天使のタオル
ある放送局であったことです。
多くの人が出入りする放送局のトイレのタオルかけに、いつもきれいな新しいタオルがかけられていました。
人々は、掃除担当者が本当にまめな人なのだと思いました。ですが古いタオルは掃除担当者が出勤する前とか帰った後、誰もいない時にも水気のなくなった新しいタオルに替えられていたのでした。
一体どんな職員がこんなにも美しい天使の手を持っているのだろうか。誰よりも気になったのは掃除担当者たちでした。
「今日も新しいタオルなのか。」
掃除をするおじさんが言いました。
「そうだ、、一体誰だろう。」
天使のタオルは建物全体内の話題になり、何人かの人たちは、自らも天使になり汚れたタオルを人知れずに洗っておく善行を行ったりもしました。
そんなある日の明け方、本当の元祖天使が明らかになりました。おばさんがトイレに入って行くと一人の男性が新しいタオルをかけていたのでした。
その人は慌てて言いました。
「お。これは、、、」
おばさんがすぐさま聞きました。
「おお、、、おじさんが、、天使なの。そうでしょ。見つけたわ、見つけた。」
その人は頭を掻きながら笑っていました。
「これは尻尾を捕まえられたか。」
その放送局の音響効果の担当である彼は、ある日急に有名になったテレビタレントの父親でした。
大衆のスターになった息子の、その光を放つ成功をありがたく思った彼が、人知れずその恩に報いる方法を考えた末、目の前の小さなことから実践しようとしたことでした。自慢するはどころか、自分の行動がばれるのを心配したおじさんは慌てて言いました。
「おばさん、どうか、内緒ですよ。シー。」
おばさんも一緒に「シー」と言って微笑みました。
タオル1枚。大したことではないがそれは成功した息子の父親が、世の中に示した本当の感謝の気持ちでした。