退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-03-15 06:05:44 | 韓で遊ぶ


見えない贈り物

幼い頃、うちは貧乏でした。
詩を書く父は、お金には無頓着で世の中の物情には疎い上、兄弟まで多い生活が苦しくないはずがありません。だから、私は欲しいものがあっても、どうしても買ってくれという言葉を口にすることができず、いつも心の中で言うだけでした。
そんなある日、宿題をしていると、窓の外で友達が私を呼ぶ声が聞こえました。
「トンギュ、遊ぼうよ。」
私はそっと窓を開けて言いました。
「お、、俺、今宿題をしなければならないんだ、、、お前一人で遊べよ、ごめん。」
私の言葉も終わらないうちに友達は身体を1回りさせて言いました。その子のいいたい事は他にあったのです。
「はは、俺、カバン買った。これ見ろよ。ははは、ははは。」
友達は新しく買ったカバンを自慢したかったのでした。
「いいなぁ、、、じゃあね。」
私は友達に手を振りました。
「ひひ、お前もカバンを買ってくれと言えば。じゃあね。バイバイ。」
友達はうれしそうに手を振って家に帰りました。
私はとてもしゃくに障りました。なんでもない振りをしましたが、新しいカバンがとてもうらやましく、私の古い本入れがみすぼらしく見えてしょうがありませんでした。
言おうか言うまいかためらいましたが、母親に用心深く言いました。
「かあさん、、俺にも、、カバン買ってくれたらダメかい。」
「カバン、そうね、、クリスマスの時に買ってあげるわ。」
母親はそう言いました。春から秋まで、何かを買ってくれと言うと母親はいつもクリスマスの時、買ってあげると約束して伸ばすのですが、私たち兄弟はいつもその約束を固く信じて待っていました。
両親は子供たちとの約束をただの一度も破ったことがなかったからです。その年のクリスマスにも、私は約束通り新しいカバンをプレゼントとして受け取りました。
そうやって歳月が流れ、私が中学生になった時のことです。クリスマスが近づいてきたある日、父親は部屋の中に5人兄弟をぐるりと座らせ欲しいプレゼントを言うように言いました。
いつも、はじめに一番下の弟が欲しいプレゼントを言い、父親がそれをノートに書きました。
「うぅん、僕は棒つきのキャンディ。」
末っ子は棒つきのキャンディ、4番目はビー玉、3番目はセーターでした。さて、2番目の妹の番が来ました。妹は自分の番が来るなり大きな声で言いました。
「ウールのコート買ってください。」
瞬間、母親は驚き口を閉じることができず、父親は顔をこわばらせました。
私は鉛筆を持っている父親の手が震えているのを見ました。その瞬間私は悩みました。
革靴を買ってくれと言うつもりだった私は、自分でも知らないうちに心を変えてしまいました。
「そうか、トンギュ、お前は。」
「俺、、あの、、俺は、、毛糸の手袋。」
その日の晩、私は部屋に閉じこもって布団を頭からかぶって内から押し上げてくる悲しみを押さえてすすり泣いていました。
ところが誰かが部屋の戸を開けて近づいてくる気配を感じました。
父親でした。父は布団を探って私の頭をなでながら喉を詰まらせて言いました。
「こいつ、大人になって、、大人に、、なって、、、」
その年のクリスマス、私は毛糸の手袋をプレゼントとして受け取りました。手袋の中に母親が書いた手紙が入っていました。
「父さん、母さんを愛してくれるトンギュ、神様が100倍1000倍の祝福をくれるから。」
私はその手袋をはめてみて気分が良くなりました。
たとえ目には見えないけれど、その手紙の中の母の愛と「こいつ、大人になって、大人になって、、、」と言っていた父の言葉が、私の生涯最高のプレゼントでした。
コメント
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