伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ128

2019-10-20 15:11:34 | ジャコシカ・・・小説

 皆がその恐怖を抱えて、相手の隙を狙っている。

 

 志乃はそうやって優美を追い落とした。

 

 「高輪の店に強力な梃入れが必要になった。優美さんを貸してくれ。あの店を助て欲しい」

 

 桐山社長からの言葉の本当の意味を、優美さんは正確に理解しただろうか。やはり、社長と志乃

 

の関係を自分は伝えるべきだったろうか。

 

 いや、多分その必要はなかったと思う。

 

 彼女が気付かないはずはない。

 

 それに志乃は一旦攻撃に出たら、やんわりとやる正確ではない。

 

 恐らくはあからさまに、一気に潰しにかかったのだ。

 

 だから優美は気付いたときは、手遅れだったに違いない。係争に持ちこんだ店の営業権もデザイ

 

ンやブランドの権利も、彼女は失うかも知れない。

 

かと言って潰れかけた高輪の店と心中など飲めるはずもない。

 

優美さんが長びく法廷闘争に持ちこんだことで、彼女に組みする形になった自分も職場を失い、

 

この先の見通しもないままに、あっと言う間に振り出しに戻されてしまった。

 

 戦後間もないひ弱なこの業界で、成功者の桐山に敵対して生きていくのは容易ではない。

 

 

 それもこれも志乃という、たった一人の自分よりも若い女の仕掛けた争いだと思うと、怒りより

 

も力が萎える。

 

 私がそうなら優美さんの気持ちは、いかばかりかと思うと暗澹たる思いだ。

 

 しかし、元を糺せば男と女の関係で始まったことに、問題の根っこはあるのだ。

 

 そのことに思い至れば、何ということもない、余りにありふれた争いなのだ。

 

 あやは所詮は志乃の敵ではないことを、認めざるを得なかった。

コメント
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