「大隅 さくらしま」 (鹿児島県鹿児島市)
大隅国は日向の西南、薩摩の東に位置して、南の肝属郡は半島となっている。桜島は、その半島でかこむ鹿児島湾内の火山島であったが、大正三年の大爆発による溶岩流のため、大隅半島に接続して半島となってしまった。霧島火山帯の活火山で、最高峰の御岳は標高1,117メートルに達する。海中に屹立して、天に聳え、たとえて言えば青漆の盤上に香炉を置いたようで、秀麗無比といわれた。平時、頂上より白雲が蒸発するように煙の昇るのをみるのであるが、ここでは静かな御岳を描く。上半分陽が当たった光景で変化をもたせ、美しい粧いをみせている。右側の松原が画面中央まで入りくみ、それに対して桜島が中央から左隅まで描かれ、曲がった海面をえがく。帆を上げた走船と帆を降ろした碇泊船とを、ことさら描きわけたことにより、下方へくるにつれてその静けさが増している。