このわずか20年の間にチョークを引っ張ってエンジンをかける儀式が消えてしまった。インジェクションの普及で沙汰されてしまったのだろう。たしかに現在のインジェクションに慣れてしまうとキャブレター式の始動はめんどくさい行為だ、特に寒い冬の朝は5分運転するだけでも5分程暖気をしてから動き出す。この暖気運転が更に燃費の効率に影響する、古いクルマを実用で使い続けるという現実は忍耐を受容する覚悟が必要。
このロクマルに何度か人を乗せた事がある。同乗者はクルマの始動時に不思議がる。チョークを引っ張って、ちょーく???? 4~5分待ってくれる...なんでー?????? と、いちいち説明するのは億劫なので『これはクラッシックカーなんだよ』で納得してくれる、が、たまにクルマを知っている奴は感嘆を込めた笑いをして喜んでくれる。
毎度の出発のこの儀式が重なると気付かぬ内に人とクルマの絆が強まって来ると感じる。暖気でエンジンを温めるわずか数分間の時間はただ待つだけの時間ではない、この時にクルマの調子を感じたり簡単な室内の掃除をする作業を通してクルマとの会話を愉しむ。近年のクルマにおいてはこの特別な時間が消えてしまった。キーを捻るだけで走り出す事に慣れてしまうと旧車は不便な物だと認識してしまうが、あえてこのロクマルに乗るために5分だけ早く車に乗り込む行為で僕とロクマルの絆が深まってきたのかもしれない。
雪道の路肩からの脱出に必要な4x4ローギア、今年の冬は大活躍だ。