動機論(5):会社の理念と個人の思い
会社の創業理念や企業理念と創業者の思いとは、一緒であるべきだろうか。
会社の理念は、対外的かつ公式なものであり、会社の成長に伴って、多くの同志を求めるための「旗印」になるものである。
その理念には、創業者の強い思いが込められているのはもちろんであるが、果たして創業者の思いとは、その理念に反映されたものだけであろうか。
私は、当然のこととして、創業者には創業者の、起業家には起業家それぞれ個人の思いと企みがあってしかるべきだと思う。
どんな起業家でも、一人の人間にすぎない。聖人でも神でもなく、弱い人間である。
いろいろな人に言えないような思いがあって当然であろう。時に、それは「恨み」や「怨念」にも似た醜い感情かもしれない。
ただし、そうした必ずしも美しくなく、私欲的な思いをいかに胸の奥にしまい込めるか。それらを会社創業のための苦労を乗り切るエネルギーとして、自らを奮い立たせる精神的な活力としては利用するものの、表に出さないでいられるか。
その心の葛藤を超克することこそが、起業家の創業を志す本質であり、起業家の魅力につながっていくのではないだろうか。
私は、まったく私欲のない起業家はいないと思うが、むしろ起業家こそ、私欲の塊なのではないかとも思う。ただ、その溢れんばかりの私欲をいかに抑制できるか。その私心の抑制力という人間力の度合いで、起業家の真の価値が決まってくるのであろう。
今回で「実体験に基づいた起業論」の第一項としての「動機論」を終わり、次回からは、企業理念について語る「理念論」に移っていきたい。
(次回に続く)
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