鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

埴沙萌先生の逝去

2016年03月11日 00時00分01秒 | 紹介

 植物学者であり、野草写真研究の第一人者であった埴沙萌(はにしゃぼう)先生は入退院を繰り返していたが、薬石効なく、2月23日に帰らぬ人となった。85才の天寿を全うされた。惜しい方を亡くし、残念で仕方がない。晩年は人生の集大成としての新たな執筆活動を計画されていた。ご存じの方も多いと思うが、ほとんどの小学校の図書館には、先生が執筆に当たられたキノコ等の写真集が整備されてある。

 

 キノコの胞子が飛び散る様子を時間を追って撮影するインターバル画像で紹介している。印象深いのはカテンソウという野草の種子をはじき飛ばす。ホウセンカのように外部の刺激によって、種が飛び散る様を写真にした物である。実際の撮影現場は、ご自宅の倉庫兼用のアトリエで撮影されている。  さやに命中するように、割り箸や細竹を利用した自家製の飛び道具はカテンソウの種をとばす道具で、これをさやに命中した瞬間の撮影である。三脚に据え付けたカメラのシャッタースピードを変え、リモコンでベストショットを撮る。カメラを知り尽くさなければ決して取れない世界である。

 

 さらに圧巻なのは、つくしの胞子が見せるダンスである。 温度変化により活発に活動する性質をうまく表現されている。これらは先生が執筆された「足下の小宇宙」2013年NHK出版から上梓されている冊子に詳しく記述されている。またNHKの特集番組、スペシャル等で、ビデオ撮影されたものが数回上映されているので、ごらんになった方も多いと思う。海外へも英語版が配信されていて、高い評価を博している。

 

 埴沙萌先生は大分県出身で、たまたま女房の実家の近くに居住されていた関係もあり、ご自宅を長野県水上町に移されてからも、年に数回おじゃましていた。植物研究者らしく、自然に囲まれたご自宅環境を大変喜んでおられた。百葉箱を庭に設置されていて、外気温と地上、地中の温度を毎日計測されていた。装備はセンサーによるデータ収集であり、書斎にいながら記録計にデータが送られる近代的な計測であった。散歩道は雑草の覆われた獣道(けものみち)のようであったが、先生の弁によるとこれこそが四季を通じて分かる植物観察グラウンドであるといわれていた。

 

 撮影機材についても多方面で工夫されていて、自家製の三脚は、低位置にカメラを固定でき、携行性も良い物であった。晩年は入退院の繰り返しであったが、奥様と行く度にいろりでおでん鍋を作って頂き、そのおいしさは今でもはきりと覚えている。天国でも研究を続けておられることであろう。ご冥福を祈りたい。