いつの間にか二月
吉野 弘さんの詩より
二月の小舟
冬を運び出すにしては
小さすぎる舟です。
春を運びこむにしても
小さすぎる舟です。
ですから、時間が掛かるでしょう
冬が春になるまでは。
川の胸乳がふくらむまでは
まだまだ、時間が掛かるでしょう。
佳い詩ですねぇー
もう一遍
雪の日に
雪がはげしく ふりつづける
雪の白さを こらえながら
・
欺きやすい 雪の白さ
誰もが信じる 雪の白さ
信じられている雪は せつない
・
どこに 純白な心など あろう
どこに 汚れぬ雪など あろう
・
雪がはげしく ふりつづける
うわべの白さで 輝きながら
うわべの白さを こらえながら
・
雪は 汚れぬものとして
いつまでも白いものとして
空の高みに生まれたのだ
その悲しみを どうふらそう
・
雪はひとたび ふりはじめると
あとからあとから ふりつづく
雪の汚れを かくすため
・
純白を 花びらのように かさねていって
あとからあとから かさねていって
雪の汚れを かくすのだ
・
雪がはげしく ふりつづける
雪はおのれを どうしたら
欺かないで生きられるだろう
それが もはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪ははげしく ふりつづける
・
雪の上に 雪が
その上から 雪が
たとえようのない 重さで
音もなく かさなってゆく
かさねられてゆく
かさなってゆく かさねられてゆく
今日も外は吹雪
雪国の二月はじっと我慢の日々
だから
我慢強いのでございます。
冬はスズメもシジュウカラも一緒に群を作って
小さいもの同士助け合っている。