退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界

2015-04-14 06:52:56 | 韓で遊ぶ


私の弟

授業が終わった頃でした。
急に空が暗くなって雲から音が聞こえたと思ったらすぐに雨が降り始めました。
私は門の前に立って打ち降る雨をぼんやり見ていました。以前は母が傘を持って迎えに来てくれたでしょうが、1年前、突然の事故で父母が一緒に亡くなった後は、私には傘を持ってきてくれる人は誰もいませんでした。
その時、友達が近づいてきて傘を差し出しました。
「傘がないのね。一緒に行こう。」
私たちはバスの停留所まで仲良く傘をさして歩いて行きました。
「ありがとう、じゃあね。」
友達のおかげでバスに乗るところまでは問題なかったのですが、バスから降りた後が心配でした。ですが、バスの停留所には弟が傘を持って来ていました。
授業が早く終わった弟は、びしょびしょに雨に濡れて帰って来て、ひとつだけしかない傘を持って私を迎えに来ていたのでした。
肩を並べて家に向かった私たちは小川の前で立ち止まりました。雨のせいで水が増えて飛び石が隠れてしまったのでした。制服を着ている上に、ひとつしかない靴が気にかかり困っている私の前に、弟がすぐに背中を向けました。
「さあ、姉さん。」
「お、おお、、、」
私はとても驚いて、ただ弟の背中を見て立っていました。
「姉さん、早く乗って。」
「何、お前が、私を。」
「姉さん、靴が濡れたらダメじゃない。僕が姉さんぐらい背負えるよ。」
あまりにも弟が自信ありげに言い張るので、私はうっかり弟の背中に乗りました。時々立ち止まっては笑って見せて、また行っては笑ってみせながら、自分よりも体格のいい姉を背負って小川を渡った弟。すまないと思いながらも、いつの間にか大きくなったようで頼もしい気持ちでした。
その日の晩、弟はかなり早く寝てしまいました。
弟は、疲れていたのか蒲団はみな蹴飛ばし、靴下も脱がないままぐっすり眠ていました。その姿がとても不憫でした。
「この子ったら、、いくら疲れたからって、、、まったく、力自慢をした割には、、、」
靴下を脱がせてあげようとした瞬間、私はその場に凍りついてしまいました。皮膚が裂けて血のアザまである傷だらけの足、考えてみると、弟は今日サンダルを履いていました。小川を渡る時、立ち止まって笑って見せたのは、我慢して痛みを隠すために、そうしていたのでした。自分の足に血のアザができるかもしれないのに、姉さんの靴を心配してくれる優しい弟。私は寝ている弟の傷に薬を塗ってやりながら、どんなことがあっても弟の面倒は、お前が見てやってくれという母の最期の言葉が、浮かんできて胸が押し付けられました。
コメント
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