拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

Valery Gergiev in Baden Baden(バーデンバーデン/ドイツ)

2011-10-29 | 音楽&MOVIE


昨夜はドイツ南部の温泉保養地バーデンバーデンの祝祭劇行(Festpielhaus)で、ヴァレリー・ゲルギエフがチャイコフスキーの交響曲第六番を指揮すると聞き、これはチャンスとばかりに仕事返りにICE(ドイツの新幹線)へ飛び乗って聴きに行ってきました。

ゲルギエフといえばチャイコフスキー等、彼の祖国ロシアの偉大な作曲家達の数々の名曲を指揮する、今や世界を代表するマエストロの1人ということで、期待も膨らみます。


この日の演目は、チャイコフスキーの交響曲第一番と、ピアノ協奏曲第一番、そして交響曲第六番「悲愴」の3曲。
ピアノ協奏曲は今年のチャイコフスキーコンクールの優勝者のイケメンロシア人Daniil Trifonovとのこと。


で、その結果ですが、交響曲第一番とピアノ協奏曲は、「ひどいな」の1言。
まるで急造オケが、初見の曲で初あわせのリハーサルをしているんじゃないかと思うぐらい。
それに加えてホールの音響がかなり悪く、全然音が響かない為、後部座席まで音が届かず、相当ガッカリな状況。


ピアニストもコンチェルトの後にソロで演奏したショパン(華麗なる大円舞曲)は、なかなか良い演奏をしていたので、
期待の若手だと思いますが(後で知りましたが今年20歳でグランプリ受賞だとか)、巨匠との競演ということもあってか最初ガチガチで、「やる気のないオケ」ともぜんぜんうまくかみ合わず、ピアノもオケも所々音をはずし、ありゃありゃという感じ。

おそらくステージで、「あれ?こんなはずでは、、、」と、頭が真っ白になってしまっているのではないか?と、こちらが心配してしまう程でした。(後半は少し持ち直しましたが)



この2曲の後、休憩を挟んで聴いた交響曲第六番。
これはまさに素晴らしいの一言。

はっきり言って別のオーケストラなのではないか?と思う程。
(マリインスキー劇場管弦楽団の同じメンバーのはずですが)

ゲルギエフの独特の解釈も垣間見え、特に第三楽章と第四楽章は心からブラボー!と言いたくなる程、よかったです。

彼独自のスタイルである、中指、薬指、小指まで小刻みに震わせて表現する指揮も、冴え渡っていました。(笑)



実は今回の演目ですが、金~日の三日間毎日全て別の曲目で、チャイコフスキーの交響曲全6曲に加え、ピアノ協奏曲第一番とヴァイオリン協奏曲まで演奏するというもの。

通常は2曲位を、3日間通して同じ演目を演奏するのが一般的なので、ひょっとすると主催者側があまり現場の意向を聞かずに、客寄せの為のセールス的な視点で、演目等を決めてしまったのでは?(オケ側は「時間も無いのにこんなにできるかよ!」、「じゃあ初日は六番だけ重点的にやって後は流しておこうか」と反発したのでは?)という印象でした。


スイスやフランスの国境に近いドイツ南部の田舎町で、沢山の人々を集めたプロモーションは評価されるべきなのでしょうが、その中身で観客をがっかりさせは意味がないので、演目は厳選した方がよいと思います。


チケットは最終日も買っているので(チャイコフスキーのバイオリン協奏曲が聞きたくて楽しみにしていたのですが、この調子ではかなり心配???)、後日その状況を報告したいと思います。




※写真:開演前のステージ(Festpielhaus in Baden Baden)