退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-03-17 05:57:28 | 韓で遊ぶ




ポーランドへ行く飛行機でのことでした。
私は、一人の老婦人と隣り合わせに座りました。
一緒にあれやこれやと話をし、最後に婦人は古い手帳から写真を一枚取りだし見せてくれました。
「私の娘です。」
4,5歳くらいでしょうか、色あせた写真の子供を見る婦人の目に涙が浮かびました。
写真に秘められた事情はこうでした。ナチのユダヤ人虐殺が極に達した戦争中のある日、婦人が外に出ていた時、偶然に一人の女の子がヨチヨチ歩いていくのを見かけました。
「子供はその前を行くお母さんを追いかけていたのですよ。」
その時、ドイツの兵士が子供の母親を捕まえました。子供の母親がユダヤ人だったのでした。
「ママ、、、」
驚いて声をあげる子供をちらりと見て軍人が子供の母親に訊きました。
「お前の娘か。」
その瞬間、子供の母親が夫人をまっすぐに見て言いました。
「違います。その子はあの人の娘です。」
事態を理解した婦人は、その言葉が終わるや否や子供をさっと抱き上げ、軍人は何の疑いもなく子供の母親を逮捕し引っ張って行きました。
「ママ、ママ、ママ。」
「よしよし、いい子だ、よしよし。」
子供が大きな声で泣きましたが、ひょっとして疑いを持たれて子供まで連れて行かれる事を恐れた本当の母親は、ただの一度も後ろを振り返りませんでした。ただの一度も。
「子供の母親がその後どうなったのか、、、。その子がそんなふうにして、いただいた私の娘です。」
写真を持った婦人の手は小さく震えていました。
老婦人と私が目的地に到着した時、空港にはいつの間にか大きくなり大人になった写真の娘が母親を待っていました。
「母さん、ここよ。母さん、ここ、、、。」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする