川越芋太郎の世界(Bar”夢”)

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美の巨人たち:棟方志功

2010-12-19 21:19:27 | 美の番組紹介
美の巨人たち:棟方志功


東北の青森が生んだ世紀の大版画家にして、天才。
彼は版画を「いたえ」と呼ばせた。
本日の一枚は、その棟方が郷土の青森市に請われて製作した
花矢の柵です。
縦215cm×横668cmの大作です。


兎に角力強い。
輪郭といい、リズミカルな文様といい、
みずみずしい色彩といい、躍動感というエネルギーに満ちている。
東に鼓を打つ神
西に笛を吹く神
南北に矢を手にする神
赤い谷田ガラスと白いウサギ
なんとも奇妙な構図である。
ここに故郷青森に対する棟方の壮大な思いがあるという。


棟方といえば、独学の天才でもある。
だれの美術的教育を受けていない。
まるで、板からの霊が突き動かすように一心不乱に掘り進む。
棟方は次のような言葉を残す。
「自分でないものから始まってこそ、仕事の本当の事が始まる。」
自分でないとは、つまりは他のものから?
本当のことは、他のことから始まる?


棟方は最初から順風万歩の人生を歩んだわけではない。
遠近感の乏しい眼は、洋画家としての才能を開かせる事はなかった。
洋画家としての絶望感から棟方は別次元を目指した。
木版画との出会い。
それは、必然とも言えた。


「わたくしだけで何かをする世界を設けたい」

たった一人で独自の世界を構築するという意思力が見える。
棟方の「大和し美し」は7mに及ぶ絵巻ものである。
柳宗悦は、次のように評した。
「こんな本能的な作物に出会う事は実に久しくなった。」
前代未聞の作品である。


棟方の作品の色は、故郷青森の「ねぶた」にあるという。
このねぶたの色こそ・・・わたくしの色彩です。」と明言する。


版画というのは奇妙なもので、作品そのものをめでるわけではない。
刷り上げて初めて作品となる。
そこを棟方は次のように表現した。


あいしてもあいされない、
おどろくにしてもおどろきすぎない
よろこんでもよろこびきれない
かなしくてもかなしみきれない
それが版画です。


湧き出でるものを代わりに棟方が行っているに過ぎない
力と修練で削るだけ
まさに、他力の芸術!


棟方の墓碑銘が面白い。
1903年生まれ~無限大
努力して努力して、その先に何が。
しっかりとした技術と技法に根ざした天才
無限のエネルギーを人々に残してくれたのではないだろうか。
美という無限大の力を。


棟方志功―わだばゴッホになる (人間の記録 (13))
棟方 志功
日本図書センター



板極道 (中公文庫)
棟方 志功
中央公論新社



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