FESCOの資本政策は成功したか?(2)
2005年3月の上場までの5回の増資のうち、第3回目が特に思い出深い。
その時のFESCOは、まさに「ベンチャーの死の谷底」にいた。この増資が成功しなければ、つまり増資に応じてくれる投資家が見つからなければ、早晩資金が枯渇して、倒産することになる。そんな瀬戸際の第三者割当増資であった。
何社かの事業会社の内諾は得たものの、やはり数千万以上の大きな金額となるとベンチャーキャピタル(VC)を頼るしかない。
一方、省エネESCO事業は、なかなか赤字基調を抜け出せない状態であり、そのような時にVCを説得するのは至難の業である。やはり、「経営主体が不明確なことが不利に働くのか」と、創業時の資本政策の甘さを悔やんでも後の祭りである。
五里霧中状態でさまよいながら、ある方の紹介で某中堅VCの担当部長との邂逅を得た。その方は、今までのVC担当者とはまったく違った視点で私に迫ってきた。
まず、彼はESCOというビジネスモデルを徹底的に理解しようとされた。そして、しつこいくらいに事業内容について、突っ込んだ質問を浴びせてきた。
内心では「いろいろとうるさい人だな。どうせ無理だろうから、時間が惜しいな」と思いながらも、彼のあまりの熱心さに、こちらもついつい熱を入れて事業の意義や内容、また将来の夢とビジョンを説明した。
通常のVC担当者は、事業の黒字化がいつになるかというような収益上の問題が最大の関心事である。しかし、彼にとっては、もちろん収支は気にはするものの、まずは事業自体が社会に必要なものかどうか、その次にそれをやろうとしている社長の覚悟と人物がいかほどのものであるか、という二点が出資を決めるポイントだそうである。このことは、増資を決めていただいた後、彼の口から聞いたことである。
最終的に、彼の熱意でVC社内審査を押し通していただき、5千万円近い出資を得ることができた。こうして死の谷から、かろうじて這い出すことができたのである。今でも、この出会いには感謝している。
また、後日談ではあるが、この部長には、増資決定のしばらく後から上場が決まるまでの4年ほどの間、FESCOの社外取締役をお願いすることになったのである。
彼もまた「FESCOファン」の一人となってくれたのである。