4000ウォンの背広
末っ子が何日か前からしきりにカレンダーを見ていました。
「12月21日。」
子供の指の行くところはいつも同じ、パパの誕生日です。一日に何回か、かわいい手で日数を数えては、また数えるのでした。
「家の、チビちゃんはパパに何を買ってあげるのかしら。」
ママがにっこり笑って訊きました。10個、20個といいながら日数を数える姿がかわいくて、私たちがわざと訊く度に、末っ子は答える代わりにただ笑うだけでした。7歳の末っ子が果たしてどんなプレゼントを準備しているのか気になりました。
カレンダーの×印が増えていって末っ子の待っている日が近づいてきました。やがて、家族みんなが父の周りに集まった誕生日の夕方でした。父は誕生日のケーキのろうそくの火を吹き消しました。
「パパ、誕生日おめでとう。」
「おめでとう。プレゼントよ。」
長女と次女が差し出したプレゼントを受け取ったパパは、その中に入っているカードを取り出して、一つ一つ大きな声で読みました。
私の手紙をはじめとして、二番目、三番目の手紙、、そして末っ子の番になりました。末っ子が差し出した白い封筒の中からは、白い硬貨、黄色い硬貨と一緒に手紙が一枚出てきました。
「背広4000ウォンなのに3800ウォンしか貯まりまちぇん。パパごめんなちゃい。」
父は末っ子のまねをして子供のような声で手紙を読みました。訛り、誤字、間違った尊敬語が混じった手紙。吹き出る笑いをこらえた私たちは、末っ子の子持ちを知ると皆、静かになりました。
何ヶ月か前のことです。
「パパ、行ってらっしゃい。」
家族がパパを見送っった後、ママが寂しい顔で独り言を言いました。
「背広を一着買わないとならないのに、、、。」
その日、末っ子は家の前のクリーニング店のガラス戸に張ってある「背広4000ウォン」という紙を見てパパを思い浮かべました。
1着4000ウォン。町内のおばさんがクリーニング代4000ウォンを払って背広を持って行くと、それを見た末っ子は、背広1着の値段を間違えてそう思ったのです。その後からお菓子ひとつ減らして、飴ひとつ惜しんで貯金箱に10ウォン、50ウォン、100ウォン硬貨を集めた末っ子。
「いや、家のチビちゃんのおかげで、パパが世界で一番金持ちになった気分だ。」
父は手の上の硬貨を眺めながら明るく笑いました。
末っ子は、いまだに背広の値段の4000ウォンに満たなかった事が悔しくて涙を浮かべていて、お金では買うことのできない貴重なプレゼントをもらった父は、我が家のかわいくて健気な末っ子を力いっぱい抱しめました。