サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

脳性麻痺7人制サッカー日本代表合宿

2014年09月23日 | CPサッカー

先日(9月20日)、脳性麻痺7人制サッカー(CPサッカー)日本代表合宿でのトレーニングマッチを観てきました。トレーニングマッチの対戦相手は神奈川県の女子サッカーチーム「ノジマステラ神奈川相模原」のユースチームである「ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ」。現在は中学2年(の一部)から高校1年生がまで在籍しているようです。
CPサッカー日本代表を見るのは本当に久しぶりでおそらく2010年の11月末の合宿以来、現在の佐野監督になってからは初めてです。監督になられる前からの知人であるにも関わらず、何という不義理!
来月韓国で開催されるアジアパラ競技大会(アジア大会版パラリンピック)の前にはなんとか観に行きたいと思っていて、やっと行ってきました。

まずCPサッカーのことを知らない方のために簡単に説明しておきます。
(噛み砕いて人に説明するほど詳しいわけではないのですが)
CPサッカーは、脳性麻痺、脳卒中などの脳血管障害脳性麻痺、脳外傷や頭部外傷(原因として交通事故など)により、身体に麻痺を持つ人が行うスポーツ。
障害程度によりC5からC8の4段階のクラス分け(C5がもっとも重い)がなされています。(公式ルールとしては)走れることが前提となります。もちろん健常者のようには走れません。一例を言えば、C7の選手は片側が麻痺していて引きずるような走り方だったりします。蹴り足は自由に使えても軸足がぶれてしまったり、そんなこともあったりします。
(さらに重度の選手もともにプレーする“楽しむ脳性まひ者サッカー”もあるかとは思いますが、そのあたりの事情はあまりよくわかりません)
競技人数は7名。ピッチの大きさは11人制サッカーのおおよそ半分で、オフサイドはありません。
またブラインドサッカー(視覚障害者サッカー)とともに、パラリンピックの正式種目にもなっています。
詳しくは以下のサイトを参照
http://jcpfa.jp/cp_soccer/index.html

 実はCPサッカー日本代表を観るのは確か4回目。ですから精通しているわけではなく以前との比較がうまくできないのですが、全体的に以前よりかなり組織化されているといった印象を受けました。特に守備。前線やサイドの選手も守備の意識が高いことが目に付きました。
ちなみにシステムは、2・3・1みたいな感じです。
個々の選手の印象で言えば、現キャプテンでFWの芳野竜太選手(絶対的エース。かっこ内はチームの紹介映像にあった売り文句)は攻撃力のみならず、全体を見渡し気を配ることができるように進化していました。攻撃面では、ポストプレー、ドルブルからのシュート、クロスに飛び込んでのヘディングシュートなど、見せてくれました。
大ベテランのGK加賀山ヘンリー直義(王国からの贈りもの)選手はポジショニングの良さを感じました。
サイドの谷口泰成選手は(ハマのダイナモ)の異名の通り、豊富な運動量で攻守に貢献。
若手でセンターというか(トップ下というかボランチというかなんと呼べばいいんでしょう)の戸田哲也選手(2020東京の主役)も豊富な運動量とパスセンスでチャンスを作りだします。
相馬勇樹選手(世界基準)は頼れるディフェンスリーダー、最終ラインで体を張り味方を鼓舞します。

そんな選手たちが来月開催のアジアパラ競技大会に参戦するわけですが、2位以内に入れば来年の世界大会への切符を手にすることができます。イランがかなりの強国らしく、組み合わせの妙もあるようです。
そして来年開催の世界大会でベスト8に入れば、悲願のパラリンピック初出場が決まります。2020年東京パラリンピックは開催国枠での出場が決まっていますが、是非自力での予選突破を決めてもらいたいところです。
ブラインドサッカーも同様に自力でのリオパラリンピック初出場を目指していますが、ブラインドサッカーが前回大会予選でぎりぎりのところでパラリンピック出場権を逃したことに比べると、CPサッカーの方がかなり壁は高いようです。

CPサッカーの強豪国は、クラス分けのなかでもっとも軽いC8(極めて軽度な麻痺)の選手が活躍する場合が多く国際大会ではスーパーなC8の選手が試合を決めてしまうということが多々あるようです。しかし現在の日本代表にはC8の選手は存在せず、C6(四肢に不随的な動きがあるが走可能)とC7(走可能な片麻痺)の選手だそうです。
ちなみにC8の選手は同時に2名まで出場可能。試合中は必ずC5(両下肢に麻痺があるが走可能)またはC6クラスの選手が出場しなければならず、いない場合は6人で試合をすることになっています。

ルール内で認められたもっとも軽度な選手を中心にチームを作り、勝ちにいくことの是非に関しては各障害者スポーツでも議論の分かれるところかもしれません。このあたりはかなりむずかしい問題でもあります。
また相手チームの選手の弱点をつく。つまり障害の部分こそをつくということも、勝ちにこだわるスポーツとしては必要かと、個人的には思います。もちろん対極として、楽しむための障害者スポーツがあるべきだということは言うまでもありません。


脳性麻痺7人制サッカー日本代表のパラリンピック出場までの壁は高いようですが、まずはアジアパラ競技大会で世界選手権への切符を掴み、リオパラリンピック出場への道のりを歩んでもらいたい!