「東都数寄屋河岸」(東京都中央区有楽町)
夜のうちに降り積もった雪は一面を銀世界にして、明け方には上がったようだ。画面に広がる江戸城外濠には未だ何艘もの舟が莚に雪を被ったまま停泊している早朝のひとときを描いている。中央の石積みの土手を右に進むと数寄屋御門に続く数寄屋橋が架かっているが、右岸に築かれた石垣の陰に隠れて見えない。晴れ渡った空のもと、澄み切った空気のおかげで真っ白な富士山がくつきりと姿を見せている。江戸城の南東、外濠沿いの、数寄屋造りの屋敷が多かったことから数寄屋町と名付けられた界隈の河岸を数寄屋河岸と言った。