機関銃のようにまくしたて、仕舞には涙攻めになった。母がこんなに多弁で雄弁で、感情豊であ
ったことを、高志は初めて知った。
最後は「退学なんて絶対に許さない」と叫んで、自室にこもってしまった。
父親の方はあっさりと片付いた。
さんざん妻の怒りと嘆きの愁嘆場を見せられた後だったからかも知れない。
三日後、父は呻りながら締めくくった。
「お前の好きにしろ。大学には休学手続きをしておけ。一年間だけ我がままを認める。
どこへでも好きな所へ行くがいい。
ただし一年過ぎても戻らなかったら、もうお前に帰る場所はないと思え」
ギリギリの譲歩だと言った。
父も母も兄も一縷の望みを繋いでおきたいのだ。さすがにその気持ちの辛さや悲しさは分かった。
充分過ぎるほどに分かったしこたえてもいたが、それでも留ることはできなかった。
心の片隅では、くびきを解かれた喜びをはっきりと意識していた。
素早く休学手続きを済ませ、当座の生活費を貰って上野の駅に向かった。
さあ、旅立ちだ。
できるだけ遠くへ、ギリッと寒い国へ。
知らぬ土地で何の伝(つて)もなく、仕事にありつこうと思えば、やはり都会になる。
手順としては職安、次いで新聞の求人欄、三番目は繁華街や工場の集まった所の貼り紙といった
ところか。
ったことを、高志は初めて知った。
最後は「退学なんて絶対に許さない」と叫んで、自室にこもってしまった。
父親の方はあっさりと片付いた。
さんざん妻の怒りと嘆きの愁嘆場を見せられた後だったからかも知れない。
三日後、父は呻りながら締めくくった。
「お前の好きにしろ。大学には休学手続きをしておけ。一年間だけ我がままを認める。
どこへでも好きな所へ行くがいい。
ただし一年過ぎても戻らなかったら、もうお前に帰る場所はないと思え」
ギリギリの譲歩だと言った。
父も母も兄も一縷の望みを繋いでおきたいのだ。さすがにその気持ちの辛さや悲しさは分かった。
充分過ぎるほどに分かったしこたえてもいたが、それでも留ることはできなかった。
心の片隅では、くびきを解かれた喜びをはっきりと意識していた。
素早く休学手続きを済ませ、当座の生活費を貰って上野の駅に向かった。
さあ、旅立ちだ。
できるだけ遠くへ、ギリッと寒い国へ。
知らぬ土地で何の伝(つて)もなく、仕事にありつこうと思えば、やはり都会になる。
手順としては職安、次いで新聞の求人欄、三番目は繁華街や工場の集まった所の貼り紙といった
ところか。