「堀江ねこざね」
境川を挟んで、南(画面左)が堀江村、北(画面右)が猫実村。林立する民家の屋根が、リズミカルに配されている。鴻之台を南下した江戸川河口の景で、現在の千葉県浦安市。両村とも漁業が盛んで、また江戸への塩の供給源でもあった。さらに、鴻之台から千葉方面への交通のポイントでもあり、多くの人がここを経由した。手前を流れるのは境川、その上に架かるのは境橋である。右方松林のなかに見える神社は、豊受神社。古来水害の多い地域だったが、とくに甚大な被害を被った永仁の大津波(一二九三年)のあと、豊受神社付近に堤防を築き、松を植えて、川水が松の「根を超さぬ」よう願ったのが訛って、「猫実」の村名になったといわれる。