抗は接触部がなく、ガリが生じない。左右の音量差が少ない。
その反面、固定抵抗式は信号の強度を調整ができない。
現代アンプは音質調整が出来ない。低域調整、高域調整、低域ブースト機能がない。
つまり、使用者がSPの調整は設置位置(床、壁等と位置)で調整せざるを得ない。
音質調整の自由度が低い。
実際、自分が使用しているSPを例に取ると
・Altec 620B(604−8H内蔵) 同軸2way 可変ボリューム式
・Westlake audio Lc 265.1v(ダブルウーファー+同軸2wayの3way) 固定抵抗式
但し、ウーファー部と同軸2way部はバイワイヤリング方式 二組のアンプで駆動可能 アンプ側で調整は可能?
・Magnepan MG1.7 オールリボン 3way 固定抵抗式。ゼロ抵抗と固定抵抗の交換が可能 固定抵抗切り替え式
・KEF LS50 同軸2way 固定抵抗式
古い設計のSPは可変ボリューム式が多く、新しい設計のSPは抵抗固定式が多い。
LCネットワークは設計はSPユニットが持つ特性(能率、インピーダンス等、周波数)を理解しなければならない。
市販SPシステムのネットワークはメーカーの試行錯誤を経たノウハウそのものが詰めこまれていると思います。
個人が公表されているSPの公表値を元に設計しても、上手くいくとは限りません。
SPから音を出す。
その経路を振り返る。
SPから音を出す。
音信号をSPユニットの振動板に伝えることです。
ウーファー(低域SPユニット)の振動板は重い。
振動板が重ければ、信号の入力が途絶えても、振動板は止まれない。
走っている車は慣性力で急に止めれないのと同じ理屈です。
余計な音を出さないためには、その振動を速やかに止めなければなりません。
磁石の周りにコイルを巻き、そこの電流を流すと、コイルが動く。
このコイルに振動板を付けると、振動板が動く。
音声信号に従って電流量を変化させれば、振動板は電流の変化に従って動く。振動板が空気を振動させて、音となる。
音声信号が途絶えても、振動板が止まらなければ、コイルが磁界を横切ることになり、そこで電力が発生する。
SPの振動板に由来とする電力を逆起電力と言います。
その逆起電力が速やかにパワーアンプに吸収されなければならない。そうでなければ、ウーファーの振動は止まらない。元の信号にはない余分な音が出ることになります。
この振動を速やかに止めるには、内部抵抗の少ないダンピングファクターの高い駆動力のあるアンプが必要となります。
SPユニットとパワーアンプの間にLCネットワークを挟むことは、アンプのダンピングファクターを大きく下げることとと同じです。
ツイター(高域SPユニット)、ドライバー(中期SPユニット)は振動板が軽いので、逆起電力は小さく、ウーファーほどの問題は起きません。
ウーファーの能率がミッド、ツイターより高かったらどうするか。
ウーファーの見掛け上の能率を下げるように、調整しなければならない。
その方法はウーファーとパワーアンプの間に抵抗を挟むことです。
ダンピングファクターは大きく下がる。つまり、切れ味の悪い低音となる。
ミッド・ツイターの能率がウーファーより高い場合は、アンプとの間に抵抗(LCネットワーク)を挟む必要がある。
理想的なのはウーファー、ミッド、ツイターの能率が同じで、LCネットワークに抵抗を加える必要がありません。
LCネットワークはコイルとコンデンサーと音量を調整する抵抗の3つの組み合わせです。
クロスオーバー周波数が低くなればなるほど、コイルは大型化し、コンデンサーの容量は大きくなる。つまり、ネットワークは大型化せざるを得ない。コイルの場合は空芯コイルが好まれるけれど、大型化を避けるため、鉄芯コイルにさざるを得なくなる。
JBLプロフェッショナルシリーズの代表製品と言えば、4343。
その最も特徴は、ミッドバスを導入し、4ウエイにしたことです。
これにより、低音域のウーファーと中音域を担当するドライバーの守備範囲が理想的な範囲で収めることができるようになった。ウーファーはより重低音寄りに設計可能となり、中高域ユニットの守備範囲を狭めることができ、ホーン長の短縮が可能になり、SPシステムの薄型化が可能となりました。
その一方、ミッドバスと低域ユニットのクロスオーバー周波数が大きく下がり、LCの値が大きくならざるを得なくなった。これが課題となりました。
4340は4343シリーズの最初期版。
ミッドバスとバスのクロスはミッドバスとバス間のLCネットワークはありませんでした。
チャンネルディバイダーを使うことが前提の設計でした。
4343もチャンネルディバーイダーが使える仕様になっています。
SPユニットの歪みが少ない再生帯域を組み合わせる。
LCネットワークはSPのインピーダンスを元に設計される。
しかし、SPのインピーダンスが公称8Ωであったとして、大凡の値でしかない。周波数によって、大きくウネウネしている。
LCネットワークでは、理論上のカットオフ。クロスオーバー周波数が決めることができない。
そのため、市販SPは補正回路が組まれているのが普通です。
以上がLCネットワークの欠点。
測定器がない、無響室を持たないアマチュアにとって、ネットワークの設計は相当ハードルが高いと思います。
対して、
チャンネルディバイダーはクロスオーバー周波数もスロープ(減衰量)も理論通りに決めることができる。
これを克服するのがチャンネルディバイダーなのですが・・・・・
問題点もあります。
長くなり過ぎましたので、part2に移します。
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