今年も残すところあと20日余り。今年はあんまし劇場に行か(け)なかったような気がするのですが、トークショーがあるので敢えてその回目指して見に行ったってのがいくつかありました。
トークショーは舞台挨拶と違って、出演者がお出ましになるわけじゃない場合が多いので、それほど混まないし、その作品に関連する背景などを知ることが出来るので、割と好きなんですよねぇ。で、印象深かったトークショーレポートを3本ほど。
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◆翻訳家・柴田元幸氏によるP・オースターについてのトーク&朗読 ~「スモーク」(1995年)上映後~@新文芸坐 '24.Jun.29
作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv10827/
「スモーク」は大昔に一度見ただけで、ハーヴェイ・カイテルが三脚を使って写真を撮っているシーンが印象に残っているものの内容はあんまし(というかほとんど)覚えていなかった。
ちょうどこのちょっと前にオースターが亡くなってニュースになっていて、おそらくその兼ね合いでこのトークイベントも企画されたのかと思うが、私は柴田元幸氏の翻訳が好きで、柴田氏のトークを聴きたくて見に行ったのだった。……といっても、オースターは本作の原作である『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』を映画を見た後に読みかけただけなんだけど。
映画は、、、良かったけど、まあ、あんまし感想をあれこれ書きたくなるような感じではなかったな、やっぱり(だから書いてない)。
終映後の柴田氏のトークの内容は、主にオースターについて。柴田氏はオースターと個人的にも親しかったとのことで、本作のシナリオもオースターは手掛けているのだが、シナリオを書いたのは本作が初めてで、非常に楽しかったと言っていたとか。
例の、写真を撮るシーンについては、確か、アウグスト・サンダーというドイツの写真家の撮影した労働者の写真にインスパイアされて描いたものだということだった。このサンダーの写真は、ラシードの偽名を名乗ったトーマスが最初に読んでいた本の表紙なんだとか。
あと、ウィリアム・ハート演ずる作家ポール・ベンジャミンの部屋が妙にリアルだと思ったのだけど、あれは、オースターが拘って監督に進言したものだというような話もあった(違っていたらすみません。メモが殴り書きなもので、、、)。
やはりトークは聴いて良かった。特に、最後に原作の一部を朗読されたのだが、それがすごく沁みたのだった。
読みかけて放ってある原作を読んでみよう!と、帰宅途上では感動していたのに、いまだに果たせておらず。原作本を探してもいない、、、嗚呼。
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◆緑魔子氏による映画「盲獣」と増村保造監督についてのトーク ~「盲獣」(1969年)上映後~@国立映画アーカイブ '24.Sep.7
作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv22431/
ご存じ変態映画「盲獣」が、“ぴあフィルムフェスティバル2024”にて増村保造監督特集が組まれて上映されると知り、これは是非見ねば!と。この映画、好きなのだけど、スクリーンで見たことはなかったので。
しかも、よく見たら、主演の緑魔子のトークショーもあるという。もう行くしかない!! 映画友(彼女は本作をかつてスクリーンで見ているという)も行きたいというので、一緒に魔子様のご尊顔を拝しに馳せ参じた次第。
まあ、映画はあの凄まじい舞台装置がスクリーンいっぱいに広がり圧巻。今回、ウン十年ぶりに見たのだけど、船越英二ってすごいなぁ、、、とビックリ。千石規子も凄かったし、とにかく、この映画は主要登場人物が3人しかいないのだが、この3人が3人とも狂っていてスゴい。
で、終映後、魔子様のご登場。今年、80歳とのことだが、お美しい。
あの女体オブジェについて、スタジオに入ってセットを見た瞬間、「監督はナニ考えてるんだろう?」と思ったと。今にして思うと「監督はあの女体オブジェに押し潰されたかったんじゃないか?」とも言っていて笑ってしまった。すごく弾力のあるオブジェで、走りにくかったと。へぇー。
監督がシャイだとかという話も面白かったが、一番印象に残ったのは、魔子さんが、口調はおっとり柔らかに「この映画は男の目線で女を撮った男の映画だ」とぶった切っていたことだった。いやもう、、、ホントそれね。自身が演じたアキという女性について、「すごくかわいそう。私は監督みたいに頭も良くなくて普通の感性だから、SMとかフェチとか理解が出来なかった」みたいなことも言っていて、やはり女優が身体を張って演じることの大変さを垣間見た気がした。
このトークショーは対談形式で、聞き手が増村作品の大ファンだとかいう映画監督だったんだが、ハッキリ言って聞き手としては最悪だった。魔子さんが、本作のオファーを受けたときに「テレンス・スタンプが好きだったので『コレクター』みたいな作品だったらイイなと思って……」みたいな話をされたときも、どうもテレンス・スタンプを知らなかったみたいで受け答えがトンチンカンもいいとこ。魔子さんもちょっと??な感じだったし、聴いている方も白けてしまった。ああいうインタビューはかなりの技術を要するので、人選はもう少し考えた方が良い。ただ映画が好きだとか、同業者だとか、それで務まるもんじゃない。
トーク終了後は撮影タイムが設けられ、私も頑張って撮影したけど、、、うぅむ。
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◆フィリップ・グレーニング監督自身による作品解説 ~「兄弟はロベルトという名でバカ野郎」(2018年)上映後~@アテネ・フランセ文化センター '24.Oct.12
作品情報⇒http://www.athenee.net/culturalcenter/program/gu/groning.html
本作の監督による「大いなる沈黙へ」(2005年)が岩波ホールで公開されていた時に、ちょっと興味があったものの、あまりに長い(160分)し、ほぼセリフのない映像だけの作品だと聞いていたので、躊躇して結局見に行かずに終わったのだけど、その監督のオンライントークがあると知り、聴いてみようかな、、、という軽い気持ちで行ってしまった。
……で、正直なところ、かなり退屈だった。映画自体も、ハッキリ言ってめちゃくちゃ観念的な映画で、頭の中で捏ね繰り回しただけのモノという感じだった。後半の胸糞悪い展開などから、ちょっとラース・フォン・トリアーに通じる感じもあり、ハッキリ言って嫌悪感さえ抱いた。
おまけに、オンラインインタビューは、さらに輪を掛けて観念論に終始していて、なんというか、途中からどーでもええわ、、、という感じにさえなってしまった。
のだけど、1つだけ印象に残った話があり、それは、本作の前半、草原で兄と妹が寝転ぶようにして話をしているシーンについて、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」にインスパイアされた、という話。別にこの絵が好きなわけではないが、割と有名な絵だし、このモデルになった女性の話とかを何となくは知っていたので、それが、本作の妹のキャラ設定と若干被り、なるほどね、、、と思ったのだった。
アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」(画像お借りしました)
とはいえ、このトークで通訳を務めていたのは日大のドイツ映画専門家(?)の渋谷哲也氏というお方だったのだが(この方は、「戦場のピアニスト」のトークショーでも話を聴いたことがある)、ワイエスのことを知らなかったみたいで、ココでも話が噛み合っていなくて、何となくガッカリだった。
いずれにしても、いかにして、観念映画を作ったか、、、という観念論を延々聞かされて、めっちゃ疲れたのだった。何が何のメタファーだとかいろいろ話していたけど、ここまで来ると、ただの自己満じゃないの?という感じ。人に見せるということを考えていないわけじゃないみたいなのが、逆に不思議でさえあったわ。
本作は恐らく劇場公開されないだろうけど、されても見に行かないね、間違いなく。
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