退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-03-02 05:32:19 | 韓で遊ぶ


黒い風船

アメリカのデトロイトの小さな町で一人の風船売りが風船を売っていました。
お得意様の客は当然、町の中の子供たちでした。ですが、子供たちは遊ぶことに夢中で風船のようなものは眼中にも無いように見えました。
商売の腕がとてもいい風船売りは、子供たちの関心を買うために赤い風船を空に放しました。
「お。風船だ。」
「捕まえろ。捕まえろ。」
子供たちがその風船を捕まえようと、どっと押し寄せてきました。
「お、、、、お、、、、」
空に飛んでいった風船は、子供たちの視線を一気に集中させる効果を発揮しました。
風船をとり逃した子供たちが押し寄せて来て取り囲み、面白くなった風船売りは、青い風船、黄色い風船、白い風船を一つずつ飛ばしてやりました。順に飛んでいく風船は、広い空に高く高くあがって行きました。
「わ、神様の国まで行ったみたいだ。」
そして風船は、黒い点に変わって消えていきました。
風船は飛ぶように売れました。
「おじさん、風船ちょうだい。」
「私も。」
「私も。」
近くにいた子供たちが皆一つずつ買っていった後、さっきからじっとその光景を眺めていた黒人の子供が風船売りに近づいてきました。
「あの、、おじさん、ひとつ気になることがあるんだけど。」
「そうか。何だい。」
黒人の子はいろいろな風船の横にある黒い風船を指差して言いました。
「おじさんが、もしこの黒い風船を飛ばしたら、これも他の風船と同じ様に高く飛ぶことができるの。」
風船売りはじっくり考えた後、言葉もなく肯きました。そしてしっかり結んでいた黒い風船を全部、解き放しました。
解かれた黒い色の風船がいっせいに空に飛んで行き始めました。
少年は、黒い風船が他の風船と同じ様に飛んで行って点になって消えるまで目を離すことができませんでした。
風船売りが少年の肩を抱いて言いました。
「風船が空へ飛ぶのは色ではなく、その中に入っている物せいなんだ。」
「あ、はい、、、へへ」
瞬間、子供の表情が明るくなりました。風船売りの知恵が子供の不安まで皆一緒に飛ばしたのでした。
コメント
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