波佐見の狆

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”London Recital Review" 追記

2006-11-02 10:02:51 | Harry Sever

BBCインタビューの興奮がまだ冷めやらないというのに、また新たなHarry のインタビューが入ってきました!

オンラインの 'Boy Choir Magazine' Nov./Dec. issueです!

http://boychoirmagazine.com/

(Current issueというところをクリックすると、Harryの写真が出てきますので、そこから開けます)

詳細は、また後ほどということで、その前に、今までの投稿のことで追記がいくつかあります。

「London Recital Review」に関してなのですが、Curraghさん("Miscelleneous thoughts"サイトの管理者さん)およびSatomiさん(FBACフォーラムメンバー)から有益なご教示をいただきましたので紹介させていただきます。

 

①「休憩の後は、イギリス人作曲家、ハウエルの曲が3曲。最初は"King David"である。」と訳した箇所ですがこれは、「ハウエル」は誤りで、正しくは「ハウエルズ」(Herbert Howells)でした。原文がHowell's "King David"となっているので、私もちゃんと調べずそのまま書いたのですが、おそらくHowells' "King David"のつもりのタイポだと思われます。"My Own Country"のプレイリストを見ればすぐにわかることでした。

 Curraghさんが、ハウエルズの作品一覧サイトを教えてくださいました

http://www.ne.jp/asahi/enigma/anglophile/music/howells/howells.work.html#work6

② 「私を含め、メンバーは、男性も女性も、年齢から考えると、少なくとも合計4000年間はボーイソプラノを聴いてきた人間だから、この聴衆を感動させるのは、どんな歌手でも難しい。」と訳して、この「合計4000年間」の意味がわからないということを訳注にも記していた箇所。(原文はThese men and women have been listening to boy sopranos for, judging by our ages, a combined total of at least 4000 years. Impressing them all would have been a tough task for anyone.)

聴衆はかなりの年配だと思われるので、ボーイソプラノ愛好歴が1人40年ほどで、それが100人ほど居たということだろうけど、変な記述だなあと思っていましたが、これは単なるユーモアと解釈すればよいようです。

なおこの箇所をCurraghさんが訳されると次のようにぐっと生き生きとしてきます。

聴き手はわたしもふくめて男性も女性も相応にいい歳 、ぜんぶあわせればすくなくとも4000年はボーイソプラノを聴いてきた計算になるので、こんな聴き手をおしなべて感動させるなんて芸当はけっして容易なことではなかったろう。」

後半の文、would have been a tough taskという仮定法過去完了は、やはりこのようにそのまま(丁寧に)訳出したほうがよかったですね。「難しい」と言い切ると、永久の真理のようで、流れからして変かもしれません。

ついでながら、このレビュー冒頭の数行についてもCurraghさんの名訳をいただいておりますので、皆さんも味わってください。

今日、ロンドンで(聖歌隊の伝統を守る運動有志の)集まりがあり、その折ウィンチェスターカレッジ のハリー・セヴァーのミニリサイタルを存分に堪能するという、この上なくすばらしい機会に恵まれた 。作曲者や作品についてかんたんながらも堂に入った曲目紹介を交えつつ、ハリー少年は鍛え抜かれた抜群のテクニックで自信たっぷりに歌い上げた。はじめの三つはドイツ語の作品だったが、ハリー少年 は臆するどころか、いかにも気持ちよさげに歌うではないか。われわれ聴き手は歌い始める前から確信していた――これはただたんに優秀なボーイソプラノによるリサイタルではない。ドイツリートにすべてを捧げた、若きリート歌手による演奏会なのだ。歌っているときの姿勢といい、完璧に制御された表情や手つきといい、まるで実年齢の倍の大人が歌っているかのような錯覚すらおぼえた。…

素敵ですねぇ・・英語から訳したものではなく、最初から日本語で書いたような自然な流れがあります。(私のは、直訳にちょっと毛が生えた程度ですからね・・・ )

③ 音楽の専門用語で、tessituraというのが出てきました。

フランクの「天使のパン」にまた別の作曲家が曲をつけ、このニューバージョンをさっそくHarryが歌ってみせた、というところです。

「それは、その日のレパートリーのどの曲とも全く異なる歌唱スタイルが要求される、とても静かで全体のテッシトゥーラ が高いものであった。」

このtessituraという用語については、ネットで調べても正直あまり分からなくて、ともかく音域のことらしい、ということで訳も逃げていたのですが 、Satomiさんが次のように説明してくださいました。

                         ******

音楽辞典による「tessitura」の定義:

「ある曲の大部分の音が入る音域をいう。特に声楽用語としては、突出して現れる最高音と最低音を除いた、歌手が楽に出せる声域をいう。」(新訂標準音楽辞典(音楽之友社))

・・・つまり、単なる広範囲な「音域」なのではなく、その曲の大部分を占める音域ということでしょう。 そのフランクではない人が作曲した「天使のパン」は、ただ単に「高い音が出てくる」とか 「最高音がとても高い」というだけではなく、きっと曲を構成するほとんどが高音域で作曲されているんだと思います。一般的に「歌手が楽に出せる声域」というのは、たぶん「ファ~高いミ」くらいだと思いますが、この「天使のパン」は最高音と最低音を除いてもほとんどがそれ以上の高音なんだと思います。(どれだけ高音なのか知りたいですね) いきなり高音で始まる曲というのは、かなり歌いづらいです。ましてや、「とても静かで」 と書いてありますが、高い音を静か・弱めに歌うというのもかなり難しいです。

そんな高音域の難しい曲を、ハリーは平然と歌ってしまったということなんですね。ますますその曲を聴いてみたくなります。

                                             ********

なるほど! よくわかりました。

なお、訳としては、「とても静かで全体のテッシトゥーラ が高い」ではなくて、「全曲を通して弱音でしかも高い声域」が要求されるものであったという感じではどうか、とCurraghさんがまた教えてくださいました。quietは私も「静かな」ではなくてもっと適切な言葉がありそうだと思っていたのですが・・・「弱音」ですね!

皆様、ご教示ご協力ありがとうございました。今後ともお世話になります!

 

(Photo used with the permission of Judy Sever)