切り絵

浮世絵を切り絵に

広重 富士三十六景 伊勢二見か浦

2016年04月22日 | Weblog

「伊勢二見か浦」

富士山は、意外なほど離れた場所からも見ることができる。紀伊半島はその最南端とされ、和歌山や奈良からも富士の稜線が確認されている。伊勢湾にある二見浦は、遥か彼方から富士を望める場所として古くから知られていた。五月から七月にかけて岩の聞から日が差し昇り、さらに夏至の前後二週間程には富士山頂からの御来光を拝むことができるが梅雨の時期にあたり観測することは難しい。鏡のように静かな海の沖合には、夜明けとともに海に出た帆掛け船が見える。広重は夫婦岩の作る対角線や、幾重にもかけられた注連縄の線、船の帆の連なりなどによって、視線を富士に導いて、夫婦岩から富士を遥拝し、御来光を待つときの神聖な空気を伝えようとしている。

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