退屈しないように シニアの暮らし

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さて何をしようか

幸福な世界 2

2015-04-03 07:39:20 | 韓で遊ぶ


練炭の灰泥棒

私が高校に通っている時のことです。
私はおばあさんと二人で学校の近くの借家に住んでいました。大家のおじさんが練炭を配達する仕事をしていたので、練炭を入れるのには苦労しませんでしたが、問題は使った後の練炭の灰でした。
家が狭いので積んでおく所もなく、灰を捨てようとすると毎日5分もかけて坂を下りていかなければならないので、正直言って、寒い日には面倒でどこでも捨ててしまいたいと思うこともしばしばありました。
その日もひどく寒い日でした。凍えた手にふうふう息を吹きかけながら練炭の灰を捨てに行く時でした。
その時、一軒家から腰の曲がったおばあさんが出てきて、練炭の灰の2つ入った箱を持って灰捨て場まで下りて行くのでした。
曲がった腰でゆっくりと何歩か行っては座って休んで、また行っては休んで、、、。危なくてその歩みでは20分はかかるように思われました。
「あぁ、、腰が、、あぁ、、」
腰をたたきながら、軽く息を吐きながら、そうやっておばあさんは坂を下りて行きました。
次の日、夜間自習を終えて家に帰る私は、そのおばあさんの家の台所の入り口の横に置いてある練炭の灰を見て足を止めました。
道端にしゃがみ込んで曲がった腰を叩くおばあさんの姿が浮かんだのです。私は練炭の灰を2つこっそり持って、道を行ったところにあるごみ置き場に出してしまいました。
そうして10日余り経ったでしょうか。うちのおばあさんが町内に不思議なことが起こったと話しました。
「本当に不思議なこともあるものだ。あそこの下に一人で住んでいる年寄りがいるのだけど、誰かがその家の練炭の灰をこっそり捨ててくれるんだと。」
私はその年の冬が終わるまで誰にも知られずに練炭の灰泥棒を続けて、それは10年余り過ぎた今も、私の心を暖かくしてくれる楽しい秘密として残っています。
コメント
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