おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です
黄帝内経素問 宣明五氣篇 第二十三
第二節
五精所并、精氣并於心則喜、并於肺則悲、并於肝則憂、并於脾則畏、并於腎則恐。是謂五并。虚而相并者也。
五藏所惡、心惡熱、肺惡寒、肝惡風、脾惡湿。腎惡燥。是謂五惡。
語句の意味
五精=五臓の精気。新・東洋医学辞書
五精=五臓の精気のこと。
<霊枢九鍼論>「五并とは、精気肝に并わすれば・・・是、五精の気、蔵に并すと謂う也。」
<素問宣明五気論>「五精の并す所。精気心に并すれば、則ち喜ぶ。」
并=ヘイ。アワせる→合。并合=併合。兼ねたもつ。
并=併。1)集合する。略。
2)加重する。略。
3)連結、交通の意。略
4)偏勝すること。略。
鍼灸医学大系 語句の解
并=略。五藏には夫々の精気があるから、他の藏器の精気がはいりこんで来て、肩を并べるということは、正常の状態に於てはない筈である。従って精気が并するということは、或る藏器に虚の状態ができたときに、その虚の所に他の藏器の精気がはいりこんで来て、そこに并立の状態を起すことになるものと考えられる。
略。
つまり心が虚して居る所に他に藏器の精気が押し込んで来たので、ここに一種の興奮状態を惹起し、そのために心は志をおさえることができなくなって、病的な喜の状態を表わすものであろう。
東洋学術出版社素問【注釈】
并す=呉崑(1551-1620?)の説「并は併合して入るのである。五蔵の精気がそれぞれの蔵にあるときには病気にならないが、一蔵に集中すると、邪気がその蔵気を実してその蔵気の感情〔五志〕を顕わすのである」。
五行の配当表
五并
肝-木-憂
心-火-喜
脾-土-畏
肺-金-悲
腎-水-恐
喜=五志の一つ。
五志=怒・喜(笑)・思(慮)・悲(憂)・恐(驚)
悲=哀感にたえないこと。五行の五志の金に配当される。
憂=五志では金に、五変では火に配当される。
畏=イ。オソれる→恐。おじ恐れる。従う。重んじ敬う。オソろしい。オソれ。カシコい。もったいない。カシコまる。恐れ入る。あやまり入る。つつしんで承る。つつしんですわる。
恐=心中おそれおののき不安がること。五行の水に配当される五志の一つ。
恐傷腎=きょうはじんをやぶる。大いに驚き恐れれば精神が損傷され、腎気が傷れ、気が下陥する。腎は蔵精を主り、腎気が損傷されれば精気が弱まって、不安になったり、骨がもろくなり、精が泄れたり小便失禁などがあらわれる。
<霊枢本神>「恐惧して解せざれば精を傷り、精傷れれば骨痠痿厥し、精時に自ら下る。」
五藏所悪
悪=惡は旧字。アク。ワルい。アし。正しくない。よくない。見にくい。あらっぽい。おとっている。このましくない。いやしい。縁起がわるい。きたない。おだやかでない。ワル。・・・。ニクむ→憎。いむ=忌。イズクんぞ。アア、嘆ずる声。
心惡熱=心悪熱・しんはねつをにくむ。悪は、憎むの意味である。心は火臓であり、熱極まれば心火熾盛する。心は血脈を主り、熱甚だしく火亢すれば、津液消耗、あるいは迫血妄行する。心は神明を主り、熱盛んなれば、神明昏乱して譫妄、躁狂などがあらわれる。
<素問宣明五気篇>参照。
肺惡寒=肺悪寒=はいはかんをにくむ・肺は全身の表を主り、外は皮毛に合し、鼻に開竅する。寒気が侵襲して衛外の陽気を傷れば、直接肺経を犯す。また肺は気を主り、寒なれば気は滞る。ゆえに肺は寒を悪むといわれる。
<霊枢邪気蔵府病形>「形寒寒飲すれば肺を傷る。」
<素問宣明五気篇>「五蔵の悪む所・・・肺は寒を悪む。」
肝惡風=肝悪風・かんはふうをにくむ。肝は風木の臓である。故に、風気が勝れば肝風は動じやすく、眩暈、筋肉の痙攣や収縮(「肝は筋を主る」による)をひきおこす。よって「肝は風を悪む」といわれる。風に関係のある一連の病証、すなわち中風・驚風・風湿・麻木・掻痒・痙・癇などはすべて風邪と肝に密接につながっている。
<素問宣明五気篇>「五蔵の悪む所・・・肝は風を悪む。」
<素問至真要大論>「諸風掉眩、皆肝に属す。」
脾惡湿=脾悪湿・ひはしつをにくむ。脾は水湿の運化を主る。湿が盛んであれば脾陽を傷りやすく、健運に影響して泄瀉を発生し、四肢困乏などの症状をあらわすところから、脾は湿を悪むの説がある。<素問宣明五気篇>参照
参考
胃は潤をこのみ燥をきらい、脾は燥をこのみ湿をきらう。医歯薬出版株式会社「中医学入門」
腎惡燥=腎悪燥・じんはそうをにくむ。腎は水臓であり、蔵精を主り、津液を主るので、乾燥すれば陰津は傷られ、腎精は損耗し、甚だしければ骨髄は枯竭するのでこう呼ばれる。
<素問宣明五気篇>「五蔵の悪む所・・・腎は燥を悪む。」
心悪熱であれば、その対極にある腎は冬に配当される、従って、「腎は寒を悪む」でなければおかしい。
陰陽応象大論に
東方(肝)は風を生ず。
南方(心)は熱を生ず。
中央(脾)は湿を生ず。
西方(肺)は燥を生ず。
北方(腎)は寒を生ず。
ならば、肺悪燥・「肺は燥を悪む」でなければならない。
此の考えはおかしいのでありましょうか。
漢方用語大辞典、明解漢和辞典
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