FESCOの資本政策は成功したか?(1)
創業時の資本金は五千万円。その約90%がコンソーシアム参加企業8社からの共同出資であり、残りが創業メンバーによる個人出資とした。
私も創業者としては異例の2%程度の少額出資であった。その時まで住宅ローンと幼い子供二人を抱えた普通のビジネスマンとして生きてきて、40歳というのは経済的な余裕の最もない時だったかもしれない。なかなか家庭内稟議が通らず、少額出資に甘んじることとなったが、そのことがその後何を意味するかは理解の範囲を超えていた。
というよりも、今だから言えることだが、資本のことが良く理解できていなかったというのが、正直なところかもしれない。また、こういうお金の問題を親身になって相談し、アドバイスをくれる人もあまりいないものである。
株式会社の所有と経営の関係など、ほとんど実感がなく、営業の推進と会社の運営だけが社長としての関心の的であった。
その後、いろいろな方から、「もう少し資本政策を考えた方が良いのでは?」という貴重なアドバイスを受けたにも関わらず、その時も良く理解しないままに、具体的な行動に移すことができなかった。
ただ2005年3月の上場までには、都合5回の第三者割当の形の増資を行った。最初から2回目までは、すべて新規の事業会社からの出資受け入れであった。この増資は、私にとっても、ほとんどコンソーシアムへの勧誘的なイメージであり、資本政策と呼べるものとは程遠い感覚で進めていた。
だからこそ、資本投入のスペシャリストであるベンチャーキャピタルのような業態からは、興味はいただくものの、最終的な出資審査ですべて拒否された。
「この会社は経営主体が不明確ですね。だから、出資判断がつかないのですよ!」
と、若いベンチャーキャピタリストからの冷ややかな言葉が忘れられない。