時々飾り羽根を広げることがあります。パフォーマンスなのでしょうか!
自分の大学在学当時の卒業研究は、電着塗装の多層塗布可能性の研究であった。電着塗装の原理は、水溶性塗料の溶液中で、被塗物を陽極、塗料タンクを陰極として、直流電圧をかけることによって、塗料を電気的に塗着させる方法である。一種の電気メッキと同様考えても良い。乗用車の塗装の下塗りに利用されている。しかし、ある程度の塗膜厚を必要とするためには二回塗り・三回塗りが必要となるが、乾燥塗膜が絶縁性持つことで不可能であった。そこで、多層塗りの塗料を開発する基礎研究に従事し、酸化チタンを使った電気泳動による流動電位を測定する研究を東大生産研究所の実験室をお借りして行っていたことがある。
酸化チタンは安定性が良いため、利用したのであるが、当時光触媒として現在のような脚光を浴びていたのではなく、むしろ、チョーキングといって、白色塗膜が劣化し易いという欠点ばかりが強調されていた。 その原因が酸化チタンの光触媒としての機能が原因していたとは考えも及ばなかった。現在は光触媒として環境汚染物質を吸着させ、分解するという光化学の最先端の材料として、用いられていて、大変興味深い講義であった。
チタンアパタイトを塗料製品化し、抗菌塗料「SNP-α」として世に出した末吉ネームプレート製作所社長沼上氏の講義は製品化にあたっての苦労話であったが、開発時から販路に載せ、ATMなど銀行でタッチパネルのカバー等の特許取得まで多くの挫折があり、それを克服した成功談には感銘を受けた。チタンアパタイトがバインダーと一緒になった塗膜はチタンアパタイトが表面に配置されないと防汚や除菌効果が薄れるため、顔料安定化に苦労があり、また、顔料自体は不透明であるため、透明膜にするための改善があったと考えられるが、透明性が悪いために逆に他者から見えにくく、スキミング防止にも役に立っているとの波及効果があったそうである。
質問の時間が取られ、先に講義した富士通の若村氏との話に食い違いがあるとした光触媒の効果についてであるが、光触媒のチタンが機能するのは紫外線下であり、製品化したフィルムの使用が紫外線下ではなければ光触媒を使って効果が出るというのに矛盾があるとの質問であった。講師の返答によると、抗菌塗料には銀イオン、銅イオンなども含まれていて、チタンアパタイト単独ではないとのことであった。ちょっと苦しい返答であったが、本論とは離れるため質問者もこれ以上のやりとりはなかった。(このシリーズ最終回です)