川越芋太郎の世界(Bar”夢”)

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音楽は音楽をありのままに聴くというが・・・!

2012-04-01 16:24:05 | 短編集バー物語

音楽は音楽をありのままに聴くというが・・・!


私にとって音楽いえば、JAZZのウェイトが高いのだが、従来あまり解説や評論を当てにしないで来た。
自分の耳とハートを重視し、好きな音楽を探求した。
それは、ある意味で正解であったのだが、「音」としての優秀さはわかり得る。
しかし、重要なことを見逃してきた思いがする。それは、何か。
おそらく、年齢的なものもあるのだが、「音楽」に込めた「思い」を聞き逃してきた感がある。


解説を事前に読むと、解説に左右される。
それが、いやでまずは「音楽を音楽のままに聴く」ことを重視してきた。
それは、行き過ぎると、演奏家から装置まで性能重視の危険性を求める傾向に陥る。
それが従来のわたしであった気が今更ながらする。


それが変わったのが、50歳を過ぎてから。
自分自身の年齢とともに、衰え行く体や気力を知り、他人への思いやりが生まれた。
同時に、他人の頑張りや周囲への思いやりが目に入るようになり、
音楽の中にも感じることが出来るようになってきた。


そんな私がいま一枚のCDをあなたに推薦する。
それは、
レスター・ヤング ウィズ ザ・オスカー・ピーターソントリオ
である。
LESTER YOUNG & THE OSCAR PETERSON TRIO のメンバーが共演するOLD JAZZです。
LESTER YOUNG といえば、先日ご紹介した書物「バット・ミューティフル」にも掲載されていた伝説のJAZZ MAN です。


軍隊でのいじめから肉体と精神を病み、全盛期の演奏には手が届かなくなったLESTER YOUNG を、TRIOの全員が気遣いながら、演奏する情景が浮かび上がる。
JAZZを通した仲間の「思い」が綴られていそうで、LESTERの奏でる音色に耳を済ませてしまう。


よきアメリカ時代を彷彿させながら、(黒人差別に打ちのめされたLESTER 自身)演奏する彼のテナー・サクソフォンに安らぎを感じてしまう。
そこには、憎しみはなく、軽やかな空気のような美しさがある。
技術はとうに過ぎ去りし昔であるが、包み込む「思い」が蔓延している。


ああ、懐かしい。
まるで、自分の昔を除いているようだ。
心地よいセピア色の写真の世界と同じようだ。
困難な時を経てからは技術を置いてきた。
そして、芸術性を帯びたのかもしれない。



平成24年3月31日 川越芋太郎

Lester Young With the Oscar Pe
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