「上野山した」
場所は題の上野山下とは、少し場所が違うようだ。森の中に鳥居が見えるが、これは仁王門前町の東側にあった五条天神であることが図でわかるため、下谷広小路と山下の間を描いたことになる。目立つように描かれている店の看板は、伊勢屋 しそめし(志楚)とある。二階は提灯と数人の女性がいることから、高級な料亭を思わせる。魚もヒラメであろうか、とびきり大きく描かれていて、さりげなく高級感を出している。この店は明治に入り店名を「雁鍋」として、営業を続けていたそうだ。手前には揃いの着物と蛇の目傘を持った一行がいる。これは当時、吉原遊女や習い事の師弟が花見に行くときに、お揃いの傘で行くのが流行っていた。