カメラを構えていた我々の前を低速でスタンディングポジションのオートバイの列が間隔を開けて通り過ぎて行く。通り過ぎる時にライダー達は片手でポーズをむけたり、会釈をしたり。走り去るオートバイの流れを観ながら僕はある人の事を思い出していた。
今から9年前に関西住在の知人が身体検査の結果大腸癌を宣告されたのであった。彼は会社の経営者で自身の癌を知って動揺した。限りある人生の時間の中で悔いを残したくないという衝動で、中型二輪の免許を大型に書き換え1200ccの新型バイクを購入した。そこから短中期連発のオートバイツーリングをランダムに始めたのであった。癌の治療と平行しながらであったので体力的にもハンディであったが結果的に北海道から九州まで日本の殆んどの地を巡った。そうして、そうこう(走行)している内に彼の癌は縮小しとうとう治ってしまったのである。オートバイに乗ってたら癌が治った、と彼自身は冗談半分に語る。
目の前を走り抜けて行くBMW GS 1200、この迫力あるバイクを実際に長時間オフロードで駆るには、先天、後天的な体力が必要で精神的な強さも必要であると感じる。バイクによる旅はそのサイズに関わらずクルマと違って気温や気候にそのラィディングが左右される事を考えてみても、クルマ以上に冒険的な要素が強く求められる。バイクは乗る人を選ぶ。よって、そのバイクに乗る為には努力が必要で、その為の努力が人間を変えてゆくのかも知れない。バイクにまたがって快走感を感じて走る時間に比べて、体力向上期、準備や知識、冴えない天候下での走行等の時間の方が遥かに長い。知人の癌がバイクによって治ったのはたまたまなのかも知れない。しかし、バイクによる快走感を日本の美しい景色の中で得るために蓄積した生活の中にこそ治療の鍵がある様な気もする。彼は話し好きで旅先で出会う人々と気さくに話をした。旨い物を食べる事も重要課題であった様だ。
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