退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-03-23 06:52:56 | 韓で遊ぶ


ゴム手袋

ある暇な週末でした。
妻がうるさく言うのに勝てず大型割引店に買い物に行くと、いつも私はある物に視線が留まります。それは値段の高い家電製品でも自動車用品でもない赤いゴム手袋です。
「ちょっと、お前これ見て、、、」
「また、ゴム手袋。もういい加減にしてよ。」
妻は、ゴム手袋を見ただけでも首を横に振りますが、私はできることならば陳列台の山のようになっているゴム手袋を全部買いたいと思う気持ちを抑えることができません。
幼い頃、水にさっと薄氷がはる初冬から母の手は赤黒く変わり始めました。そして冬が厳しくなるにつれて亀の甲羅のようにぱくりと割れるのでした。
その頃、我が家は八百屋をやっていたのですが、冬の商売で一番売れるのはもやしと豆腐でした。
もやしと豆腐を凍らないように保管するには、モヤシは古い服で何回か巻けばいいのですが、豆腐は大きな桶に水をいっぱいに入れて、その中にいれておかなければなりませんでした。そうすれば上がカチンと凍っても下は凍らず、豆腐を長く置いて売ることができるからです。母は一日に数十回、氷を割って素手で豆腐を取り出さなければなりませんでした。
「う、、、冷たい、冷た。」
ぱっくり割れた傷の中に氷水がしみて痛かった母。その時ゴム手袋があったら、母の手は妻の手のようにきれいだったろうに、、、。
30年過ぎた今も、ゴム手袋を見ると胸が痛くて、できの悪い息子は妻に隠れて赤いゴム手袋をひとつショッピングカートに入れてしまいます。
「あなたったら、、また、、。」
この頃になると妻もこれ以上は言ってもしょうがない、というように言います。
「あなた、こうしていたらゴム手袋屋ができるわ。」
ゴム手袋は、私には貧しい頃の母の愛なのです。
コメント
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