昨日を そして今日をありがとう

Demain il fera jour.
遠回りして歩きましょう 
素敵な景色に遇えるかも・・・

あの日に帰って秘密のデート~山下公園にて…前編

2010-10-12 | 小さな旅の思い出
【郵船クルーズ 飛鳥Ⅱ】

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      飛鳥Ⅱ
      総トン数:48621t
      主要寸法:全長241.0m×幅29.6m×喫水7.5m
      速力:最高23kt
      乗組員数:約400名
      船客定員:720名
      客室数:400室
      レストラン・ラウンジ、スポーツ・リラクゼーション、ショッピングなどの施設が充実。
      大きさは「飛鳥」の1.7倍名実ともに国内最大のクルーズ客船
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【スカイガーデンから山下公園方面】

過去からいきなり現在へワープしたかのように
ランドマークタワーからドッグヤードパークを巡った後
今度は過去へのタイムトラベルでした。
そして みなとみらいからある約束を果たすため西へ向ったのです。

左手に赤レンガ倉庫が見ながら懐かしい街並みを行くと
イスラム風の緑青色の丸い屋根の塔を持つ建物が現われます。


     

【横浜税関】




 
【横浜県庁舎】




 
【横浜開港記念館】




横浜税関です。
この塔はクイーンの塔と呼ばれ 横浜県庁庁舎の四角い二層のキングの塔
横浜開港記念館の 赤レンガ造りの時計台のジャックの塔とともに
親しまれています。

この3ヵ所をめぐると願い事が叶う
三つの塔が同時に見える場所に立って願い事が叶う
と言われています。 

約束をしたあの日の願いは 本当に叶うのか…
叶って欲しいような 叶って欲しくないような
もやもやとした想いを胸に抱えながら
足取りはいつの間にか速くなっていました。
頭の中ではユーミンの「あの日にかえりたい」が流れ続けていました。

               
     泣きながらちぎった写真を
     手のひらにつなげてみるの
     悩みなききのうのほほえみ
     わけもなくにくらしいのよ
     青春の後ろ姿を
     人はみな忘れてしまう
     あの頃のわたしに戻って
     あなたに会いたい~♪


   あの日にかえりたい 松任谷由実 歌詞情報 - goo 音楽

30年後の今日 山下公園にある「赤い靴をはいた女の子」像の
前のベンチで逢おうと約束したのです。
故郷に戻らず暮らしていこうとする彼と
家に戻るつもりだった私と
別れは考えたくなくてずっと話し合いを繰り返しては来たけれど
いつまでたっても平行線のままで 交わることはありませんでした。
それでも 最後に逢ったあの日
2010年の今日 この場所でまた逢い お互いが幸せでいることを
確認しようと約束したのでした。

きっと覚えていないでしょう。
そういう私だって ずっと忘れていたのです。
たまたまこの日 東京に来ることになって
ふとあの日のことが蘇って来たのでした。
「晴れたら 行こう!」迷う気持ちをお天気に賭け
やってきたのでした。




      山下公園に着き 楽しげな家族連れやカップルの姿を
      目で追いながら 「赤い靴をはいた女の子」の像はどこたっけ…
      と見回すと その像の前のベンチの見覚えのある横顔を見つけました。
      その人は ゆっくりと立ち上がりこちらを向いて
      はにかむような笑顔を見せました。

      「久しぶり・・・元気だった?」

      今も変わらない昔のままの笑顔
      野球で鍛えたがっちりとした肩 日焼けした。
      少し髪に混じった白いものと眉間の皺が離れていた時間を
      物語っていました。

      「足音ですぐにわかったよ。地球は私を中心に回っているのよみたいな 自信満々の歩き方!」
      「ひどい~!それじゃあまるで わがままで傲慢な女みたいじゃない。」
      一瞬にして時はあの日に帰っていました。
      …黒いハイヒイールを履いてきたのは あの頃のあなたが好きな靴だったからなのよ。

      「約束・・・覚えていないと思っていたわ。」
      「忘れるわけないじゃない。お前のこと忘れたことなんて無かったよ。」
      そういって 軽く自分の鼻をつまみました。
      嘘をつくときの彼の癖でした。
      この癖が無かったら 悪戯に彼を疑うことも知らず
      同じ人生を歩き続けていたかもしれません。
      「嘘ばっかり~忘れていたんでしょう?」
      「ははは・・・本当のことを言うと忘れていたときもあったよ。
       でも 家内が無くなってからはよく思い出すようになったんだ。」
      「え?奥様亡くなられたの?」
      「あぁ 3年ほど前にね。あっけなく逝ってしまったよ。」
      「どうして教えてくれなかったの?」
      「そんなこと連絡したって お前を困らせるだけだろ?」
      「それは そうだけど・・・」

      「子供さんは?」
      「娘が一人いるよ。寂しい父親をひとりおいて さっさと結婚して
       今はアメリカに住んでいるよ。」
      「そうなんだ。寂しいわね。」
      「そうでもないさ。気楽にやってるよ。」
       ほっとしたように 彼は笑いました。



【山下公園 氷川丸】

氷川丸(ひかわまる)は、日本郵船が
1930年に竣工させた日本の12,000t級貨客船。
北太平洋航路で長らく運航されました。


 
「今日は今まで何していたの?」
ランドマークタワーに登って一人でカクテルを飲んだこと
横浜美術館でドガ展を観たこと みなとみらいの辺りが
あまりに変わっていて驚いたこと・・・
そんな話をしているうちに 変わっていないところを
まるでクイズ番組のように思い出しあっていまいした。
「氷川丸は昔のままよね。」
「そうだね、でも昔は万国旗が掲げてなかったっけ」
「この公園も変わっていないな。海も・・・」
「赤レンガ倉庫は ずいぶん綺麗になって レストランやショップが
 出来たんでしょう?」
「ああそうなんだ。 そうだ!お腹空いてないかい?
 お昼はちゃんと食べたの?」
「うぅん・・・サンドウィッチを少しだけ。」
「だったら なにか食べに行こう。赤煉瓦倉庫に 美味しいソバ粉のクレープを
 出すお店ができているんだ。好きだったろ?」
「うん・・・」


  
【赤レンガ倉庫】
赤レンガ倉庫/赤レンガパーク
明治・大正の煉瓦造建築が人気の外観はそのまま。
1号館はホール、多目的スペース、2号館にはライブレストランとビアレストラ
ンの他には飲食・物販店がある。海辺の公園では芝生の広場やベンチもあり海を
眺めながらのんびりとくつろぐ事ができる。
 




【クレープ】









 
そうしてもと来た道を戻って赤煉瓦倉庫
にやって来ました。
赤レンガ倉庫(赤レンガパーク ) は明治・大正の煉瓦造建築が
人気の外観はそのままに1号館はホール 多目的スペース
2号館にはライブレストランとビアレストラン
その他には飲食・土産物店などがある複合商業施設として
生まれ変わっています。
海辺の公園では芝生の広場やベンチもあり海を眺めながら
のんびりとくつろぐ事ができる場所になっています。

その中にフランスで人気の「ブレッツカフェクレープリー」
が出店しているのでした。
より気軽にガレット料理を楽しめるセットメニューが
充実しています。
その道一筋のクレープ職人“クレーピエ”の打つソバ以外は
本物のガレットではないと本場フランスから職人を招聘し 
“アルティザン クレーピエ”を養成しています。
石臼挽きのそばを打つ技はもちろん 職人の手作りハム 
各地より空輸されるチーズ 国産の新鮮野菜など 高品質の素材だけを使用し 
ガレット発祥の地・ブルターニュ地方の伝統の味を
そのまま伝えています。

「何にする」
「そうね~ソーセージにしようかな。」
「じゃあ 俺も同じものを」
店員のお兄さんが大声でオーダーを復唱しました。
「ソーセージ ドゥー!シルブプレ~!」

「ふふふ…」
「何がおかしいの?」
「だって・・・シルブプレだって・・・」
「フランスが本場だからね。一種のパフォーマンスだよ。」
そう言って 彼もおかしそうに笑いました。
「そういえば フランス語 苦労してたわよね。」
「そうだよ~フランス語の先生に気に入られて
 毎回何度もあてられてさ。」
「・・・それでも 上達しなかった!」
「いやになっちゃったんだよ。」
「え~?巻き舌が出来なかったからでしょう?」
「いや 違うよ。ちゃんと今ではできるからさ。」
「本当かな?やってみてよ。ルゥルルルルル・・・・」
「ル・ル・ル・・・・」
「やっぱりダメじゃん!」
ふふふ・・・ははははは・・・

そば粉のクレープは彼の勧めるだけあって 
とっても美味しかった。
毎日空輸されるだけのことはあって チーズも絶品でした。
 

      「そう フランス語の授業でいつも助けてくれていた青山さんどうしているかな?
       彼女と結婚するのだとばかり思っていたのよ。」
      「まさか!卒業してから会ってないよ。」
      「そうなの?でも彼女は あなたのこと好きだったのよね。」
      「そんなんじゃないさ。」
      「そうかな?だったら2人でスケートになんか行かないと思うけどな?」
      「もう何年も経ったんだから その話は勘弁してくれよ。
       まったく女って執念深いんだな。」
      にこやかにそう語った。
      「一緒のゼミだった佐藤と久美子が結婚したの知ってるだろ?」
      「ええ 覚えてるわ。私が久美ちゃんは沢野祐一君が好きなのよって言ってた子でしょう?」
      「ああ あの時 佐藤と結婚したんだから お前の勘違いだろうっていっただろ?
       ところが2人が結婚して翌々年だったかな?年賀状が届いたんだ。
       それを見て 俺 驚いたよ。」
      「何で?何があったの?」
      「あいつらの子供の名前 祐一って言うんだ・・・」
      「・・・・やっぱり沢野君のことが好きだったのよ。」
      「でもな~昔好きだった男の名前をつけるなんて・・・女って怖いよな~。」
      「そうよ 女って怖いのよ~。」
      「だよな~。」
      ・・・・・だけど あなたは女心に鈍感すぎなのよ。
      
      そうして 彼はグラスに残ったビールを一気に飲み干しました。

      「少し歩こうか。」
      ここ数日に比べて 暑いくらいのこの日は
      潮風も心地よく 歩くには最高の陽気でした。
      街路樹のイチョウが 少し黄色に変わり始め
      秋の始まりの穏やかな日でした。 

        ~つづきは また次回にて~


最後までお付き合いしてくださってありがとうございました。