音楽は音楽をありのままに聴くというが・・・!
私にとって音楽いえば、JAZZのウェイトが高いのだが、従来あまり解説や評論を当てにしないで来た。
自分の耳とハートを重視し、好きな音楽を探求した。
それは、ある意味で正解であったのだが、「音」としての優秀さはわかり得る。
しかし、重要なことを見逃してきた思いがする。それは、何か。
おそらく、年齢的なものもあるのだが、「音楽」に込めた「思い」を聞き逃してきた感がある。
解説を事前に読むと、解説に左右される。
それが、いやでまずは「音楽を音楽のままに聴く」ことを重視してきた。
それは、行き過ぎると、演奏家から装置まで性能重視の危険性を求める傾向に陥る。
それが従来のわたしであった気が今更ながらする。
それが変わったのが、50歳を過ぎてから。
自分自身の年齢とともに、衰え行く体や気力を知り、他人への思いやりが生まれた。
同時に、他人の頑張りや周囲への思いやりが目に入るようになり、
音楽の中にも感じることが出来るようになってきた。
そんな私がいま一枚のCDをあなたに推薦する。
それは、
レスター・ヤング ウィズ ザ・オスカー・ピーターソントリオ
である。
LESTER YOUNG & THE OSCAR PETERSON TRIO のメンバーが共演するOLD JAZZです。
LESTER YOUNG といえば、先日ご紹介した書物「バット・ミューティフル」にも掲載されていた伝説のJAZZ MAN です。
軍隊でのいじめから肉体と精神を病み、全盛期の演奏には手が届かなくなったLESTER YOUNG を、TRIOの全員が気遣いながら、演奏する情景が浮かび上がる。
JAZZを通した仲間の「思い」が綴られていそうで、LESTERの奏でる音色に耳を済ませてしまう。
よきアメリカ時代を彷彿させながら、(黒人差別に打ちのめされたLESTER 自身)演奏する彼のテナー・サクソフォンに安らぎを感じてしまう。
そこには、憎しみはなく、軽やかな空気のような美しさがある。
技術はとうに過ぎ去りし昔であるが、包み込む「思い」が蔓延している。
ああ、懐かしい。
まるで、自分の昔を除いているようだ。
心地よいセピア色の写真の世界と同じようだ。
困難な時を経てからは技術を置いてきた。
そして、芸術性を帯びたのかもしれない。
平成24年3月31日 川越芋太郎
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