資料によると彼女は今年郷里の高校を卒業、今はこの街の一人暮らしで、簿記の専門学校に
通っているアルバイターだ。
家は日用雑貨の卸問屋をやっていて、親の希望で経理の仕事を期待されている。
初デイトの相手の情報としては充分過ぎるくらいだ。
そのせいか当日は約束の場所で、雪の降る大通り公園を背景に近付く彼女を、ガラス越しに余裕
を持って眺めていた。
固めのボックスに丁寧に裏返しに畳んだコートを置いた後もまだ彼女は、雪による濡れがないか
気にした。
ようやく落ち着いた今日の美奈子は薄化粧をしていた。仕事中はいつも束ねて上げている髪を解
いているせいか、情報を得てはいるのだが、やはり年上に見える。
化粧のせいなのだろう、細面がほっこりと膨らみ、目付にも丸味がでている。
「親の仕事を手伝うとはいえ、美奈ちゃんと経理の仕事はどうも結び付かない。店員よりは合う
かも知れないが、でもやはりちょっと驚きだ」
「私には無理だと思っているのでしょう」
「能力的にどうかと言っているのではなく、雰囲気がね。大分ちぐはぐなんだ、僕の印象として
は」
「どんな仕事ならピッタリだと言うの」
「分からないけれど、多分経理という仕事が僕にとっては、手に負えない歯の立たない代物に思
えるからだろう」
「簿記や会計学を勉強している女の子なんて、近付きたくもないと思っていたりして」
「そうじゃないけれど、とにかく恐れ入ってるのかも知れない」
通っているアルバイターだ。
家は日用雑貨の卸問屋をやっていて、親の希望で経理の仕事を期待されている。
初デイトの相手の情報としては充分過ぎるくらいだ。
そのせいか当日は約束の場所で、雪の降る大通り公園を背景に近付く彼女を、ガラス越しに余裕
を持って眺めていた。
固めのボックスに丁寧に裏返しに畳んだコートを置いた後もまだ彼女は、雪による濡れがないか
気にした。
ようやく落ち着いた今日の美奈子は薄化粧をしていた。仕事中はいつも束ねて上げている髪を解
いているせいか、情報を得てはいるのだが、やはり年上に見える。
化粧のせいなのだろう、細面がほっこりと膨らみ、目付にも丸味がでている。
「親の仕事を手伝うとはいえ、美奈ちゃんと経理の仕事はどうも結び付かない。店員よりは合う
かも知れないが、でもやはりちょっと驚きだ」
「私には無理だと思っているのでしょう」
「能力的にどうかと言っているのではなく、雰囲気がね。大分ちぐはぐなんだ、僕の印象として
は」
「どんな仕事ならピッタリだと言うの」
「分からないけれど、多分経理という仕事が僕にとっては、手に負えない歯の立たない代物に思
えるからだろう」
「簿記や会計学を勉強している女の子なんて、近付きたくもないと思っていたりして」
「そうじゃないけれど、とにかく恐れ入ってるのかも知れない」