読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

風渡る 葉室麟 講談社文庫

2013-12-09 23:23:36 | 読んだ
本ブログの11月5日「風の軍師 黒田官兵衛」の前編である。

11月5日のブログにも書いたのであるが、最初に後編を買って読んでしまった、という失敗をしていた。
だから、なんというか、読んでいる最中ずっと「失敗した」感に包まれていたのである。

風の軍師は、黒田官兵衛が太閤秀吉にあやしまれて豊前中津においてくすぶっているというか休んでいるころから始まっている。

この「風渡る」は官兵衛は20歳のころから描いている。
といっても、官兵衛を中心にこの物語が描かれているわけではない。

どちらかといえば、戦国時代からのキリスト教の布教状況が主となっている。
したがって、いろいろと歴史小説を読んだ私にとっては、ものすごく新鮮な物語である。

これまで読んだ物語が「表」であったとしたら、これは「裏」から見たものである。
そういわれれば、そういう見方があるなあ。
と、いたるところで思わされるのである。

この時代のキリスト教は、ポルトガル系のイエズス会とスペイン系のフランシスコ会があったということを初めて知った。
そしてこの二つは手を取り合わず対立するのである。

そのことと、戦国時代の群雄割拠から統一に向けての実力者たちの思惑が、さらに事態を複雑にさせる。
キリストを信じる者、信じはしないが認める者、そして断固認めない者が、日本統一へ向けての争いの中、キリスト教と絡むのである。

黒田官兵衛はキリストの教えに従って「愛」を実践しようとするが、しかし大きな愛を作るには謀略や戦いが必要である。

教えと現実のはざまで、大きく揺れ動かず、現実を乗り切っていく黒田官兵衛に、これまで以上に親近感を覚えた。
まあ、大体「謀略の人」という印象が強いからね。

でも、謀略の人は正直な人なのだ、正直な人だからこそ謀略が成功する。
と思うのだけれど・・・

この物語にはもう一人架空というか、いたんだがどのような人だったのか明らかでない人物が登場する。というかもう一人の主人公である。

修道士のジョアン・デ・トルレスである。
彼はイエズス会の修道士として、布教活動の中で多くの大名や公卿などと出会う。

もちろん官兵衛とも少なからぬ因縁を持って生きていく。

このジョアンの出生についてもこの物語の大きな謎のひとつとである。

兎も角、これまで読んだ戦国ものの見方を大きく変える物語である。

かえすがえすもちゃんと順番に読んでいればなお面白かったんだろうなあ、と思うのである。

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