アレルギーとは何か―アレルギーの話―
アレルギーの話 Ⅰ
はじめに
人間は、昔よりは、より多くのことを知っていますが、まだ僅かなことしか知っていません。知らないことの方が多いのです。今後もっと多くのことが判って来るでしょう。また、それ故にいろいろな意見があります。私の意見は、私が医学、科学の歴史から学び、現代医学とつき合わせて考えたことであり、今後書き直されることになるでしょうが、今、私が考える最善のものです。残念ながら、この考え方は、現代医学では、特に日本では少数派であり、賛同する医師は余りいませんが、私の考えを評価するのはあなたです。試みにして見て、うまくいくなら取り入れて下さい。でも、それには社会という障壁があり、それを乗り越えなければ、うまく行かないし、自分のこころを変えないとうまくいかないでしょう。それが難しいのです。そこから先は、心療内科(こころから来る身体の病気を、こころを変えることで治す科で、精神科ではないのですがよく混同されるし、実際に心療内科を標榜している医師は精神科医が多いので、体の病気を治してくれません。)になります。
(ここからは、わかる所だけ読んで、わからない所はとばして読んで下さい。医師が読んでもよいように書いてありますから。)
§1.アレルギーの話
◎現在は、アレルギーとは「本来なら無害のはずの抗原に対する免疫応答によって起こる疾患」と定義されています。自分の身体の組織傷害を起こし、重篤な疾患にいたる可能性のある有害な免疫応答の一つが過敏反応です。その一つがアレルギーです。
過敏反応は四つに分類されます。
Ⅰ型、 IgEを介した過敏反応、通常のアレルギー。アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレギー性結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、全身性アナフィラキシーなど。
Ⅱ型、 IgGを介したもので、細胞表面や間質の抗原に直接反応することで組織傷害が起きる。薬物アレルギー(ペニシリンなど)。
Ⅲ型、 IgGを介したもので、可溶性の抗原に反応して免疫複合体が形成され、これが引き金となった反応により組織傷害が起きる。血清病、アルツス反応など。
Ⅳ型、 T細胞を介した反応で、三つのタイプがあります。
一、Th1細胞によるマクロファージの活性化で起こる組織傷害で、その結果として炎症反応が起こる。接触性皮膚炎、ツベルクリン反応
二、好酸球優位の炎症反応と関連するTh2細胞活性化による組織傷害。慢性気管支喘息、慢性アレルギー性鼻炎
三、細胞傷害性T細胞による直接の組織傷害です。接触性皮膚炎(うるしなどのかぶれ)など。
アトピーとは、普通の環境に存在する多種の抗原に対してIgEが応答する傾向を言います。先進国に多く、発展途上国に少ないのです。
◎アレルゲン(アレルギーを起こす原因)の特徴
IgEの産生をうながすのは
1)蛋白だけ。それがT細胞の反応を誘導する。もし蛋白質でなければ、中に入っている微量の蛋白か、ストレスによるものか、精神心理的なものか。
2)比較的小分子で粒子として粘膜に拡散する。小分子量です。
3)可溶性で花粉やダニの糞のような乾燥粒子によって運ばれ溶出します。
4)典型的にはきわめて少量が免疫系に提示されます。それによってT細胞が活性化します。IL-4産生CD4。普通、年間1μgを超えません。きわめて少量で起きるのです。
5)安定性。乾燥した粒子の中でも活性があります。
6)酵素としての機能をもつ。しばしばプロテアーゼといわれます。
7)すべての人が同じ反応をするのではない。その人のT細胞応答を必要とします。
◎アレルギーは遺伝的要因プラス環境因子で生じる。
遺伝子は、第11番染色体と、第5番染色体にある可能性が高いのです。
◇アレルギーは体質ではありません。体質とは何か。現代では、医学的には使われなくなった用語ですが、社会的には氾濫しています。体質の定義ができていません。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましんは、関連のある病気で家族内発生率は高いのですが、遺伝や体質は証明されていません。身内に一人もいなくても出ることがあるし、親が喘息でもこどもが喘息にならないこともあります。なぜでしょうか。
◇遺伝的に同じであるはずの、一卵性双胎の一人が喘息で、残りの一人が喘息である確率が、25%といいます。これについては、8から80%といろいろなデータもあり、意見が分かれています。
最近の遺伝子と免疫の研究では、遺伝子と、それにスイッチを入れて遺伝子を働かせるものがあり、それが環境因子(狭義の意味では、自然環境だけであるが、広義の意味では、社会環境、そこから来る情緒的環境、精神的、心理的環境を含み、俗にいうストレスが含まれます)です。つまり遺伝子と環境の相互作用であるというのが、今の遺伝子学や免疫学の考え方です。
遺伝子学からいうと、遺伝子を持っていても、その遺伝子の働きが発現されなければ、病気になりません。遺伝子のスイッチをオンにするのが環境因子です。だから環境が変れば、病気も変ります。
◇アレルギーマーチという小児科医が多いですが、私は、それは、子どもは成長するに従って、精神的にも肉体的にも成長し、また、環境も小、中、高、大学と進学しても変るし、親の転勤によっても変り、それによって、なる病気も変っていくと考えます。
何もアレルギーは、必然ではありません。うまく抜け出せればよいのです。でも、それが、現代の日本社会では難しいのです。一方的な考えの法律や、抜け道だらけの法律や、憲法違反の法律や、それに乗じたいろいろな医師、製薬会社があり、その反動で根拠のない漢方、民間療法、代替医療がはびこっています。代替医療の研究では、すべて有効とは考えられず、一部は有効ですが、無効のことも多いことも事実です。
世界には、多くの異なった医療があります。現代の西洋医学、それに影響を及ぼしたイスラム医学(ヒポクラテス医学はイスラムを通して西洋医学に取り入れられました)、各地の伝統医学(中国医学、漢方医学、チベット医学((チベット仏教の密教))各地の先住民族医学)、ホメオパシー、カイロプラクティス、宗教医学など。
しかし、どの医学でも、100%効果があるものはありません。効果がある場合も、ない場合もあります。なぜでしょうか。それはまだ、すべての病気の治療をできる医学がないということでもあります。
私は、先に述べた、遺伝子と環境の相互作用で病気が起きると考え、その要因の一つをなくせば、病気は治ると考えます。もちろん、環境因子には、細菌、ウイルスその他の微生物、寄生虫、動植物、食物などもあります。それに加えて、社会環境、特に戦争、それに抑圧された社会(保育所、幼稚園、学校、職場)、家庭、地域などが含まれます。
母原病という医師もいますが、それは一部しか見ていない医師の考えと思います。母親も、自分の親や生まれ育った環境によって変り、しかも現在の置かれている環境(特に家庭内)によっても左右されているからです。自分の育った環境がよくなかったから、そういう思いを子どもにさせたくないと思うこころが、子どもを変えてしまいます。自分と同じにしたかったら、同じ環境にして育てることです。少しでも違ったら、子どもは違う道を歩んでしまいます。
自分が子ども時代にいやだったことを、子どもにさせないと自分と違ってしまいます。
◇アレルギーにはいろいろ種類があります。(前にも書きましたが)
Ⅰ型 アレルギー性(IgE仲介性)-即時型アレルギー-アトピー、アナフィラキシー
Ⅱ型 抗体による細胞毒性反応-(IgMまたはIgG仲介性)-輸血反応(溶血)
Ⅲ型 免疫複合物の形成-(IgG、IgM、IgA)-血清病
Ⅳ型 古典的遅延型アレルギー反応-ツベルクリン反応、過敏性肺臓炎、ベリリウム中毒
◇食事アレルギーとじんましんは別の病気です。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、じんましんは関連のある病気であすが、薬物アレルギーとは別の病気です。
§2.人はなぜ病気になるのか(別項―人はなぜ病気になるのか―参照)
◇人は環境に適応できない時に、病気になるのです。
現代では、社会環境に適応できない時、すなわちストレスがあると病気になるのです。
最大の原因はストレス。ストレスから病気になるのです。その時、その人の弱点に病気が出てくるのです。
◇アレルギーは親からもらった身体の弱点。弱点つまり遺伝的素因(遺伝子はまだ確定していない)は受け継ぐが、病気は受け継がないのです。弱点を受け継ぎ、それが環境によって、発病したのです。
§3.病気とは
病気は身体やこころの変調です。こころと体は、メタルのうらおもてですから、連動しています。こころが変化すると、体も変化します。逆もあります。
病気を嫌わないで、受け入れて、なぜなら病気はあなた自身ですから。自分で自分の病気になっている身体やこころをなだめてください。不安になると病気は悪くなります。
§4.一病息災
1ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると他からあふれないように、1つの病気にかかると他の病気にかかる率が低くなります。水痘にかかっている間は、喘息の発作は起きません。
1つの病気を、手術や薬で治してしまうと、ストレスがなくならなければ、また別の病気にかかってしまいます。また、同時にいくつもの病気にかかってしまう人もいます。100歳で自立している人は、ほとんど病気をしないで長生きしているのです。アレルギー性の病気にかかると、他の病気にかかる率は低くなるのですが、ストレスが多ければ、他の病気にもなります。
§5.なぜアレルギーが増えたのか。
最大の原因は、環境の悪化です。戦後日本の経済は大きく発展しました。特に高度経済成長時代と云われる昭和30年代後半から昭和40年代に、産業公害が大きく広がり、人間の住みにくい環境になっていきました。それは自然環境と社会環境の両面があります。
喘息は、高度経済成長時代に増加し、その後1980年代に成人のスギ花粉症とこどものアトピー性皮膚炎が増加していきました。
自然環境が悪化すると共に、人がのびのびと生きていけなくなった社会環境になりました。
保育所、幼稚園、学校、職場、住んでいる地域と、どこでも管理が進み、個人の自由が無くなってきています。いつも他人の顔色を気にして生きている暮らしにくい社会になってきました。
§6.アレルギー性の病気の起きやすい自然環境
工場の煙、自動車の排気ガス、光化学スモッグ、杉花粉、 気温や湿度の変化、天候の変化、梅雨、台風、春風(大陸からの) 住環境の悪化、過密住宅、サッシによる家の気密化。畳からじゅうたんへ。木造からコンクリートへ。 食品添加物や、黄砂PM2.5なども。
§7.アレルギー性の病気の起きやすい社会環境
先進国に多く、発展途上国に少ないです。しかし途上国でもどんどん増えています。
ところが先進国の中では、スカンジナビア諸国が少ないのです。これは人間が暮らしやすい社会だからではないでしょうか。
都市に多く、農村部に少ない。
社会的要因は、個人では解決できないです。--現代人病、文明病。
日本では主に明治時代以後に始り、高度経済成長以後急増、特に近年に増加。狭い地域に人口が増えるとなりやすい。都市に多く、農漁山村に少ない。一般的には先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国でも増えています。
喘息の疾病率;アメリカでは人口の5%(こども7~19%)、日本では都市では5%以上、農村でも増え、川崎や四日市では一時8%以上でしたが、今は工場が減り、減少しています。
スカンジナヴィア地方では特に低いことも特徴的です。人にやさしい社会だからでしょうか。
例1;アメリカ先住民(居留地)。――アメリカ先住民(インディアン)は昔、居留地に囲い込まれた頃、気管支喘息はみられなかったとの記録があるといいます。ところが居留地は岩山や砂漠、草原などの生産性の低い土地で、人口が増えてくると生活が出来なくなり、都市へ流入し、その中から喘息になる人がでてきたのです。今、都市では白人と同じ割合で喘息になり、また居留地でも喘息が出てきています。
またアラスカのイヌイットも、昔は、喘息はほとんどなかったのに、次第に増えています。
例2;横浜喘息(明治時代の外国人)。――明治時代に横浜に来た欧米人たちは、主に貿易商と外交官たちでしたが、その病気の一つに喘息があり、横浜に来てから病気になって、仕事にならず、帰国していく途中、船が横浜港から遠ざかると共に、喘息の発作は軽くなり、おさまったといいます。これを横浜喘息と呼んだそうです。
例3;アメリカ黒人の気管支喘息――アメリカの軍隊の中での調査で判ったことは、昔は若い黒人兵には気管支喘息が無く、その後だんだん出てきて、増えているといいます。昔、日本の徴兵検査では、結核では免除されず、喘息はだめで徴兵されませんでした。
例4;現在はアメリカの若者のブタクサ花粉症が増えています。
現在、日本の大人のスギ花粉症とアメリカの若者のブタクサ花粉症、それにヨーロッパのイネ科の牧草の花粉症が増えています。日本は中高年層にスギ花粉症が増え、失業率や労働条件が関係しているものと考えられます。日本でも若い人の花粉症が増えています。若い人の労働条件が悪く、正規雇用も減り、欧米化しているためではないでしょうか。欧米では、若者の失業率が高いこともひとつの要因と考えられています。
§8.ストレスの話
ストレスになるものは、環境です。
ストレスを回避するにはどうするか。
いやなことはしない。いやだなと思って我慢せず、仕方ないさ、まあいいや、そういうものだと思う。子どものストレスは、大人次第と、環境が、神学や就職、結婚などで変化していきますから、解決できることが多いですが、大人のストレスは、なかなか環境を変えられず、解決が難しいです。他の人(相手)を変えたければ、自分が変わることですが、それが難しいし、相手を変えることがそもそも難しい場合もあります。
日本の社会を、北欧なみの、人にやさしい社会に替えない限り、難しいです。必ず、選挙権を行使し、あきらめず、少しでもましな社会を作ってくれそうで、選挙に勝ちそうな候補者に投票しましょう。選挙に勝たなければ、何も実現しません。あなたが立候補してもいいのです。政治を変えるには、政治家になるか、政治家を動かすしかないのです。
国政は難しいなら、市区町村レベルで、動かしましょう。小異を捨てて、大同につきましょう。よりましな、しかも勝つ可能性のある候補者に投票しましょう。自分の支持する政治家を動かしましょう。現代社会は、政治に左右されています。政治を動かさない限り、今の現状は変わりません。現状を変えるには、政治を変えるしかありません。病気を治すには、政治を変えることです。アレルギー性の病気の少ない、北欧社会を目指しましょう。
§9.こどものストレス
まわりの人との人間関係からくることが多いようです。
赤ちゃんは、まず母親、兄や姉、祖父母、父親など。そして保育所。
赤ちゃんのストレスは、別のプリント参照してください。赤ちゃんを可愛がり過ぎないでください。さわったり、だいたり、赤ちゃんが要求していない時は、しないでください。
幼児では、それに幼稚園。そこでの鼓笛隊、剣道、はだし、裸、プール。
学童では、学校、先生、同級生、いやがらせ、いじめ、塾、習いごと。公文式、そろばん、習字、ピアノ、スイミング、剣道、サッカー、野球。頑張らせることと、強制することがよくありません。最近わかったことは、スポーツを明治時代に日本語に翻訳する時に、遊戯という言葉も使われたそうです。つまり、楽しむもので、体を鍛えるものではないのです。しかし、中学、高校の部活や大学の運動部に問題があります。それで、それがいやで、大学の山岳部などは、なくなってきているようですし、相撲は中卒で相撲部屋に入門するより、高校や大学の相撲部の方が、練習が厳しく、それで大学出で関取になる人が増えているのです。
今の部活には問題が多いのです。それで、サッカーのJリーグのように、若手世代を下部組織で育てるシステムのほうがよいのです。若い時に、無理をさせず、トップチームに入ってから、活躍するようにしどうすることが大切だと思います。
いやなことをやらせないこと、やりたがったことでも、いやになったら、やめさせましょう。
子どもにやらせたかったら、3~4歳ころから、いやがらないように、やらせることです。そして、いやな思いをさせないで、続けさせることです。続けることに、希望を持たせることです。
§10.ストレスに強くするには
叱らずに、ほめて育てること。ほめてこどもを操縦すること。
自己主張を強くするように育てる。
母親の言いなりになる子は、病気になりやすい。
喘息になる子は、普段は自己主張が強く、人をかきわけても前へ行こうとするのに、強く云われると言い返せずに黙ってしまい、いやだなと思いながら我慢するタイプが多いようです。
§11.アレルギーは変化します
アレルギーの病気が、変わったり(アレルギーマーチと呼んだり、一つが出ている時は他のアレルギーは出ない)、アレルギーの原因が変わったりします。
例1;以前国立病院で、喘息外来をやり、気管支喘息の治療に減感作療法をしていました。その時、その治療で、あるアレルゲンに過敏にならなくなったのに、喘息発作がおさまらないので、再びアレルゲンの検査をした所、原因が変わって、他のアレルゲンに過敏になっていたのです。
例2;昔、インターン時代に、アルバイトで、ある病院の夜間外来と当直に行っていた時、寿司屋の板前さんが蕁麻疹になって、よく治療に来ていました。その人は青身魚で出たので、洋食屋に転職しました。所が今度は肉や牛乳で蕁麻疹が出るようになったといいます。
例3;国立病院時代でも、前の診療所でも、特定の抗生物質にアレルギーが出る人に、アレルギーの起こる仕組みと背景を説明し、起きたらすぐ飲むようにステロイドホルモン剤を渡して、使ってもらったら、アレルギーが起こらず、ステロイドを使わずに済みました。その説明を信頼してくれなければ、またアレルギーが起きたかもしれませんが、幸い起きず、それで病気を治療できました。薬のアレルギーも治ることがあるのです。
例4;元九大心療内科教授の池見酉次郎先生の、うるしかぶれの研究では、ゴルフ場職員で実験した所、催眠状態でうるしかぶれの人の腕に水をぬり、「うるしをぬった」というとかぶれ、うるしをぬって「水をぬった」というとかぶれない人が多かったのです。特にうるしかぶれでひどい目にあった人に、その傾向が強かったといいます。もちろん例外はありました。また、うるしの木のそばへ行くとかぶれるという人に、他の木の枝の間にうるしの枝を混ぜて、それを知らせずにその下をとうらせたら、誰もかぶれなかったといいます。
例5;19世紀アメリカの内科医マッケンジーは「造花のばらを使ったいわゆる『バラ花粉症』の発病」の逸話があります。32歳の女性で、15年間5~9月の激しいアレルギー性鼻炎と夏の終わり頃に起きる喘息発作に悩まされていました。17項目の刺激(恐怖や過労、興奮、夜風にあたるなど)が発作の引き金になりました。特に干し草やバラの臭いに敏感でした。
この患者に、治療がよくなりかけた時に、本物とそっくりの造花のバラを幕の後ろから出して、手に持って彼女の前に腰かけた。5分もしないうちに彼女は完全な鼻アレルギーを起こしたのです。『実はこのバラは造花なんです』というと、彼女はひどく驚いて、自分で確かめた。激しいくしゃみをしながら帰り、二、三日してまた来院した時に今度は本物のバラの花を出し、匂いをかぎ、花粉を吸い込んでもらったが、症状はでなかったといいます。心理的要因が関与していることを示しています。
アレルギーの話 Ⅰ
はじめに
人間は、昔よりは、より多くのことを知っていますが、まだ僅かなことしか知っていません。知らないことの方が多いのです。今後もっと多くのことが判って来るでしょう。また、それ故にいろいろな意見があります。私の意見は、私が医学、科学の歴史から学び、現代医学とつき合わせて考えたことであり、今後書き直されることになるでしょうが、今、私が考える最善のものです。残念ながら、この考え方は、現代医学では、特に日本では少数派であり、賛同する医師は余りいませんが、私の考えを評価するのはあなたです。試みにして見て、うまくいくなら取り入れて下さい。でも、それには社会という障壁があり、それを乗り越えなければ、うまく行かないし、自分のこころを変えないとうまくいかないでしょう。それが難しいのです。そこから先は、心療内科(こころから来る身体の病気を、こころを変えることで治す科で、精神科ではないのですがよく混同されるし、実際に心療内科を標榜している医師は精神科医が多いので、体の病気を治してくれません。)になります。
(ここからは、わかる所だけ読んで、わからない所はとばして読んで下さい。医師が読んでもよいように書いてありますから。)
§1.アレルギーの話
◎現在は、アレルギーとは「本来なら無害のはずの抗原に対する免疫応答によって起こる疾患」と定義されています。自分の身体の組織傷害を起こし、重篤な疾患にいたる可能性のある有害な免疫応答の一つが過敏反応です。その一つがアレルギーです。
過敏反応は四つに分類されます。
Ⅰ型、 IgEを介した過敏反応、通常のアレルギー。アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレギー性結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、全身性アナフィラキシーなど。
Ⅱ型、 IgGを介したもので、細胞表面や間質の抗原に直接反応することで組織傷害が起きる。薬物アレルギー(ペニシリンなど)。
Ⅲ型、 IgGを介したもので、可溶性の抗原に反応して免疫複合体が形成され、これが引き金となった反応により組織傷害が起きる。血清病、アルツス反応など。
Ⅳ型、 T細胞を介した反応で、三つのタイプがあります。
一、Th1細胞によるマクロファージの活性化で起こる組織傷害で、その結果として炎症反応が起こる。接触性皮膚炎、ツベルクリン反応
二、好酸球優位の炎症反応と関連するTh2細胞活性化による組織傷害。慢性気管支喘息、慢性アレルギー性鼻炎
三、細胞傷害性T細胞による直接の組織傷害です。接触性皮膚炎(うるしなどのかぶれ)など。
アトピーとは、普通の環境に存在する多種の抗原に対してIgEが応答する傾向を言います。先進国に多く、発展途上国に少ないのです。
◎アレルゲン(アレルギーを起こす原因)の特徴
IgEの産生をうながすのは
1)蛋白だけ。それがT細胞の反応を誘導する。もし蛋白質でなければ、中に入っている微量の蛋白か、ストレスによるものか、精神心理的なものか。
2)比較的小分子で粒子として粘膜に拡散する。小分子量です。
3)可溶性で花粉やダニの糞のような乾燥粒子によって運ばれ溶出します。
4)典型的にはきわめて少量が免疫系に提示されます。それによってT細胞が活性化します。IL-4産生CD4。普通、年間1μgを超えません。きわめて少量で起きるのです。
5)安定性。乾燥した粒子の中でも活性があります。
6)酵素としての機能をもつ。しばしばプロテアーゼといわれます。
7)すべての人が同じ反応をするのではない。その人のT細胞応答を必要とします。
◎アレルギーは遺伝的要因プラス環境因子で生じる。
遺伝子は、第11番染色体と、第5番染色体にある可能性が高いのです。
◇アレルギーは体質ではありません。体質とは何か。現代では、医学的には使われなくなった用語ですが、社会的には氾濫しています。体質の定義ができていません。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましんは、関連のある病気で家族内発生率は高いのですが、遺伝や体質は証明されていません。身内に一人もいなくても出ることがあるし、親が喘息でもこどもが喘息にならないこともあります。なぜでしょうか。
◇遺伝的に同じであるはずの、一卵性双胎の一人が喘息で、残りの一人が喘息である確率が、25%といいます。これについては、8から80%といろいろなデータもあり、意見が分かれています。
最近の遺伝子と免疫の研究では、遺伝子と、それにスイッチを入れて遺伝子を働かせるものがあり、それが環境因子(狭義の意味では、自然環境だけであるが、広義の意味では、社会環境、そこから来る情緒的環境、精神的、心理的環境を含み、俗にいうストレスが含まれます)です。つまり遺伝子と環境の相互作用であるというのが、今の遺伝子学や免疫学の考え方です。
遺伝子学からいうと、遺伝子を持っていても、その遺伝子の働きが発現されなければ、病気になりません。遺伝子のスイッチをオンにするのが環境因子です。だから環境が変れば、病気も変ります。
◇アレルギーマーチという小児科医が多いですが、私は、それは、子どもは成長するに従って、精神的にも肉体的にも成長し、また、環境も小、中、高、大学と進学しても変るし、親の転勤によっても変り、それによって、なる病気も変っていくと考えます。
何もアレルギーは、必然ではありません。うまく抜け出せればよいのです。でも、それが、現代の日本社会では難しいのです。一方的な考えの法律や、抜け道だらけの法律や、憲法違反の法律や、それに乗じたいろいろな医師、製薬会社があり、その反動で根拠のない漢方、民間療法、代替医療がはびこっています。代替医療の研究では、すべて有効とは考えられず、一部は有効ですが、無効のことも多いことも事実です。
世界には、多くの異なった医療があります。現代の西洋医学、それに影響を及ぼしたイスラム医学(ヒポクラテス医学はイスラムを通して西洋医学に取り入れられました)、各地の伝統医学(中国医学、漢方医学、チベット医学((チベット仏教の密教))各地の先住民族医学)、ホメオパシー、カイロプラクティス、宗教医学など。
しかし、どの医学でも、100%効果があるものはありません。効果がある場合も、ない場合もあります。なぜでしょうか。それはまだ、すべての病気の治療をできる医学がないということでもあります。
私は、先に述べた、遺伝子と環境の相互作用で病気が起きると考え、その要因の一つをなくせば、病気は治ると考えます。もちろん、環境因子には、細菌、ウイルスその他の微生物、寄生虫、動植物、食物などもあります。それに加えて、社会環境、特に戦争、それに抑圧された社会(保育所、幼稚園、学校、職場)、家庭、地域などが含まれます。
母原病という医師もいますが、それは一部しか見ていない医師の考えと思います。母親も、自分の親や生まれ育った環境によって変り、しかも現在の置かれている環境(特に家庭内)によっても左右されているからです。自分の育った環境がよくなかったから、そういう思いを子どもにさせたくないと思うこころが、子どもを変えてしまいます。自分と同じにしたかったら、同じ環境にして育てることです。少しでも違ったら、子どもは違う道を歩んでしまいます。
自分が子ども時代にいやだったことを、子どもにさせないと自分と違ってしまいます。
◇アレルギーにはいろいろ種類があります。(前にも書きましたが)
Ⅰ型 アレルギー性(IgE仲介性)-即時型アレルギー-アトピー、アナフィラキシー
Ⅱ型 抗体による細胞毒性反応-(IgMまたはIgG仲介性)-輸血反応(溶血)
Ⅲ型 免疫複合物の形成-(IgG、IgM、IgA)-血清病
Ⅳ型 古典的遅延型アレルギー反応-ツベルクリン反応、過敏性肺臓炎、ベリリウム中毒
◇食事アレルギーとじんましんは別の病気です。
◇気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、じんましんは関連のある病気であすが、薬物アレルギーとは別の病気です。
§2.人はなぜ病気になるのか(別項―人はなぜ病気になるのか―参照)
◇人は環境に適応できない時に、病気になるのです。
現代では、社会環境に適応できない時、すなわちストレスがあると病気になるのです。
最大の原因はストレス。ストレスから病気になるのです。その時、その人の弱点に病気が出てくるのです。
◇アレルギーは親からもらった身体の弱点。弱点つまり遺伝的素因(遺伝子はまだ確定していない)は受け継ぐが、病気は受け継がないのです。弱点を受け継ぎ、それが環境によって、発病したのです。
§3.病気とは
病気は身体やこころの変調です。こころと体は、メタルのうらおもてですから、連動しています。こころが変化すると、体も変化します。逆もあります。
病気を嫌わないで、受け入れて、なぜなら病気はあなた自身ですから。自分で自分の病気になっている身体やこころをなだめてください。不安になると病気は悪くなります。
§4.一病息災
1ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると他からあふれないように、1つの病気にかかると他の病気にかかる率が低くなります。水痘にかかっている間は、喘息の発作は起きません。
1つの病気を、手術や薬で治してしまうと、ストレスがなくならなければ、また別の病気にかかってしまいます。また、同時にいくつもの病気にかかってしまう人もいます。100歳で自立している人は、ほとんど病気をしないで長生きしているのです。アレルギー性の病気にかかると、他の病気にかかる率は低くなるのですが、ストレスが多ければ、他の病気にもなります。
§5.なぜアレルギーが増えたのか。
最大の原因は、環境の悪化です。戦後日本の経済は大きく発展しました。特に高度経済成長時代と云われる昭和30年代後半から昭和40年代に、産業公害が大きく広がり、人間の住みにくい環境になっていきました。それは自然環境と社会環境の両面があります。
喘息は、高度経済成長時代に増加し、その後1980年代に成人のスギ花粉症とこどものアトピー性皮膚炎が増加していきました。
自然環境が悪化すると共に、人がのびのびと生きていけなくなった社会環境になりました。
保育所、幼稚園、学校、職場、住んでいる地域と、どこでも管理が進み、個人の自由が無くなってきています。いつも他人の顔色を気にして生きている暮らしにくい社会になってきました。
§6.アレルギー性の病気の起きやすい自然環境
工場の煙、自動車の排気ガス、光化学スモッグ、杉花粉、 気温や湿度の変化、天候の変化、梅雨、台風、春風(大陸からの) 住環境の悪化、過密住宅、サッシによる家の気密化。畳からじゅうたんへ。木造からコンクリートへ。 食品添加物や、黄砂PM2.5なども。
§7.アレルギー性の病気の起きやすい社会環境
先進国に多く、発展途上国に少ないです。しかし途上国でもどんどん増えています。
ところが先進国の中では、スカンジナビア諸国が少ないのです。これは人間が暮らしやすい社会だからではないでしょうか。
都市に多く、農村部に少ない。
社会的要因は、個人では解決できないです。--現代人病、文明病。
日本では主に明治時代以後に始り、高度経済成長以後急増、特に近年に増加。狭い地域に人口が増えるとなりやすい。都市に多く、農漁山村に少ない。一般的には先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国でも増えています。
喘息の疾病率;アメリカでは人口の5%(こども7~19%)、日本では都市では5%以上、農村でも増え、川崎や四日市では一時8%以上でしたが、今は工場が減り、減少しています。
スカンジナヴィア地方では特に低いことも特徴的です。人にやさしい社会だからでしょうか。
例1;アメリカ先住民(居留地)。――アメリカ先住民(インディアン)は昔、居留地に囲い込まれた頃、気管支喘息はみられなかったとの記録があるといいます。ところが居留地は岩山や砂漠、草原などの生産性の低い土地で、人口が増えてくると生活が出来なくなり、都市へ流入し、その中から喘息になる人がでてきたのです。今、都市では白人と同じ割合で喘息になり、また居留地でも喘息が出てきています。
またアラスカのイヌイットも、昔は、喘息はほとんどなかったのに、次第に増えています。
例2;横浜喘息(明治時代の外国人)。――明治時代に横浜に来た欧米人たちは、主に貿易商と外交官たちでしたが、その病気の一つに喘息があり、横浜に来てから病気になって、仕事にならず、帰国していく途中、船が横浜港から遠ざかると共に、喘息の発作は軽くなり、おさまったといいます。これを横浜喘息と呼んだそうです。
例3;アメリカ黒人の気管支喘息――アメリカの軍隊の中での調査で判ったことは、昔は若い黒人兵には気管支喘息が無く、その後だんだん出てきて、増えているといいます。昔、日本の徴兵検査では、結核では免除されず、喘息はだめで徴兵されませんでした。
例4;現在はアメリカの若者のブタクサ花粉症が増えています。
現在、日本の大人のスギ花粉症とアメリカの若者のブタクサ花粉症、それにヨーロッパのイネ科の牧草の花粉症が増えています。日本は中高年層にスギ花粉症が増え、失業率や労働条件が関係しているものと考えられます。日本でも若い人の花粉症が増えています。若い人の労働条件が悪く、正規雇用も減り、欧米化しているためではないでしょうか。欧米では、若者の失業率が高いこともひとつの要因と考えられています。
§8.ストレスの話
ストレスになるものは、環境です。
ストレスを回避するにはどうするか。
いやなことはしない。いやだなと思って我慢せず、仕方ないさ、まあいいや、そういうものだと思う。子どものストレスは、大人次第と、環境が、神学や就職、結婚などで変化していきますから、解決できることが多いですが、大人のストレスは、なかなか環境を変えられず、解決が難しいです。他の人(相手)を変えたければ、自分が変わることですが、それが難しいし、相手を変えることがそもそも難しい場合もあります。
日本の社会を、北欧なみの、人にやさしい社会に替えない限り、難しいです。必ず、選挙権を行使し、あきらめず、少しでもましな社会を作ってくれそうで、選挙に勝ちそうな候補者に投票しましょう。選挙に勝たなければ、何も実現しません。あなたが立候補してもいいのです。政治を変えるには、政治家になるか、政治家を動かすしかないのです。
国政は難しいなら、市区町村レベルで、動かしましょう。小異を捨てて、大同につきましょう。よりましな、しかも勝つ可能性のある候補者に投票しましょう。自分の支持する政治家を動かしましょう。現代社会は、政治に左右されています。政治を動かさない限り、今の現状は変わりません。現状を変えるには、政治を変えるしかありません。病気を治すには、政治を変えることです。アレルギー性の病気の少ない、北欧社会を目指しましょう。
§9.こどものストレス
まわりの人との人間関係からくることが多いようです。
赤ちゃんは、まず母親、兄や姉、祖父母、父親など。そして保育所。
赤ちゃんのストレスは、別のプリント参照してください。赤ちゃんを可愛がり過ぎないでください。さわったり、だいたり、赤ちゃんが要求していない時は、しないでください。
幼児では、それに幼稚園。そこでの鼓笛隊、剣道、はだし、裸、プール。
学童では、学校、先生、同級生、いやがらせ、いじめ、塾、習いごと。公文式、そろばん、習字、ピアノ、スイミング、剣道、サッカー、野球。頑張らせることと、強制することがよくありません。最近わかったことは、スポーツを明治時代に日本語に翻訳する時に、遊戯という言葉も使われたそうです。つまり、楽しむもので、体を鍛えるものではないのです。しかし、中学、高校の部活や大学の運動部に問題があります。それで、それがいやで、大学の山岳部などは、なくなってきているようですし、相撲は中卒で相撲部屋に入門するより、高校や大学の相撲部の方が、練習が厳しく、それで大学出で関取になる人が増えているのです。
今の部活には問題が多いのです。それで、サッカーのJリーグのように、若手世代を下部組織で育てるシステムのほうがよいのです。若い時に、無理をさせず、トップチームに入ってから、活躍するようにしどうすることが大切だと思います。
いやなことをやらせないこと、やりたがったことでも、いやになったら、やめさせましょう。
子どもにやらせたかったら、3~4歳ころから、いやがらないように、やらせることです。そして、いやな思いをさせないで、続けさせることです。続けることに、希望を持たせることです。
§10.ストレスに強くするには
叱らずに、ほめて育てること。ほめてこどもを操縦すること。
自己主張を強くするように育てる。
母親の言いなりになる子は、病気になりやすい。
喘息になる子は、普段は自己主張が強く、人をかきわけても前へ行こうとするのに、強く云われると言い返せずに黙ってしまい、いやだなと思いながら我慢するタイプが多いようです。
§11.アレルギーは変化します
アレルギーの病気が、変わったり(アレルギーマーチと呼んだり、一つが出ている時は他のアレルギーは出ない)、アレルギーの原因が変わったりします。
例1;以前国立病院で、喘息外来をやり、気管支喘息の治療に減感作療法をしていました。その時、その治療で、あるアレルゲンに過敏にならなくなったのに、喘息発作がおさまらないので、再びアレルゲンの検査をした所、原因が変わって、他のアレルゲンに過敏になっていたのです。
例2;昔、インターン時代に、アルバイトで、ある病院の夜間外来と当直に行っていた時、寿司屋の板前さんが蕁麻疹になって、よく治療に来ていました。その人は青身魚で出たので、洋食屋に転職しました。所が今度は肉や牛乳で蕁麻疹が出るようになったといいます。
例3;国立病院時代でも、前の診療所でも、特定の抗生物質にアレルギーが出る人に、アレルギーの起こる仕組みと背景を説明し、起きたらすぐ飲むようにステロイドホルモン剤を渡して、使ってもらったら、アレルギーが起こらず、ステロイドを使わずに済みました。その説明を信頼してくれなければ、またアレルギーが起きたかもしれませんが、幸い起きず、それで病気を治療できました。薬のアレルギーも治ることがあるのです。
例4;元九大心療内科教授の池見酉次郎先生の、うるしかぶれの研究では、ゴルフ場職員で実験した所、催眠状態でうるしかぶれの人の腕に水をぬり、「うるしをぬった」というとかぶれ、うるしをぬって「水をぬった」というとかぶれない人が多かったのです。特にうるしかぶれでひどい目にあった人に、その傾向が強かったといいます。もちろん例外はありました。また、うるしの木のそばへ行くとかぶれるという人に、他の木の枝の間にうるしの枝を混ぜて、それを知らせずにその下をとうらせたら、誰もかぶれなかったといいます。
例5;19世紀アメリカの内科医マッケンジーは「造花のばらを使ったいわゆる『バラ花粉症』の発病」の逸話があります。32歳の女性で、15年間5~9月の激しいアレルギー性鼻炎と夏の終わり頃に起きる喘息発作に悩まされていました。17項目の刺激(恐怖や過労、興奮、夜風にあたるなど)が発作の引き金になりました。特に干し草やバラの臭いに敏感でした。
この患者に、治療がよくなりかけた時に、本物とそっくりの造花のバラを幕の後ろから出して、手に持って彼女の前に腰かけた。5分もしないうちに彼女は完全な鼻アレルギーを起こしたのです。『実はこのバラは造花なんです』というと、彼女はひどく驚いて、自分で確かめた。激しいくしゃみをしながら帰り、二、三日してまた来院した時に今度は本物のバラの花を出し、匂いをかぎ、花粉を吸い込んでもらったが、症状はでなかったといいます。心理的要因が関与していることを示しています。
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