読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

小樽・カムイの鎮魂歌(レクイエム)-作家・六波羅一輝の推理- 鯨統一郎 中公文庫

2011-03-05 17:45:34 | 読んだ
作家・六波羅一輝の推理シリーズ第4弾である。

第4弾になって、六波羅一輝も落ち着いてきた、というか探偵として或いは作家として堂に入ってきた。
なんというか「プロ」になってきたようだ。

これまでは、アマチュアの雰囲気のほうが強く『まぐれ当たり』のような印象のほうが強かったが、今回は論理的思考が順番を追ってきている。

多くの推理小説では探偵役が謎解きの途中で「!!」とひらめくところがある。
論理的に考え分析をしてみても、最後の一つがつながらない。
そういうときに「!!」っとなる。

それは、謎解きをしている途中で何気なく見たものからの連想であったり、何気ないひとことを思い出したりといったことなのだが、この六波羅一輝はパソコンに向かい文章を綴っているときに何気なくキーワードを入力してしまうことである。
この現象を「ライターズハイ」と彼は呼んでいるが、霧中になってしまって我知らずのうちにキーワードを入力するのである。

「!!」というのは、推理小説に欠かせないものだが、あらたな形を鯨統一郎は編み出したといえるが、それが思っていた以上の効果があるとは思えないのが残念。
別に、それがなくてもいいんじゃないか、と思ったりする。

鯨統一郎の作品の特徴として「余計なこと」というか「へんなこだわり」というかがあることだ。
これが、へんにうけたり、うざったかったりする。

今回であれば、主人公の一輝と担当編集者(友達以上恋人未満)の『みなみ』が札幌空港についてレンタカーを借りるのだが、それは「パッソ」なのである。以降、通常であれば「車に乗った」と言うような部分の記述が「パッソに乗った」のような形になる。
これ何の意味があるのだろうか?
と、気になったりする。

また、今回の物語では、小樽に住む友人からの依頼で一輝は事件解決へ乗り出すのだが、その二人が友情を確かめ合うさまを見てみなみは「好ましく思った」という記述がある。
いかにも「とってつけたような」表現で、この表現にはなにか別の意味があるのだろうか、なんて考えてしまう。

つまり、物語そのものの謎解きと、鯨統一郎がなにか仕掛けているのではないか、何かのパロディや風刺なのかもしれない、という二重の謎解きがある。
この様な読み方は私だけのことなのかもしれないが、そういう読み方が鯨統一郎を楽しみ物だと思っているので・・・

物語はアイヌの秘宝というのがキーとなっている。
歴史や民俗学に題材をとっているところが、このシリーズを読み続ける所以となっているが、今回初めてアイヌのことを知ることなり、これもまた満足したのである。

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