退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-03-03 05:40:42 | 韓で遊ぶ


弁当の中の髪の毛

皆が貧しく生きていた頃、弁当一つを持って通うことも苦しい学生が多かった頃のことでした。隣の席の友達がそうでした。おかずはいつも黒豆の煮付け一つだけ。ソーセージとお日様のような玉子焼きがのっている私の弁当とは本当に違っていました。その上、友達の弁当には、よく髪の毛が入っていて、それを気にしないで除けた後ご飯を食べていました。そんな不潔なことが毎日繰り返されました。
「お母さんがどれだけ汚れていたら毎日髪の毛が入るのかな。」
友達の自尊心を思って表には出さなかったけれど、不潔で不快でその友達に対するイメージが曇って行きました。
そんなある日、放課後にその友達が私を呼び止めました。
「用がなかったら家に行って遊ぼう。」
気の向かないことでしたが、同じ組になった後、初めて家に行こうという友達の提案を断ることができませんでした。
友達について行った所は、ソウルでも一番急な坂の町内でした。古い家の門を開けて入って行きながら、友達は大きな声で叫びました。
「母さん、友達が来たよ。」
友達のウキウキした声に、きしむ部屋の戸を開けて年老いた母親が姿を見せました。
「あれまあ、友達が来たって。どれどれ。」
ですが部屋から姿を見せた母親は柱につかまってきょろきょろするだけ、目の見えない人でした。
私は瞬間、鼻がうずうずして言葉が出ませんでした。
彼の弁当のおかずは今日も黒豆の煮付けです。ですが目の見えない母親が手探りで作ってくれた弁当。それはご飯ではなく愛だったのでした。その中に混じった髪の毛さえもです。
コメント
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