平田の木綿街道です。
かつては木綿の集散地として栄えた平田の街ですが、今は見る影もなく、都市再開発という名の道路拡張でありきたりの町並みとシャッター商店街です。
中心地から外れたところに古くからの町並みが残っています。私の中学、高校時代の通学路でした。その当時はいくつかの商店が営業しており人々の営みがありました。今はイベントの時のみ人が歩いています。普段は閑散としています。
本日はイベントがありましたのでちょっと行ってみました。
来間屋生姜糖さん。生姜の汁を砂糖で煮詰めたお菓子です。生姜は斐川の出西生姜を使っています。
持田酒造。通称「酒持田」。もう1軒「酒石橋」という酒造会社がすぐ近くにありましたが、廃業されました。造り酒屋さんらしい重厚で立派な建物です。間口の広さも格式のひとつです。平田の酒は総じて甘口です。今は若干辛口になっています。
杉玉があります。
酒持田の正面にある民家。1階の真ん中に通路があり、裏手の川「船川」に通じています。入ってみましょう。
奥の明るいところが船着場です。かつてはここから木綿の積み出しが行なわれていました。船川は宍道湖に繋がっています。
幼少の頃、ここらあたりは川遊びの場所でした。フナ釣りをしたり、ザリガニを捕ったり。
円柱形ポストが懐かしい。
幾つもの路地があって、ガラス扉一枚で生活の居間が覗けました。軒下の洗濯物。テレビの音、食事の支度の魚を焼く匂い。すだれの向こうには扇風機とステテコで昼寝をするおじさん。人々の暮らしが路地の中に溶け込んでいました。鬼ごっこでここいら辺を走り回っていました。現代はプライバシーという見えない壁が大人になった私を受け入れてくれません。奥まで入り込めません。ここをずっと奥に行くと別の大通りに出ることができ、近道でした。
そういえば「動物園小路」という路地がありました。「トラさん」、「カメさん」などと、動物の名前のお年寄りが住んでいたとか。事の真偽は明らかではありません。
加藤醤油屋さん。前を通ると、大豆を蒸す香り、もろみの香りがしていました。醤油屋さんが何軒かあり、甘口の甘露醤油(再仕込み醤油)を作っていました。刺し身にはこの甘い醤油でないとしっくりと来ません。夏になると油の乗った鯵や飛魚の刺身に甘露醤油を使います。最高のごちそうです。
「本石橋邸」。隣の「酒石橋」とともに、今は住む人がいません。内部は見学することができます。
入母屋造りの民家。間口は3間ほど。奥に長いです。通称ウナギの寝床。かつての平田の町並みはこのような入母屋造りが軒を並べていました。
こんなに人通りがあるとなんだか場違いなところに来たような。懐かしさはあれど昔の記憶と違っており、よそ者になってしまった感があります。
Nikon Df + Nikon Ai AF Zoom-Nikkor ED 18-35mm F3.5-4.5D (IF)