取り替えられた封筒
蒸し暑かった去年の夏の日のことです。
その日は徳寿宮で友達と約束がありました。時間にあわせて家を出たのですが、思ったよりも早く到着しました。
それで、ファーストフード店に入って簡単に小腹を満たしました。
少し後で友達に会い、真夜中に家に帰りましたが、ふと何か手元が寂しいことに気がつきました。手に持っていたはずの書類の封筒がないのです。
「どこでなくしてしまったのだろう。まったく。どこに置いて来たんだ。」
重要な書類なのであせる気持ちで、来た道を辿ってみました。
友達と一緒に飲んだ飲み屋はもちろん、地下鉄の紛失センターにも行ってみましたが無駄足でした。
最後に私の考えがたどり着いたところは、ファーストフード店。そしていざ走って行った時には、すでに閉まった後でした。私は店の門にメモを挟んで家に帰りました。
次の日、あせる気持ちで連絡を待っていた私に、ファーストフード店の女性店員から電話が来ました。
電話を受けるなり私はその店に走って行きました。
店員は、私に何かを差し出しました。ですがそれは私のなくした封筒ではありませんでした。
「あの、私のではないようですが。」
「これだと思いますよ。確認してください。」
ためらいながら内容物を取り出して見ると店員の言う通りでした。
「このように見つけてくださって、ありがとうございます。ですがなぜ封筒が違っているのでしょうか。」
すると女性店員は笑いながら言いました。
「実は、昨日の夜、ゴミ箱を片付けていて見つけたのです。食べ物の汁がついて汚れていたので新しい封筒に入れました。」
私は女性店員の小さな親切に頭が下がりました。
物を見つけてくれたこともありがたいのに、しなくてもいいのにそうしてくれた彼女の心根がひどくありがたかったということです。