6月に入り、私の一番嫌いな梅雨のシーズンがやってくる。そして、今月から、また一つ齢を重ねることにもなる。それも6月が嫌いな理由かもしれない。
ところで最近、東京都の地球温暖化対策の中で、大規模事業所向けのものがあるが、そのシミュレーションを試みた。
大規模事業所の範囲は、年間のエネルギー使用量が原油換算1500kL以上であるが、都内には1300か所程度あるそうだ。
そのような事業所へのCO2削減義務率は、2010から2014年度の5年間(第1計画期間)で原則、基準年の8%減。2015から2019年度までの5年間を第2計画期間と呼び、暫定的に17%程度と示されている。そして、その削減量はあくまで総量規制である。省エネ法の原単位ではないことが第一のミソ。
また基準年の決め方は、2002から2007年度までのいずれか連続する3カ年度の平均となっており、もちろん一番多い値を採用することとなる。
「5年間で基準年度の総排出量の8%減」
実はこの言葉には大きな落とし穴があることが分かった。総量規制であることから、基準年の総排出量の8%、その5倍の値が、この事業所が5年間で出すことのできるCO2の総量ということになる。
以上のような言葉だけの説明では頭がこんがらがるのではないか。
落とし穴は、こういうことである。
たとえば、5年先のことだと思って今何もせず、5年後にやればいいとすると、その場合2014年度では年間基準総量の何%削減義務となるか?
これに即座に答えられた人は、落とし穴の意味が分かっている。
答えは、なんと「40%」削減。
年間の総排出量を40%減することが果たして可能か?現状の事業を半分ぐらい中止でもしない限り、まず不可能であろう。
つまり、都の規制のメッセージを正しく理解すれば、「早く着手した人が楽をする」ということなのだ。
仮に、1年目の2010年に8%減が達成できたとしよう。そうすれば、その状態が維持される限り、その後の4年間は何もしなくてもよい。もちろん、削減状態を維持する努力は必要だが。
同じ1年の削減努力でも、時期によって5倍の差が出るのであり、もし設備改修や更新というような投資を前提とすれば、その額にも5倍以上の差が出るのである。
この落とし穴に気付いている都内事業者、特に経営者が今どの程度いるだろうか?
なお、2010年に効果が出るということは、2009年度中にアクションをするということは言うまでもない。効果を期待する年と実行年とは、タイムラグがある。
温暖化対策に関しては、「様子見」「横並び」「先送り」は厳禁なのである。