伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ119

2019-06-02 17:18:10 | ジャコシカ・・・小説
 二人は未だに三角波の残る海を渡り、漁港に入った。顔見知りが明るく声をかけてくる。

 こちらも笑い顔で応え、気分が弾んでくる。


 溜まった買い物を済ませた後、赤間家に顔を出す。みやげの干物と冷凍の鱈を渡し、誘われた夕

食を、海が心配だからと断る。

 トキさんと千恵が慌てて、手作りの大きなふかしパンを手渡してくれる。

 「汽車で行けるようになったら、山菜採りに連れていってね」

 千恵は暫く振りの二人に、名残り惜しそうに言った。


 漁協に用事があるからと言って、猛さんが馬橇で送ってくれる。

 漁協の休憩所前で降りる時、鉄さんがふらりとよろめき、次いで前のめりに倒れた。

 駆け寄った高志の問いかけの反応に、呂律が回らない。

 二人がかりで再び馬橇に乗せて、病院に駆け込んだら脳血栓だった。

 町の病院から直ぐに、駅で三つ先の総合病院に救急車で移された。
 
 幸い処置が早く症状も軽かったので、点滴と薬だけで一週間の入院だけで退院することができた。

 高志はその間病室のベット脇の、折り畳みの簡易ベットで過ごした。

 入江に帰った後、一週間ほど鉄さんはおとなしくしていたが、その後は海に出ると言って、高志

を困らせた。

 せめて4月に入るまでは我慢してくれと、説得するのに手を焼いていたが、漁船を仕立てて見舞い

に来てくれた猛さんと、二人の娘達にも説得されて、やっと収まった。

 若い娘が二人、ストーブの前に座ると、洞窟は俄(にわか)に春が訪れたように、明るく華やかになった。

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